JOES Davos Next 2025の基調講演には、今回も子どもたちから多くの質問が寄せられました。
馬奈木俊介先生の講演が始まってほどなくして、聞き手をつとめていた桑原りささんがあるビデオレターを紹介しました。登場した3人の中学生からの質問は、「ウェルビーイングを実現するために中学生のうちからやっておくこととは?」「ウェルビーイングという言葉を小中学生に理解してもらうために適切な説明は?」というものでした。
ひとつ目の質問からは、子どもたちがこの場での学びを自分の次の行動につなげていこうという、前向きな意欲を感じました。ふたつ目の質問は「ウェルビーイング」という言葉の定義を問うもので、この日の講演前半の大きなテーマとなりました。
このビデオレターを送ってくれたのは、青島日本人学校の中学部2年生の3人。JOES Davos Next 2025に学校参加した生徒たちです。馬奈木先生への質疑応答を通じてどんなことを感じたのか、同校中学部社会科担当の熊瀬功督(こうすけ)先生と中学部2年生の生徒3人に話を聞きました。
インタビューはオンラインで、青島日本人学校の授業中に実施。3人がワークをしている横で先生がインタビューに答え、時折先生から「どうだった?」と生徒に問いかけて、子どもたちの返事を引き出してくださいました。
(取材・執筆:只木良枝)

熊瀬功督(くませこうすけ)先生
——青島日本人学校がJOES Davos Nextに参加された経緯を教えていただけますか?
青島日本人学校では以前からJOES Davos Nextに参加していました。僕は本校に赴任2年目何ですが、その前から毎年取り組んでいたようです。
これまではテーマ的に理科の教科担任が担当していましたが、今年のテーマは社会科だろうということで、管理職から社会科担当の僕のところに話が来ました。小さな日本人学校ですので、子どもたちが外部の人とコミュニケーションする機会は貴重ですし、本校が取り組んでいるキャリア教育の一環にもなると考え、中学部の3学年全員で参加することにしました。
——基調講演は、どんな形で視聴されましたか?
残念ながらタイムゾーンの関係で、授業内でリアルタイム視聴することは難しかったのです。が、社会科の授業時間内に、中学部10名がひとつの教室に集まってみんなで大きなモニターを視聴しました。
動画は1コマ50分の授業の2週に分けて視聴し、振り返りの時間もとりました。
世界中色々なところに住んでいる同世代の子どもたちの意見を知ることができて良かったと思います。
——ウェルビーイング、子どもたちの受け止めはいかがでしたか?
視聴前は、みんな「ウェルビーイング」という言葉自体良く分かっていなかったというのが、正直なところです。聞いたことはあるけど、結局それが何なのかはわからない、という感じでしたね。
それが、馬奈木先生のお話を聞いて、ウェルビーイングというものは曖昧なものではなくて、しっかり定義づけがされている言葉であること、なおかつ、脳科学の面とか統計学の面から科学的な裏付けがされているのだということを学んだ。「なるほど、そういうものなんだ」と納得した、という感想が多かったです。
——視聴している子どもたちの反応はいかがでしたか?
メモをとりながら、熱心に見ていました。
たまたまなんですが、2学期に中学部3年生のある生徒が、社会科の探究的な活動を発表していました。テーマが「幸せとは何なのか」で、その活動の中で「ウェルビーイング」とか、「ポジティブ心理学」とか「思考の癖」などについて調べていて、自分が探究していたことと、今回の馬奈木先生のお話しがクロスするところがあったようです。本人にとってはとても有意義だったと思いますし、良かったと思います。
——それは生徒さんにとっても嬉しい偶然でしたね。ビデオレターでの質問に出てくださったのは?
中学部2年生の生徒です。彼らは事前ワーク「しあわせメーター」にも取り組みました。財団のほうからビデオレターのお話しがあり、いい機会にもなるので、ぜひやりたいと思いました。
子どもたちが画面に登場するなら保護者の承諾を得る必要がありますので、「JOES Davos Nextという国際的なイベントがある、その中で顔を出してビデオ質問をしたいのですがよろしいですか」とお尋ねしました。保護者のみなさんも「ぜひぜひ」という感じで賛成してくださいました。
以前からJOES Davos Nextに参加していたこともあり、内部的にも外部的にも、特に問題はありませんでした。
——ビデオレターの収録、大変だったのではないかと思うのですが?
