門から望む校舎広大なキャンパスの中に共存する「日本人学級」と「国際学級」
シドニー日本人国際学校(SJIS)は、シドニー郊外テリーヒルズの豊かな自然環境に囲まれ、広大なキャンパスを有しています。本校最大の特徴は、文部科学省の学習指導要領に基づく「日本人学級」と、NSW州のカリキュラムに基づく「国際学級」という2つの異なる教育課程が、同一キャンパス内に共存している点です。
私たちは、日豪両国の文化と価値観を尊重し、国籍を問わず全ての子供たちに世界レベルの教育を提供しています。高い学習成果はもちろんのこと、多様な文化を受け入れる受容力や積極性を育む「奥深い教育」を実践しています。バイリンガル教育の利点を最大限に活かし、二言語運用能力だけでなく、思いやりと責任感を兼ね備えた、世界の「架け橋」となる人材の育成を目指しています。
全校の児童生徒数は約200名。その内訳は、両親ともに日本人の家庭、日本にルーツを持つ家庭がともに約40%、日本にルーツを持たない家庭(中国系、ヨーロッパ系など)が約20%です。多様なバックグラウンドを持つ生徒が在籍しており、日常的に日本語と英語が飛び交う環境がキャンパス内に広がっています。
教職員は、現地採用教員と、日本からの派遣教員、合わせて約50名ほどです。異なる教育文化を持つ教員同士もまた、互いに刺激し合いながら、子供たち一人ひとりに寄り添う手厚い教育を実現しています。
国立公園に隣接する自然豊かな広い校庭
中秋の名月を観察して、俳句をつくろう!
本校が事務局となり、「2025年10月6日の中秋の名月を観察して、俳句制作をしよう」と呼びかけました。世界各地の日本人学校及び日本国内の学校(12カ国18校)が参加し、共有した月の写真や俳句を活用して、理科や国語及び社会等の授業において、教科横断的で探究的な学習を展開しました。
地球のどの場所からも見える中秋の名月を観察し、世界の月を比較し、世界や宇宙に対する興味関心を広げることが趣旨です。また、「月を見て一句ひねる」という日本人が感動を表現する文化である俳句も引き継いでいくこと、そして世界中の多くの人が同じ月を見ているロマンを感じながら、交流できることが目的です。
このプロジェクトを行うきっかけになったのは、日本から派遣された教員が「シドニーでは三日月の向きが日本とは逆」ということに感動したことからでした。「日本とシドニーで同時に月の満ち欠けを観察すると面白いのでは」という発想から授業が構想されました。
2024年度は日本とシドニーの2校で新月から満月までを観察し交流しました。2025年度は世界中に呼びかけ、観察しようと考えていました。そんな折、東京学芸大学の国際教育グループ「在外教育施設 つながる 学ぶプロジェクト」に参加したことから、本校が、事務局として運営し実践に至りました。
<参加校一覧> 中秋の名月を見た人は475人、俳句を作った人は338人(内、中秋の名月を見ながら作ったひとは289人).png)
世界中から集まった「月と風景」
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月を拡大すると模様が見えてきます。世界各地で月の模様の見え方が違っていました。
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児童生徒の俳句の俳句(一部)
俳句制作や鑑賞を授業で行いました。その国ならではの情景や、この月を違う場所から見ているんだという感慨を詠んだりする句が多くみられました。
〇 名月は 神代の月の 太陽だ(小4 アメリカ)
〇 遠き空 君も見ている この月を(ペルー)
〇 マチュピチュや 月も息切れ 高地かな(中1 ペルー)
〇 シドニーで 光り輝く 月夜かな (中2 オーストラリア)
俳句を制作し、鑑賞した感想(一部)
月は自分で見れなかったけれど、写真を使って俳句を作るのがたのしかったです。またやりたいです!
