こくみん共済賞

言葉でつなぐ世界

上海日本人学校浦東校(中国)
中1 金 賢俊
 

ひとりでいると こわかった
言葉がわからないということは
声があっても 沈黙みたいで
笑顔を返すことさえ むずかしかった

 

教室のすみにいるぼくに
まわりの世界は 遠かった
まるで 見えない川の向こう岸のようで
足を踏み出す勇気が なかなか出なかった

 

でも ある日
「你好!」と声をかけられた
中国語だったけれど
その笑顔は ぼくの不安を消してくれた

 

ぼくも「你好!」って返してみた
たったひとこと
でもその一歩で
川に 一本の橋がかかった気がした

 

それから 少しずつ
中国語のあいさつを覚えた
笑うタイミングもわかってきた
言葉が通じなくても
「気持ち」は通じると知った

 

橋は ぼくだけが渡るものじゃなかった
相手も渡ってきてくれる
手を差し出せば その手を取ってくれる
それが 人とつながるということだった

 

日本でのぼくも
中国でのぼくも
どちらも本当のじぶんで
どちらも 世界を知っている

 

ぼくがかけた橋が
未来につながる道になるように
いつか誰かが迷ったとき
「大丈夫だよ」と言えるように

 

この上海の空の下で
ぼくは今日も 橋をかけている
違いを超えて つながるために
そして未来へ 一歩ずつ進むため