日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。
2025年6月16日
子どもの教育

日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。

<質問> 
日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか

はじめに

「海外赴任が決まった!」

 

さて、皆さんはご家族にどのように伝えてきた、または、伝えていくのでしょうか? 

 

赴任前まで日本の生活を楽しみ、保育園、幼稚園、学校での遊びや勉強、そして部活動やサークル活動も順調だったお子さん、または、何かしら課題があり、その状況を抱えて海外に行くお子さんは、出国前、出国後、赴任中、帰国前、帰国後とさまざまな心の変容が起こっています。今回は「子どもの自己肯定感を保たせるには、どうしたらよいか」を考えていきたいと思います。 

日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。

 お子さんの特徴と特長

「特徴」とは、他と比べて特に目立ったり、他との区別に役立ったりする点のことで、プラスとマイナスの両面の様子を表現することです。 

 

一方「特長」とは、基本的によいところや強みを中心に表現することです。プラス面の個性や長所をアピールすることで、欠点や短所を示す時には使われません。  

 

これまで、学校選択に関する相談を受けた際は、お子さんの性格の「特徴」をお聞きし、よい部分を伸ばせる入学・編入学先、課題がある部分を改善する進路先など、個人の状況にあった学校選択になるようお話をさせていただいています。 

 

また、赴任中は、お子さんの変容を日記や手帳等に記録し、できなかったことができるようになった経験や積極的に頑張った点などの「特長」を家族で共有し、お子さんをほめていっていただきたいとお願いしています。

日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。

自己肯定感が育たない事例

これまでの子育てで、お子さんがうまくできたことや頑張ったことを話しにきた場面が多々あったと思います。その時にどのように対応していたか、また、現在はどのようにしているか、いかがでしょうか? 

 

お子さんの年齢によって、たとえば英語のリスニングやスピーキングは幼少期の方が早く伸び、弟や妹の方が兄や姉より上達しているように見えます。その時、下の子と上の子を比べるような言動をしたり、他のことでも友達と比較したりすると、お子さんの自信とやる気を失くしてしまいます。

 

また、できなかったり、失敗してしまったりしたことに対して厳しく叱ると、その経験が積み重なり、お子さんが自己否定したり、周りからの評価やほめ言葉を素直に受け入れない状態になり、自己肯定感が育まれにくくなります。 

 

怒られないよう、否定されないように行動したり、どうしたら他の人から評価され、ほめられるかばかりを考えてしまったりして、ありのままの自分が嫌ですべてに自信が持てず、力が発揮できなくなります。

 

自己肯定感がある人の特長

  • 物事に向き合う時に自分の長所を活かして取り組むことができる。

     

  • 他の人のよい面を見ることができ、相手の考え方や意見を受け入れ尊重することができる。

     

  • どんな場面でも肯定的に受け止め、前向きに考えて意見を言うことができる。

     

  • 新しいことやチャレンジが必要なことに対しても失敗を恐れずに行動できる気構えがある。

     

  • 失敗を「次、に頑張ればいい!」「これも良い経験!」「失敗は成功のもと!」「ピンチはチャンス!」と前に進むエネルギーに変えていくことができる。 

 

 海外では、さまざまな環境があり、家族や本人の取組や心がけで自己肯定感のあるお子さんに少しずつ変容していくことができます。

日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。

家族の自己肯定感を高める

家族の会話は、出国前、出国後、赴任中、帰国前、帰国後に様々な話題で取り交わされます。お子さんの自己肯定感を高めるためには、家族全員が自己肯定感を高める必要があります。まず、親が前向きな気持ちになり、前向きな会話を心がけていくことが大切になります。 

 

そのために、次の5つの点をチェックしてみてください。 

 

  1. 家族全員が普通に会話できる人間関係が構築されているか。 

     

  2. お子さんが話しかけて来たときに寄り添って話を聞いているか。

     

  3. お子さんの話を最後まで聞かず、途中に自分の考えを挟み、まとめようとしていないか。 

     

  4. お子さんの話の中でがんばったことや失敗したことを聞いたときに、反応よくお子さんをほめているか。 

     

  5. 兄弟姉妹や友達と比較せず、お子さん自身の努力の過程をほめ、伸びた点を認める言葉がけをしているか。  

 

ポジティブに!前向きに!

私が恩師からいただいた大切な言葉に「たった一言が人の心を傷つける。たった一言が人の心をあたためる」があります。家族は大切な存在ですが、家族だからこそ、つい感情が入ってしまい、思いもかけない言葉を言ってしまった経験はありませんか。そのようなときは「言葉の転換」を図ってみることをお勧めします。 

 

たとえば、次の言葉は、右のようなポジティブな表現に言い換えることができます。  

 

  • 飽きっぽい→好奇心旺盛 
  • 諦めが悪い→粘り強い 
  • 甘えん坊→人なつっこい 
  • 整理整頓苦手→物持ちがよい  
  • しつこい→ねばり強い
  • 生意気→自立心がある
  • ひがみっぽい→よく気が付く
  • 反抗的→自我がある
  • ひねくれている→独創的
  • 人に流されやすい→素直
  • ルーズ→のんびりしている
日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。

自分の自己肯定感を高める

先に述べたように「自分を否定しないこと」が自己肯定感につながります。会話の相手に ネガティブな言葉をかけないよう気を付けるだけでなく、自分自身の性格、短所をポジティブに置き換えていくことが大切になります。ただ、もちろんお子さんに任せただけではなかなか変容は見られません。お子さんの言動や様子を見て、適切に励ましたり、よりよい考え方になるように導いたりして、優しく見守っていただきたいです。

 

そして、お子さん自身が「考え方、見方を変えればいいんだ!」と気づけるようになるためにも、次の3点をお勧めします。 

 

  1.  お子さんが学校や習い事、サ ークルの場でどのような人間関係にあり、不安なことがあるのか、悩んでいることがあるのか、家族間で共有することが大切です。まずはよりよいコミュニケーションが取れるよう学校の先生やスクールカウンセラー、教育相談員のアドバイスを取り入れ、親子で取り組んでいく。 

     

  2. 子ども自身が短所や現在不 安なことなどを書き出し、「ポジティブな方向に置き換えられないか」「ただの思い込みではないか」、などと自己分析をする。自分のありのままを受け入れるようにして、日常的に物事をよい方向に考えるようにする。

     

  3. 周りの友人や知人、本やドラ マの主人公が悩んでいる場面でどんなアドバイスができるか、自分が前向きになってポジティブにコミュニケーションをする場面を想像してみる。「自分もこういう考え方ができる」と気づく体験をする。  
日本では成績もよく人気者だったのですが、海外では言葉が通じず、自信を持てずにいるようです。どうしたらいいのでしょうか。

おわりに

海外での生活は家族にとってとても貴重な共有体験です。お子さんといろいろな場面を共に過ごしてください。学校の授業や行事、地域の催しやボランティア活動、家族の時間で、「できた!」「わかった!」「がんばった!」などの小さな成功体験を家族みんなで喜び、ほめ、次に向かう姿勢を応援していってください。 

  <回答者>       
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー 川﨑淳一郎(かわさきじゅんいちろう)
海外子女教育振興財団 
教育アドバイザー
 川﨑淳一郎(かわさきじゅんいちろう)  
埼玉県の公立学校に教諭、校長として勤務し、埼玉県教育局教育事務所指導主事、教育委員会学務課長を歴任。ケニア・ナイロビ日本人学校で教諭、ニューヨーク補習授業校で校長を務めた。2024年度より現職。