世界で活躍できる「自立し、自律した学習者」を育てる
子どもたちが主体的に考え、学べる学校
愛知県瀬戸市にある瀬戸SOLAN学園は、「グローバルシチズンシップの育成」を建学の精神に掲げ、世界のどこでも通用するたくましい人間を育てることをめざしている。学園がめざす子ども像は、「自立し、自律する学習者」。「自立」は、自分で生き抜く力を持つ姿、「自律する学習者」は自分自身の力で生涯学び続けることができる姿を指している。
「瀬戸SOLAN学園では、これからの子どもに求められる『資質・能力』を身につけるために、子どもたちが主役となり、自ら行動できるような学びに力を入れています」
そう話すのは、瀬戸SOLAN学園の創立者でもある、長尾幸彦理事長。さまざまな市町村の教育委員会で長らくコンサルタントを務める長尾理事長は、公立学校の閉塞感を感じていた。2020年に7つの小中学校が統廃合した愛知県瀬戸市の跡地利用公募により2021年4月に瀬戸SOLAN学園を開校した。開校にあたり初等部1~3年生の生徒を募集したものの、コロナ禍で全校生徒はわずか31人でスタートした。その後、順調に発展して現在は、1~4年生は26人定員のクラスが3クラス、5年生が2クラス、6、7年生が1クラスで合計児童生徒数が382名の規模となっている。
「探究」「英語」「ICT教育」の3本の柱でできたカリキュラム
瀬戸SOLAN学園の教育は、「探究学習」「英語教育」「ICT教育」の3本の柱でできており、すべて充実したものだ。
「探究学習」で軸になる学びは個人探究「SOLAN学習」である。週2~4時間を設けている。
「子ども一人ひとりの興味・関心に基づいてテーマを設定し、教科等の学びで得た知識やスキルを駆使して自分の力で調べ、まとめて発表するという探究プロセスを繰り返して学び続けます。子どもは、この学びを通して、課題解決力、自己調整力、コミュニケーション力、そしてレジリエンスと社会で求められる非認知能力を獲得していきます」
加えて、週3時間のチーム探究である「プロジェクト学習」も実施している。これは、学級及び学年で課題を設定し、協働的な学びを展開している。
さらに、個人探究やチーム探究と教科学習との間で「学びの往還」を目指して、教科学習でも探究プロセスを導入した教科型探究授業にも取り組んでいる。
「7年生になると、個人探究が高度化して、ひとつの大きなプロジェクトへと変貌していくことがあります。例えば、『地域貢献』について個人探究に取り組んでいく中で、複数の子どもたちが同じようなテーマで活動している場合がありました。彼らが互いの想いを共有しあう中で、協働的に活動を展開しきました。その後、活動の輪は7年生学年全体に広がり『地域貢献をやろう』となり、地元の町内会長や瀬戸市長を招いて、瀬戸市についてのトークディスカッションを行なったこともありました」
「個人探究学習」の授業では、生徒たちは自分の「大好き」をとことん極められる。それと同時に、自分に足りない知識やスキルを認知し、自律的に学ぶようになる。例えば、プレゼンテーションを成功させるために、漢字の読み書きの学習に力を入れるなど、基礎的な学力を習得することの意味を理解し、価値付けができるようになるという。基礎的な学力の「習得」、その「活用」であるプロジェクト、好きなことを極める個人探究を往還しながら、生徒たちはめざましく成長する。その可能性の大きさに大人たちは日々驚かされていると長尾理事長は話す。
「英語教育」では、1年生から週4時間の英語の授業を実施。それに加え、全学級に日本人の担任と外国人の担任を配置する「バディシステム」を導入し、授業以外のモーニング、クロージングミーティング、生活科などの時間も英語で行っている。その結果、小学校4年生の段階で英検3級程度に値するCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1レベル(日常生活で最低限のコミュニケーションが取れる程度)以上を全員が取得している。
「学校生活全体では、子どもたちは日本語で会話することが多いですが、日本に来たばかりの帰国生の中には日本語が苦手な子もいます。そういった場合に、担任のひとりが外国人だと安心してもらえると思います。また、日本語と英語が話せるバイリンガルの教師が多いこともSOLANの特長です」
