カプセルトイが世界中で大ブームのバンダイ「ガシャポン®」に迫る 帰国子女の先輩にもお話を聞きました!
2025年12月1日
特集

カプセルトイが世界中で大ブームのバンダイ「ガシャポン®」に迫る 帰国子女の先輩にもお話を聞きました!

日本の街中や商業施設内などでよく目にするカプセルトイ専門店。次々と入れ替わる商品は、最近だと子どもだけでなく、大人にも拡大し、全世代がターゲットになっていると言います。さらには、日本人だけでなく、訪日観光客からも「手軽に持ち帰られる日本土産」として人気を博しているそう。あらゆる世代や国の人たちに刺さる商品はどのように誕生しているのか。進化するカプセルトイの商品開発について、バンダイのガシャポン®企画開発担当桑野さんにお話を伺いました。帰国子女である桑野さんには、最後にご自身の海外経験や普段のお仕事についても聞きました。

 

メイン画像:タイにあるGASHAPON BANDAI OFFICIAL SHOPの様子©BANDAI

 (取材・執筆:武藤美稀)

ガシャポン®誕生から48年。カプセルトイ事業を先導するバンダイ

カプセルトイがアメリカから初めて日本に輸入されたのは1965年のこと。そこから、数年おきにカプセルトイブームが巻き起こり、コロナ禍の2020年以降からは「第5次ブーム」が続いていると言われています。ここ数年で増加した、お店いっぱいにカプセルトイが並ぶ「カプセルトイ専門店」がその象徴とも言えるでしょう。第5次ブームが巻き起こるきっかけとなったのは、子供だけでなく、大人も夢中になれるような商品の誕生ではないでしょうか。

1983年に発売された「キンケシ」 ©ゆでたまご・東映アニメーション
1983年に発売された「キンケシ」 ©ゆでたまご・東映アニメーション

1977年にオリジナルカプセルトイブランド「ガシャポン®」をカプセルトイ事業としてスタートさせたバンダイ。1983年に発売した、TVアニメ「キン肉マン」のキャラクターのフィギュア「キンケシ」は、累計1.8億個を売り上げ、第1次カプセルトイブームを巻き起こし、現在も新弾が登場しています。2025年には、1年間で約2.2億個の商品を出荷したことでギネス世界記録TMにも認定されました。※最大のカプセルトイブランド(2024年度 年間売上)

いつの時代もカプセルトイを盛り上げる中心にあり続けるガシャポン®。次々誕生する個性的な商品はどのように作り出されているのでしょうか。

 

「新しい商品を作り出すために、テレビやSNS、YouTubeなどを日々チェックして、アイデアを集めています。また、ジャンルを問わず、売り場やイベントなどさまざまな場所に足を運んでネタを探します。そのなかから、『これぞ!』と思うもので企画書を作成。月1回の企画会議で提出し、参加者同士で、アイデアをより良いものにするために、ポジティブな思考で意見交換を行います」

 

ガシャポン®の商品全体では、毎月約90~120件以上のアイデアが提案され、月になんと120商品以上が発売されるのだとか。企画から商品化までは、商品にもよりますが、およそ8カ月から1年ほどかかるそうです。

日本国内にあるガシャポンバンダイオフィシャルショップの様子 ©BANDAI
日本国内にあるガシャポンバンダイオフィシャルショップの様子 ©BANDAI

「SNSで話題になっているコンテンツやブームのくくりに当てはまるなど、時流を捉えたスピード感ある商品は話題性が高いです。また、ビッグサイズの90mmカプセル商品など、ガシャポン®でしかできない自販機開発を伴うような、新仕様の商品の注目度も高いでしょう。

精巧さが際立つ商品やファンが多いコンテンツの商品など、ガシャポン®が毎月120商品以上も発売しているからこそ、『自分の好き』が必ず見つかる=話題になる、という構造もあるかと思います」

 

