2021年6月からアメリカ、オハイオ州に暮らす増田ファミリー。日本企業からの駐在員である義史さん、現地採用でワーママになったあゆみさん、日本の高校進学を目指す雪菜さん(14歳)、現地校も補習校も楽しむ拓海さん(8歳)の四人家族だ。普段はどのような生活を送っているのか、どんなことを考えているのか、聞いてみた。
(取材・執筆:Makiko)
家族で一緒に住めるチャンスは今しかない
増田ファミリーはこれまで義史さんの単身赴任の期間が長かったとのこと。
雪菜:私が小1くらいの時からほとんど一緒に住んでいなかったから、アメリカの話を聞いた時も、『そうなんだ、行ってらっしゃい』って言おうと思っていました。だから『みんなで一緒に行こう』と父に言われ、『え~!』って。中学校に入ったばかりだったのに。
あゆみ:夫は営業職で日本では長年激務。一緒に住んでいる意味がないくらい会えなくて、ある時期から単身赴任にしてもらいました。アメリカ行きは子供たちが渋ったので迷いましたが、家族で一緒に住めるチャンスは今しかないと思って、同行することに決めました。
義史:アメリカに来て驚いたのは、家族ファーストが浸透していること。家族の予定のために仕事を抜けることに罪悪感は抱かないし、抱かせない。単身赴任という、家族を離すようなことはアメリカの常識にはないので、その辺りの認識は自分の中で大きく変わったと思います。
それぞれの道、でも一緒に暮らせないのはジレンマ
雪菜さんは日本の高校進学を目指して勉強中だとか。
雪菜:父が良い経験になるからと、家族を帯同させた気持ちはわかるけれど、私は正直、迷惑だなと思いました。今でも日本の友達と一緒に中学校を卒業したかったと思っています。家族と離れることになったとしても、高校は日本で進学したいです。現地校での授業もわかるようになってきたし、補習校に友達もいるけれど、補習校の友達はすぐに帰国して減っていってしまうから寂しいんです。
義史さんの帰任に合わせると、帰国先の地域には帰国子女の高校編入の枠が少ないなど、現実的な問題もありますよね。拓海さんは今後どうしたい?
拓海:本が好きだから、お姉ちゃんの読んでいるような本をもっと読んで勉強して、世界中の子と友達になりたい。補習校で友達とお喋りするのが今は一番楽しいけれど、現地校でももっと話したいな……将来は、モテたいとか?(笑)
あゆみ:アメリカで住む場所を決めるときに、あえて日本人の少ない地域を選ぼうと、夫婦で話し合いました。圧倒的マイノリティという立場を経験させているのが良いことでもあり、悪いことでもありましたね。『せっかくだから』と思って連れてきましたが、雪菜に関しては見通しが甘かったかなと思う日もあります。他方、拓海は文化面でも言語面でもよく馴染んでいて、アメリカ生活が向いているのかもしれません。
それぞれの意思を尊重すると、家族で一緒に住むのが難しくなる?
義史:僕が帰任になっても、妻はアメリカの会社に残ってほしいと言われる事態も想定できます。自分としては家族みんな一緒というのがベストではありますが、そうなった時には家族それぞれの意思を尊重して決めていきたいと思います。海外で生活している中で今一番気がかりなのは、日本で暮らす両親のことです。
あゆみ:夫がずっと海外を目指して頑張ってきたのを知っていますし、今後も夫の望む形でキャリアを積んでほしいと思います。ただ、私もキャリアを重ねていきたいという思いがあります。それぞれの希望に沿おうとすると、大切な家族と離れるほかないというのは、ジレンマですね……。
次のページ:今の思いやアメリカでワーママになった経緯などを聞きました。