ほかのひとのかいたはいくがきれいだった。世界でも月をみて、はいくをつくったんだなと思った。
俳句を作ってみて月に興味と関心がわいた!同じ月を同じ日、同じ時間に見ても場所が変わるだけで、見え方や、角度が変わるなんて、不思議。
月の写真での授業を通して、児童生徒の感想(一部)
同じ地球でも月の見え方が違っている。それでも世界中の人が同じ月を観ることに、感動しました。
どこの国もまん丸お月様でびっくりした。同じ月を見上げていたんだなと嬉しくなった。
どこでどんな子たちがどんな生活をしているのか気になった。
- 月の模様が場所によって違うのはどうしてか。どうして月の輝きがいつもと違うのか気になった。
プロジェクトを終えての先生方の感想
世界中の月を観測したこと自体、ロマンがあり、俳句を詠むことも新鮮でした。子どもの感性は素晴らしいです。
子供たちが、色々な国で日本人ががんばっていること、同じ月を見上げたことに大変感動していました。参加してよかったです。その感動を俳句だけではなく、自主的に詩に表現している児童もいました。また、どこから見ても満月なのはなぜだろうと、理科的な興味も出て調べている児童もいました
事務局からの写真を見せたとき、世界各地で丸い月だったことがわかったり、写真に写りこんでいる風景を見たり、の模様のちがいを知ったりと子どもたちの反応がとても新鮮だった。また,自分の国・市の理科室にいるのに、世界中の様子を知れることに感動していた。
今回のプロジェクトに対してアンケート回答者全員から「参加して大変良かった」との評価をいただきました。
成果
1. 授業の質の向上
● 教科横断的な授業の質の向上
理科に限らず、身近な自然現象への関心が高まり、授業がより実感を伴ったものになりました。学校と家庭が連携することで、子どもたちの学びが深まり、教科横断的な教育の質が向上しています。
● 学びの広がり
満月だけでなく、月食や月の満ち欠けにも目を向けるようになり、天文への理解が深まりました。さらに、文学など他分野への関心にも広がり、知的好奇心が高まっています。
2. 日本人としての連携意識の向上
● 同じものを見る体験の共有
みんなで同じ自然現象を観察することで、同じ感動や気づきを分かち合うことができました。これにより、自然への共感が深まり、文化的な一体感や地域へのつながりが強まりました。
● 俳句を通した感性の育成
俳句を詠み、味わう活動を通して、季節や自然の変化に気づく力が育ちました。また、「言葉にしすぎない表現」や「間」を大切にする、日本人ならではの感性を養うことができました。
3. 保護者との繋がり、シームレスな学習へ
● 保護者への広がりと家庭学習の充実
学校での活動が保護者にも伝わり、家庭での天文観察や自然への関心が高まりました。理科通信などを通して、家庭と学校がつながる学びが進みました。
4. 校内教職員間交流の深まり
● 観察や研修を通した協働
月食の観察や研修を通して、教職員同士の交流が深まりました。同じテーマで学びを共有することで、協力し合う意識が高まり、教育活動への意欲や連携が強化されました。
5. 参加者同士の交流と情報交換
● 月の観察写真や情報の共有
継続的に写真や情報を共有することで、月への関心が高まり、知識も深まりました。情報交換が続くことで、興味・関心が長く保たれています。
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今後の展望・夢
「空をみんなで見上げる」という構想は、今始まったわけではありません。30年ほど前、埼玉県の小森栄治先生(現在 日本理科教育支援センター代表)のサークルで、同じ空を見上げる「星空の連携」を日本中の中学校で行っていました。中学生に「夜10時に空を見上げよう」と呼びかける取り組みです。
当時、中学3年生の天体の単元はちょうど冬の受験シーズンに重なっており、夜10時は、受験勉強に疲れた生徒が一息つける時間でした。「星空の連携」の波及効果は想像以上でした。窓を開けたときの換気による清々しさ、冷たい空気に触れる爽快感、広大な宇宙を眺めながら自分の小ささに気付き心に深みが生まれる感覚、そして自分と同じ受験を控えた日本中の中学生が、今まさに同じ星空を見上げているという連帯感が生まれていました。
毎日、星を見上げていると多くの生徒が自然とオリオン座の観察に行き着きます。時間帯によるずれから日周運動や、日を追うごとに位置が変わる年周運動に気づく事もできました。生徒が大人になってから「会社帰りに星を見上げています。」と便りをくれることもありました。
時と場所を超えて、世界中の学校でダイナミックな授業を作ることになりました。
「われら地球人!中秋の名月を世界中から見ようプロジェクト」は、2026年度も行います。2026年の中秋の名月は、9月25日(金)です。
一緒に空を見上げる人が増えてくれたらうれしいです。
学校に通う子供だけでなく大人も、国も地域も超えて「空を見上げて」繋がっているロマンを感じることができればと願います。一人でも多く「空を見上げる」世界を心に持つ豊かさがありますように祈ります。
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活動の様子をレセプションで紹介プロモーションビデオ https://www.youtube.com/shorts/B2ZdV55r8as
(制作「在外教育施設 つながる 学ぶプロジェクト」)
シドニー日本人国際学校https://sjis.nsw.edu.au/ja
(シドニー日本人国際学校 鈴木はるみ)