子供から大人まで夢中になるガシャポン®のオリジナルシリーズ

「ガシャポン®のオリジナルシリーズ『めじるしアクセサリー®』は、輪っかパーツ付きで、ペットボトルや傘の取手など身の回りの持ち物に“目印”として付けることができるため、人気の仕様です」

これまで、数々のヒット商品を生み出してきたバンダイ。なかでも、ここ数年のガシャポン®の代名詞とも言える「めじるしアクセサリー」は、身の回りのあらゆる持ち物に簡単に取り付けられるチャームとして、女性を中心とした大人から人気を博しています。

 

元々は、見分けがつかないビニール傘などに目印として付けていた人が多いかと思いますが、最近では「推し活」としてお気に入りの漫画やアニメのキャラクターの商品を集めたり、さまざまな種類の商品を大量に集めた写真をSNSにアップしたり、使い道も人それぞれです。

「めじるしアクセサリー ガシャポン」©BANDAI
「めじるしアクセサリー ガシャポン」©BANDAI
「にほんのおかし めじるしアクセサリー ~秋~」©BANDAI
「にほんのおかし めじるしアクセサリー ~秋~」©BANDAI

   

世界各国の人たちを魅了するガシャポン®の人気商品とは?

イギリス・ロンドンにあるガシャポンバンダイオフィシャルショップの様子©BANDAI
イギリスにあるGASHAPON BANDAI OFFICIAL SHOPの様子©BANDAI

日本ならではの体験や、日本の硬貨を使い切るために訪日観光客に使われることが多かったカプセルトイ。最近だと、高品質な商品を、手軽に手に入れられることから、日本土産にする観光客も多いと言います。

 

ガシャポン®の人気も、日本国内にとどまりません。1993年に香港特別行政区で初の海外進出を果たして以降、欧米やアジアを中心とした国々に人気が広がっています。ガシャポン®専門店である「GASHAPON BANDAI OFFICIAL SHOP 」は、18の国・地域に110店舗以上を展開しています。(※2025年10月時点)

「まちぼうけ ガシャポンの場合 その2」©BANDAI
「まちぼうけ ガシャポンの場合 その2」©BANDAI
「光るまちぼうけシリーズ 屋台の場合」©BANDAI
「光るまちぼうけシリーズ 屋台の場合」©BANDAI

「アニメなどの人気キャラクター商品はもちろん、食べ物や動物モチーフも好評です。 バンダイのガシャポン®オリジナルフィギュアシリーズとして展開している『まちぼうけTM』では、動物や海洋生物などの生き物から、食べ物・雑貨まであらゆるものが体育座りをしてまちぼうけている姿が話題を呼び、日本・海外ともに人気のシリーズとなっています」

 

「ずっとあなたを待っている…」をコンセプトにした「まちぼうけシリーズ」。食べ物や動物などのほか、人気キャラクターの商品もあり、なかには暗闇でほんのりと光るものも。ちょこんと座る姿が儚げでかわいらしく、全種類を集めて、並べた状態を写真に収めたくなります。

「まちぼうけ ハンバーガーショップの場合 その2」©BANDAI
「まちぼうけ ハンバーガーショップの場合 その2」©BANDAI

「なかでも、『まちぼうけ ハンバーガーショップの場合』は海外で大きな反響があり、数あるまちぼうけシリーズの中でも特に人気だった商品です。国や地域の食文化が影響している可能性もあり、非常に興味深い実績となりました」

 

ガシャポン®でしか実現できないアイデアもいっぱい

カプセルトイは、1回数百円という価格で回すことができるのが一般的。しかし、バンダイでは、ガシャポン®でしか実現できないカプセルトイとして、2,500円までの価格設定が可能な「プレミアムガシャポン」を作りました。対応可能な硬貨の種類を増やした自販機の開発により、これまで実現できなかった大きなサイズと、より再現度が高く迫力のある仕様を可能に。これまでのカプセルトイの常識を超えたプレミアム感が話題となりました。

