日本児童教育振興財団賞

音楽に感謝  

                       デュッセルドルフ補習授業校(ドイツ)

小4 アクスマン 英美

        

 私が住んでいるドイツには、どんな小さな町にもたいてい音楽学校があります。私が通っているクララ・シューマン音楽学校は、ドイツの有名な作曲家シューマンにちなんで名づけられた公立の音楽学校です。私は三才からこの音楽学校に通って、バイオリンを習っています。今年から私はこの音楽学校のユースオーケストラに入ることになりました。まだ、なれていないところもありますが、私はオーケストラに入ってから、音をみんなで合わせる楽しさを知りました。

 私の入っているオーケストラは弦楽オーケストラで、バイオリンとチェロが主な楽器です。私が入っているバイオリンのパートには、小学生から高校生までのいろいろな生徒がいます。年上の生徒がたくさんいたので、私は(小学四年生が入っても大丈夫なのかな?)と、ちょっとドキドキしました。でも、その年上の生徒が、

「わからないことがあったら聞いてね。」

と最初に話しかけてくれたので、とても安心しました。じつは、もう一つ、私がオーケストラに入る前に心配していたことがあります。(演奏中にまちがえたら、せっかくの曲が台無しになってしまう。)ということです。そう思った私は、最初の日の前、家でたくさん練習してから音楽学校に向かいました。いざ、練習が始まって、弾いてみると、

「あれ?」

同じ第三バイオリンの子が弾いているリズムが少しずれています。私の予想通り、指揮者の先生からその部分をもう一度弾いてみるように指示が出ました。指揮者の先生はとても明るいイタリア人の先生です。そしておどろいたことに、まちがえたり、リズムが少しずれていたりしても、おこることなく何度もくり返して練習させてくれます。私は少しほっとしました。そして、練習中に何度も合わせていくうちに、リズムが苦手なとなりの男の子もまちがえなくなってきました。そんなふうに進んでいく練習を重ねるうち、私は毎週オーケストラの練習に行くのがとても楽しみになりました。

 今練習している曲は、もうすぐ行われる夏のコンサートの曲です。その中で私がとくに好きな曲は「Thank you for the music」という曲です。この曲はスウェーデンのABBAというグループの曲で、音楽に対する感謝の気持ちを歌った曲です。英語の歌詞を日本語にしてみると、「音楽に感謝、よろこびをもたらしてくれて。もしこの世に音楽がなかったら、人生はどうなっていただろう? だから音楽というものを与えてもらったことに感謝。」となります。これは、私の気持ちにぴったりです。私はバイオリンだけでなく、歌うことも大好きです。お風呂に入っているときや学校のコーラスで歌を歌うと気分がすっきりします。もし音楽がなかったとしたら、私は楽しい気分のときにどうしてよいかわからなくなってしまうでしょう。オーケストラで、みんなと心を合わせて音を奏でることもできなくなってしまいます。だから、「音楽があってよかった、音楽に感謝。」という歌の歌詞の意味がとてもよくわかります。 

 私の通っている小学校では、毎年歌のコンサートがあり、そこではいろいろな国の言葉で歌を歌います。その中には日本語の歌「春が来た」や、ウクライナ語の歌、そしてトルコ語の歌まで入っています。歌詞の意味がわからなくても、その言葉のひびきを覚えてみんな楽しく歌っています。その国に行ったことがなくても、その国の言葉で歌を歌ってみると、ちょっとだけその国に行ったような気分になります。音楽や歌によって、言葉がわからなくても他の国の文化を知る機会になるのです。今、世界では戦争などとてもざんねんなことも起こっていますが、音楽をやっている人たちがそれを奏でることで心を一つにしたり、音楽を通して他の文化を伝えたりできたら、世界は少し平和になるのではないかと私は思います。みんなが音楽で心を一つにして、音楽に感謝して。