東京海上日動火災保険賞

じいじの声とせみの音

ペナン補習授業校(マレーシア)

小2 西尾 鳳都

     

 「今日、日本はとてもあついよ。」

じいじのでんわのうしろで、

「ミーンミンミンミンミン。」

と、たくさんのせみの声がしました。

「ぼくのいるところはずっとあついよ。でもペナンでは、せみの声がしないから、どれくらいのあつさかを教えてあげられなくてざんねん。」

と、ぼくが言うと、じいじが、

「ペナンに会いに行くよ。」

と、言ってくれて、本とうにペナンまで来てくれました。
 

 空こうで、じいじに会って

「ペナン、あついでしょ。」

と聞いたとき、

「あついねぇ、あったかいね。」

と言って、じいじは、ぼくをギュッとしてくれました。
 

 じいじが日本に帰るときに、

「また会おうね。ギュッとするのをたのしみにしているね。」

と言って、大きな手で、ぼくとやくそくをしてくれました。ぼくは、じいじがのったひこうきに、バイバイと手をふりました。
 

 けれどそのあと、ぼくはまたペナン空こうに行くことになりました。じいじの元気が、きゅうになくなったと聞いたからです。
 

 ひこうきの中の2時間と、7時間がとても長かったです。じいじはぼくの声を聞くと元気が出ると言っていたので、早く日本へ行って、じいじを元気にしたかったのです。
 

 けれど日本について、ぼくがじいじの手をさわったら、じいじの手はつめたくなっていました。

「ぼくがでんわでも、じいじに声をとどけていたら、じいじの手は、まだあったかかったのかな。」
 

 そう思って、空を見ると、せみもいっしょに

「ジージージジジジジ。」

と、ないていました。
 

 それからぼくは考えています。空を見ると、じいじが見えるようになったけれど、じいじとはどんなことばでお話しできるのかな、ということです。それがぎもんだけれど、たとえ、じいじがどんなことばで話すとしても、ぼくは大じょうぶです。なぜならことばがわからなかったペナンでも、ぼくはたくさんの友だちができたからです。
 

 だからぼくは知っています。ことばがつうじなくても、ぼくの気もちをつたえることはできます。あいての考えていることがわからないとき、ぼくはわかるようになるまで、べんきょうすることができます。わかりあえるまで、チャレンジすることができます。
 

 まだそうぞうができないけれど、ぼくはべんきょうして、お空のじいじとつながるでんわをはつ明したいです。それまでぼくのこころのでんわで、お空のじいじに気もちをつたえます。
 

 じいじはおしごとで、いろんな国に行ったときのお話を、ぼくにプレゼントしてくれました。こんどはぼくが、ぼくの目でせかい中のしゃしんをとって、じいじのすきなマンゴーのにおいといっしょに、風にのせておくります。
 

 またつぎに日本へ帰ったとき、ぼくはじいじのおにわで、せみとりがしたいです。せみの音を聞くと、じいじの声も聞こえそうです。

「じいじの話すことばはなんですか。」
 

 じいじとぼくの、さいごのやくそくは風になったけれど、じいじがぼくにとどけてくれたせみの音が、ぼくのこころをギュッとしてくれています。