クラーク記念国際高等学校賞

ありのままで

南インディアナ補習授業校(アメリカ)

小6 佐藤 笑梨

          

 〝Is it  Sushi ?〟インド人の友だちNirvanaがある日私に聞いた。「これはおにぎりだよ。」と言ったら〝Wow.〟と言ってくれた。私はお母さんの作ってくれるおにぎりが大好きだ。特にさけのおにぎりが一番の私のお気に入りだった。アメリカに来て鮭フレークを簡単に買うことができないのに、お母さんはサーモンを使って塩サケを作り、おにぎりにしてくれていた。しかし、ある出来事をきっかけに私はおにぎりを学校に持っていくことをやめた。それは私がおにぎりを食べていると、いじわるな三人組が差別をするような目つきでこちらを見てはひそひそ声で何かを話しているような気がするようになったからだ。私はとても悲しかった。私以外にも、インド人の子がインドの料理だろうと思われるご飯を食べている時に、お弁当箱のふたを使って人に食べているものを見られないようにしているのを見たこともあった。きっとその子も私と同じようにいやな思いをしたのだろうと思った。そのことをお母さんに話すとお母さんはびっくりして、いやだったねと一言だけ言った。そしてその日以降、現地校に行く日はほとんどがアメリカ人と同じようなサンドイッチのお弁当になった。サンドイッチを持っていけば人に見られることはない、堂々とみんなの前で食べられると思ったからだ。

 アメリカ人の大体の子はランチにサンドイッチかLunchablesというどこのスーパーにでも売っているき製品のお弁当を食べている。Lunchablesの中身はハムやクラッカー、チーズといったお菓子のようなもので見た目も小さくスナックと言ってもいいほどだが、アメリカ人の多くの子たちが毎日それをランチに持ってきて食べているのを見て、私も一度食べてみたいと思った。みんなが食べているとおいしそうに見えた。お母さんにお願いをして買ってくれないかと聞いた。お母さんはすぐには買ってくれなかったけれど、ある日学校から帰ると冷蔵庫の中にLunchablesが入っていた。そして次の日のランチに持って行っていいよと言ってくれた。私はとてもうれしかった。次の日が楽しみにさえなった。あんなにみんなが持ってきているのだからとてもおいしいにちがいないと思っていた。

 次の日のランチの時間、Lunchablesを食べてみた。「あれ、なんか思っていたのとちがう。」と思った。お母さんが作ってくれるハムのサンドイッチの方が一〇〇倍おいしいと思った。私が思っていたのとはちがったけれど、この経験でよかったこともあった。それは、私は日本人なのだからアメリカ人の好きなものと私の好きなものがちがっていても当然だということに気がついたことだ。だから私の好きなおにぎりをアメリカ人が好きとは限らないと思った。その時急になぜだかもうおにぎりを学校に持って行っても平気かも、と思った。急に自分に自信がついた気がした。そして家に帰ってお母さんに

「おにぎりもうお弁当に入れてもいいよ。」

と言った。

 学校に行き始めて一年が終わるころにアメリカ人の友達が私の栄養満点のお弁当を見て、

“Your lunchbox is the best ! ”と言ってくれた。私は今まで何を気にしていたのだろうと思った。アメリカに来たことで、英語が話せない、みんなの話していることについていけないというコンプレックスから全てが否定されている気がしていたときもあった。だけどそうじゃない、自分は自分で人は人ということを感じることができた。全てをアメリカ人に合わせる必要はない。自分の好きなものは好きなままでいたいと思った。

 私はあと四年アメリカで生活する予定だ。この経験を生かしてあと四年間のアメリカ生活を私は自分らしく、自信をもって楽しく過ごしていきたいと思う。そして私も人にあなたのお弁当が一番だねって言えるようなやさしい人になりたいと思う。