「ICT教育」では、1~5年生はiPad、6~9年生はMacBookを使用し、ツールとしてICT機器を当たり前に利用できるように力を入れている。2年生からは「キーボード入力」が始まり、3年生では1分間で平均110文字程度の入力ができるようになる。外部評価として、日本教育工学協会の先進校指定やAPPLEの革新的教育校指定(ADS)を受賞しており、これらの取り組みは高い関心を持たれ、国内外から年間500名以上の視察者がSOLANを訪れるという。
社会集団の中で達成感を得るという経験を与えたい
異なる学年同士の交流が多いのも瀬戸SOLAN学園の魅力だ。1年を通してさまざまなイベントを開催し、毎年恒例の「強歩会」では、全学年の生徒が瀬戸市の学校から名古屋市中心部にある名城公園までの約30kmを歩く。高学年が低学年をサポートしながらゴールをめざし、毎年約98%の生徒が完歩するという。社会集団の中で達成感を得るという経験をすることは、子どもたちにとってとても意味がある体験だろう。
「今年もスキー合宿で長野県の志賀高原を訪れる予定です。合宿期間中はスマホ、テレビを含めたデジタル機器に触れることを禁止し、自然の中で心身ともに鍛えます。来年からは6年生が提携校である北海道釧路市の国立附属小学校を訪れて授業交流をするとともに、アウトドア活動などを楽しみます。離れた土地の人たちと交流し、お互いの地域の文化や魅力を教え合うことで、自分たちの地元の魅力を再発見できる機会にもなるでしょう」
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自由な校風も瀬戸SOLAN学園の特長だろう。学校には明文化された校則がない。先生が生徒に理由を説明できない理不尽な校則や、本質的な意味がわからない「習わし」は一切ないという。
「子どもたちは『SOLANらしさ』という言葉をよく使います。職員は子どもの人格と個性を尊重し、子どもたちの自由を広く認めます。特に高学年は、自由の相互承認に基づき、自由を享受するための責任を十分理解していると思います」
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帰国生の受け入れで重視するのは保護者面接
瀬戸SOLAN学園は、原則として編入受け入れは初等部4年までだが、帰国生の受け入れについては中等部3年生まで対応。また、定員数を若干超えても受け入れている。 帰国生の入試制度は、学力検査と行動観察に加えて、保護者面接を実施。学力検査は、初等部2年生以上の場合は、該当学年の前年度までの学習をどの程度習得しているかをみとるテスト(国語・算数)と英語のスキルチェックを実施。あくまでもテストは現段階の実態を知るための一つの情報であり、たとえテストで点数が低かったとしても、家庭学習でもフォローできることが確認できれば問題はない。行動観察は、原則として、該当学年学級の授業に2日間の参加を希望する。海外滞在中で難しい場合は、オンラインによる口頭試問への変更も可能だ。
「入試制度で最も重視するのは保護者面接です。瀬戸SOLAN学園という学校を理解してもらい、学校と家庭の関わりなどを直接お話しできる機会になります。面接は対面、あるいはオンラインでも可能です。入学後は、個別のサポートにも力を入れており、授業だけで学習内容を理解することが難しい場合は、補習授業を行うこともしています」
卒業後の進路については、日本の高校への進学、オーストラリアのメルボルン周辺にある提携校への進学など幅広い選択肢がある。日本の高校受験をめざす生徒には、河合塾から派遣された講師による国語や数学の受験対策が受けられるコースもあるというので心強い。
「本校では、子どもたちが自分で学び始め、自走して学び続けてくれる大人に成長することを願っています。そのために、保護者のみなさまには学校創りのパートナーになってもらい、わたしたちとともに新しい教育をつくっていただきたいと思っています。子どもたちの幸せという最上位の目標に向けて、一緒に歩んでいきましょう」