そのほか、コースターなど平らな商品が出てくる「フラットガシャポン」や超ビッグサイズの「90mmカプセル」といった全く新しいタイプのガシャポン®もあります。

 

「ガシャポン®は2027年に50年という節目を迎えます。『世界のガシャポン®』を目指して、世界中にガシャポン®体験を広げていくこと、文化として定着させていくことが、今の私たちの目標です」

 

進化を続けるガシャポン®とバンダイのこれからの動きに注目です。

 

ガシャポン®企画開発担当として活躍する帰国子女にインタビュー

最後に、幼少期の3年半をフランスで過ごした海外経験を持つ桑野さんに、バンダイでの仕事についてインタビューしました。

 

——普段のお仕事内容を教えてください。

 

ガシャポン®の企画・プロデュースを担当しています。市場のトレンドに常にアンテナを張り、いち早く新しいIPや商品を提案すべく、毎日企画のことを考えています。売れる根拠を説明し、社内で進行許諾をもらい、実際に商品の開発に着手。キャラクターなどの版権をお借りして商品化する場合は、版権元への交渉を行い、生産メーカーと連携しながら商品の開発にあたります。

ガシャポン®の場合は、企画担当者が最初から最後まで一気通貫で商品をプロデュースするため、仕事内容も多岐に渡ります。

 

 

——これまでの海外経験について教えてください。

 

幼少期に親の仕事の関係でフランスに3年半ほど住んでおり、記憶はあまりありませんが、フランスの保育園やバレエ教室に通っていたと聞いています。

大学は、「国内にいながら海外留学と同等の経験ができる!」という謳い文句につられ、国際色豊かな大学を選びました。実際に、大学4年間は、日本語と英語を同等程度使って生活していたため、語学スキルの向上だけでなく、さまざまなバックグラウンドをもつ友人ができ、自分にとって非常に大きな糧となりました。大学在学中は、夏休みの期間を使い、カナダへ3カ月ほど短期留学もしました。

 

 

——バンダイに入社された理由を教えてください。

 

日本文化の強みであるアニメ・キャラクターに携わりたいという漠然とした興味と、世界中の人たちに影響を与えられる仕事という点が大きいかと思います。

なおかつ、私自身がわくわくするような仕事に就きたいと思っていたので、バンダイ一択でした。   

 

 

——日本のおもちゃやガシャポン®にまつわる思い出やエピソードがあれば教えてください。

 

留学の時にホームステイしていた家族に持って行ったお土産の中で、とびぬけて喜ばれた日本のお土産がアニメキャラクターのキーホルダーでした。

日本ではあまりにも見慣れてしまっていますが、一歩日本の外に出ると、日本が持つアニメ・キャラクターコンテンツがどれほど世界で受け入れられ、愛されているか改めて気づかされます。特にガシャポン®のような小さなサイズ感の商品で、この価格でこのクオリティ(高品質、安全性)を実現していることは、間違いなく世界に誇れるものだと思っています。

 

 

——海外での経験が、これまでのお仕事に活かされた体験などがありましたら教えてください。

 

人種・宗教・文化が異なる多国籍な友人と接してきた経験から、仕事で出会うどんな人にも動じなくなりました(笑)。仕事の中で意見が対立することも多々ありますが、どのような意見も受け入れ尊重できるようになったのは、まちがいなくこれまでの経験があってのことだと思っています。

 

 

——これからの目標や実現したいことなどがありましたら教えてください。

海外赴任してさらに経験を積みたいという思いは入社当時から持っており、機会があれば海外で仕事をしたいと思っています。

【取材協力】
 株式会社バンダイ
「夢・クリエイション ~楽しいときを創る企業~」をスローガンに、IP※を生かした玩具、ガシャポン、カード、菓子・食品・食玩、アパレル・日用雑貨など、多彩な商品・サービスを展開している。
IP:キャラクターなどの知的財産
ガシャポンオフィシャルサイト
https://gashapon.jp