日販アイ・ピー・エス賞

お金のかせぎ方のススメ

オタワ補習授業校(カナダ)

中1 大見 桐瑠

 

 僕はびんぼうだ。お小遣いでは、学校のカフェテリアで八十セントのビスケットくらいしか買えない。最近、友達と学校のまわりに落ちていた空き缶を集めて、空き缶を換金してくれるマシーンに入れると、一ドルになった。しかし、カナダの物価高のせいで、それでは何もスーパーで買えなかった。どうしたらビスケットよりいいものを買えるようになるのだろうというのが、最近の僕の疑問だった。
 

 そこで、仕事を探し始めてみた。思いつくことといえば、近所に住む男の子がうちに営業にやって来た窓の掃除、近所の小学校六年生が修学旅行の資金集めのために学校でやっている洗車。他に僕の年齢でできる仕事といえば、犬の散歩や、草刈りや、芝刈りくらいだろう。でも、経験のないぼくにとって、お客を探すのは大変だ。それか、家にある使わなくなったものを家の前で売るガレージセールをするのもいいかもしれない。でも、天気が悪かったり、急な予定が入ったり、面倒になったりして、なかなか実行することができない。もう一つお金をかせぐ手段として、テストで百点をとると、五ドル両親からもらえるという取引をしていた。しかし、残念ながら、なかなかそれも難しい。そして、僕はいまだにびんぼうのままだった。
 

 ある休日、お父さんもお母さんもとても忙しそうにしていた。お父さんはまき割りや、車やプールの修理、お母さんは一週間分の掃除、洗濯、料理と、話しかけるのも恐ろしくなるような雰囲気だった。そこで、ぼくはお父さんに、

「ぼくが芝刈りしてみたいな。」

と言ってみた。するとお父さんは、

「やってくれると助かるな。」

と言った。ぼくはマシーンが使いたくて、これまでにも何度か芝刈りの手伝いはしたことがあるけれど、庭全部の芝刈りはしたことがなかった。
 

 それからのぼくは、二時間かけて庭の芝刈りをした。うちの庭はばかに広いので、ものすごく時間がかかった。やってる途中は結構楽しかったけれど、終わった後は、手も足も腰も痛みでさけんでいた。どっと疲れた。十分くらい芝刈りの手伝いをするのとは全然違った。そして、お父さんは数週間おきにこんなに大変な仕事をしているんだなということを知った。
 

 そんなぼくがきれいに芝を刈った庭は、自分で言うのもなんだけど、ゴルフ場のように線の模様ができて、とても美しくなった。片付けもちゃんとした。さらに喜んだのはお母さんだった。お母さんは、窓から見える見違えた庭と、ぼくの自主的な行動に喜んで、なんとカナダの最低賃金の二時間分をくれたのだ。ぼくにとっては大金だった。お金をもらうつもりはなかったけれど、ちゃんとした仕事をしたら、みんなが満足してくれて、仕事として認めてくれた。ぼくは家の外ばかりで仕事探しをしていたけれど、実は家の中に仕事はいっぱいあった。親は喜んでくれるし、自分も家がきれいになって嬉しい。
 

 お金をかせぐのはなかなか難しい。将来、まだ何がやりたいのかわからないけれど、今回の出来事で、どうせかせぐなら、誰かに喜んでもらって満足してもらって自分もうれしくなる仕事で稼ぐのがいいと思った。これからテストも頑張ってみようと思う。
 

 最後に、お父さんが言った。

「そういえば、早朝、庭にブラックベアがいたんだよ。うちのミツバチの巣箱を倒して、一個どこかに持っていってしまったんだよ。すごく大きかったぞ。」

ぼくは、この話を聞くのが芝刈りが終わった後でよかったと思った。