子どもたちが喋って、僕がその様子をビデオカメラで撮影しました。
本校は小人数ですので、みんな前に立って発言することに慣れているというか、普段からその機会が多いんですね。なので、あまり抵抗もなく、特に緊張するということもなく、自然にできていたように思います。たしか3テイクほど撮影しました。
——こうして送っていただいたビデオが、馬奈木先生の講演の中で紹介されました。その時、教室のみなさんはどんな反応でしたか?
生徒に聞いてみますね。——動画に自分たちのビデオレターが映った時にどう思った?
……「本当に回答してくれるんだー、と思った」と言っています(笑)。
普段から授業などで動画を撮っていて、子どもたちも撮ったり撮られたりすることには慣れていると思うんですね。でも、自分たちが映った動画が世界配信の講演動画の中に出てきて、しかもそれに対して講師の先生が直接答えてくれるっていうのは、今までに経験がなかったようで。
それで、「本当に…」という感想になったんじゃないかと思いますね。
——馬奈木先生のお答えは、生徒のみなさんにとって満足できるものでしたか?
これも生徒に聞きますね。……「80%満足」だそうです。
——80%。十分いい数字ですが、マイナス20%が気になります。その理由を教えてもらえますか?
——マイナス20の理由は?……「何となく減らした」とか言ってますが(笑)。
……なるほど、「個人的にはマイナスじゃないんだけど、全員にちゃんと理解できたかがわからないから80%」だそうです。自分は満足したということですね。
——本人にはきちんと伝わっているけれども、みんながどうかがわからないということですね。自分だけじゃなくて、みんなのことを考えていらっしゃる、素敵な視点ですね。
今回のJOES Davos Nextは中学生の参加が多かったのですが、参加対象は小学校高学年から大人までどなたでも、としています。ただ、ちょっと小学生には難しかったのではないかという声もあります。先生の感触はいかがでしょうか? また、もっと対象者を広げていくためには、どんなことが考えられるでしょうか。
たしかに、今回の講演は中学生の方がより適した対象だったようには感じています。ただ、小学生でも内容自体はおそらく理解できると思うんです。そのときに難しい表現や言い回しがあるとついていくのが難しいと思うので、やはり今回のようなスライドはマストだと思いますね。
あとは、子どもたちの日常生活に、ウェルビーイングが具体的にどのように関わってくるかというところをしっかり見せていけば、話を理解することはできると思います。
——心強いご意見ありがとうございます。
JOES Davos Nextというイベントをきっかけに、学校同士の交流が進んでいます。すでに一部では現地校との交流の例もあるのですが、青島ではそんな動きはありますか?
現地の事情もありますので、交流事業は他の国に比べると若干やりにくいかもしれません。でも現地校等との交流は様々な形ですでにやってきていますから、今後の可能性はまったくゼロではないと、僕自身はそういう感覚を持っています。
——ありがとうございました。また次回のJOES Davos Nextでお目にかかれることを楽しみにしています。
.png)
参加生徒のコメントより
●JOES Davos Nextのことは初めて聞いたので、世界規模でやっている、いい意味でなんか不思議な活動なんだと思いました。
●講演のなかで「家族や友達との仲を深めるのが特に重要」という話がありましたが、以前よりそこを少し意識してみようと思うようになりました。
●ウェルビーイングについては、今までは漠然と、あいまいにしかわかっていなくて、しあわせと似ているのはわかるけどどう違うんだろうと思っていました。講演を聞いて、なるほどと思いました。
●親にはよく怒られるので、ちょっとキライだなと思うこともあったんですが、講演会のあとはちょっとだけ親の気持ちも考えるようになりました。自分のことばっかりだと「自己中」みたいだし、親も大切だよなと思いました。
●講演を聞いてから、以前よりも周囲とのコミュニケーションをとるようになったような気がします。






