日本放送協会賞

ふと

                           シカゴ日本人学校(アメリカ)

中一 加茂 優奈

 

スクールバスの中で本を読んでいて

あたりのほの暗さに空を見上げた

 

いつもは目を閉じてしまう

でも、今朝は

分厚い灰色の雲が空にたむろしていて

久々に

空をゆっくり眺めた

 

こんな空もいい

 

日中の太陽は眩しすぎるから

そして

夜は暗すぎるから

 

この目でしっかりと空を見つめられるのは

こんな日ぐらいだから

 

そんなとき

細長い黒い影が

私の真上を飛び去った

 

うっとりするぐらい

真っ黒なシルエット

当たり前のように飛んでゆく

 

ふと、頭に浮かんだのは

故郷の霞川

ゆうゆうと翼を広げ降り立ち

小魚を獲るサギ

人を嘲笑いながら飛び去っていくような

そんな顔に見えた

 

今飛んでいったのは

カナダガンかなあ

 

ゆうゆうと飛んでいくその姿が

誇らしげで

それがまた

故郷のサギにどこか似ている

 

反対側から来たもう一羽と

線となり交わって

それぞれ違う方向へと進んでゆく

 

たった十数秒にも満たない出来事がなぜか

いまだ心に残って

 

なぜだろう

ちょっとこころがふわっとなったのは

 

この出来事が

何枚もの紙絵となって

やがて一つの紙芝居ができ上がってゆく

 

一枚一枚の絵が

とても美しい

わたしの日常紙芝居