子どもたちの「自信」と「可能性」を引き出す
大自然の中のインターナショナルスクール
長野県内に9キャンパスを擁する総合スクール
インターナショナルスクールオブ長野(ISN)は、長野市エリア、松本市エリア、中野市エリアにプレスクール、小学部、中学部合わせて計9キャンパスを擁する、長野県や自治体と密に連携したスクールだ。
ISN代表の栗林梨恵先生は、長野県出身。国連機関で働くことを夢見て海外留学を経験。現地で欧米の教育に触れるなかで、日本の豊かさを改めて知る一方で、日本の地方都市には学びの選択肢が足りないことを痛感。そこで、「英語くらいは問題なく使えるようになってほしい」という想いで、地元への恩返しになればと、「国内で留学体験」の環境をつくった。
「私の興味は子育てと、人材育成です。子どもたちは将来、何かしらで世界と関わるタイミングが来るでしょう。その時に必要な、チャレンジを楽しむ心、スキル、知識が備わっていたらいいなと。子どもたちのみならず、保護者の皆さんや地域の企業などの皆さんと共に成長する環境が長野県にあることで、その先の世界に貢献したいと思っています」

一条校でありながら国際バカロレア(IB)プログラムを提供
ISNの設立は、2012年7月。松本市の南松本キャンパスでプレスクールを開園した。その後、2015年に小学部フリースクール開校に合わせて、国際バカロレア(IB)を申請。2017年にIBPYP(Primary Years Program)の認可を受ける。その後、松本市内の島内キャンパス、長野市内の長野キャンパスと規模を拡大した。2021年12月には松本五常キャンパスの小学部が一条校の認定を受けた。
そして、2022年4月には、旧松本市立五常小学校を改装した五常キャンパスに小学部・中学部を集約し、学校法人インターナショナルスクールオブ長野として運営している。
■<沿革>インターナショナルスクールオブ長野
https://isnedu.org/company-information
「ISNのユニークな点は、インターナショナルスクールとして、IBプログラムを提供しながら、日本の一条校の小学部もある、というところでしょう。国際感覚と日本らしさの両方の強みを活かせる教育を提供できる環境が整っています」
ISNでは、IBの理念に基づきながら、独自の教育理念も大切にしている。それは、「素直+誠実=自己信頼」というもの。「素直な心」と「誠実な行動」によって、自己信頼を育む日常生活への姿勢にこだわっている。そして、ビジョンとして、「世界という選択肢を、すべての子どもたちへ」を掲げ、「子どもたちの自信と可能性を引き出す学び」をミッション(使命)として教育に取り組んでいる。

5つの行動指針
ISNの教育を理解する上で、役に立つのがスクール生たちの「行動指針」だ。それは、①本質とつながる、②傾聴、③丁寧に向き合う、④自主性から主体性へ、⑤デザイン思考の5つだ。ひとつずつ見ていこう。
まず、①「本質とつながる」。ISNでは、物事の根本的な意味や価値に深く向き合い、それを理解することを大切にしている。ここで必要になるのが、単なる表面的な知識や技術の学びではなく、物事の本質に基づいた思考や行動だ。そのため、「宿題」や「掃除」をするにも「何のために?」「自分のゴールは?」「ほかにどんなゴールがあるのか?」ということを子どもたちに考えさせる。そのプロセスこそが学びなのだ。
「これは、ISNの探究ベースの学びの基本姿勢です。一人ひとりが人生のオーナーシップを持ち、学校は自分のもの、自分の人生は自分のものという姿勢で学ぶことで、より主体的でクリエイティブな思考が身につくのです」
②「傾聴」は、相手の言葉や気持ちに心を開き、表面的な反応ではなく、その背景にある考えや感情を理解しようとする姿勢を大切にする。対話の中での共感や深い理解を重視し、子どもたちが他者と真につながり、人間関係の中での信頼を築ける力を育むことを目指している。
③「丁寧に向き合う」は、生徒たちと「共に取り組む」、生徒たちや事象を「理解しようとする」という姿勢によって、彼らの自己肯定感と自信を育む教育を指す。「逃避」や「他責」の態度は、ストレスを引き起こす原因となる。そこで、ISNでは、生徒が人や状況に対して一つひとつ丁寧に向き合うことを大切にし、その過程で新たな挑戦に自信を持って取り組む力を育んでいる。
④「自主性から主体性へ」。ISNでは、「個の創造」から「チームでの共創」へと発展できる教育を意識している。ここでいう「自主性」とは枠内での活動、「主体性」とは枠を超えた活動を指す。まず、自分の役割や与えられた範囲で積極的に行動する力を獲得した上で、自分の枠を超えて、チームやグループを主導する力を育むことを目的としている。
最後は⑤「デザイン思考」。これは、単に既存のものを改善するのではなく、課題の本質を理解し、解決策を生み出す思考だ。共感を大切にしつつ、創造的に枠を超えて問題解決を行うことで、革新的な成果を実現することを目指している。
「『生きること』を心、スキル、知識として学ぶ上で、長野県というロケーションは非常に重要です。キャンパスの周辺には、りんご園やバラ園があり、農業を身近に感じることができます。例えば、農業体験では、単に作物の収穫をするだけでなく、種まきや草取りから通年で作業に関わることで、どの季節にどの雑草が生えるのか、どの季節にどの作物が収穫できるのか……といった暮らしに密着した農業を地元の専門家と一緒に学ぶことができるのです。本質的な発見や課題解決は、こうしたリアルな体験から生まれるものと考えます」
小学部ではオプションの留学プログラムも
ISNでは、プレスクール(幼稚園)から小学部、中学部までの一貫教育を提供している。英語での教育に加え、日本語の教育も提供している点がポイントだろう。例えば、小学部では、午前中の4コマが英語の授業、午後の2コマが日本語の授業になっている。小学部は特例校、中学部はフリースクールならではの、柔軟性がカリキュラムに見られる。
「小学部では、IBのPYP(Primary Years Programme)に準拠して、年間6つの探究課題に挑戦します。例えば、アップルピッキングの活動であれば、まずどんな道具が必要か、どんなスキルを得られるかというゴールを生徒たちと一緒に設定し、そこから実際に活動を体験して、振り返りのワークも行います。また、課題ごとに仕上げのプレゼンテーション等、生徒がアセスメントの方法を選んでを行うのも特色でしょう。現場で学んだことを仲間とシェアすることで、相乗効果をつくります。」
小学部のGrade5~6(5~6年次)の時期には、オプションで海外留学プログラムも用意されている。期間は2週間で、今年はオーストラリア。他にも、イギリス、カナダ、ニュージーランドなどが留学先の候補だ。中学部まで進んだ生徒たちは、日本の高校だけでなく、海外の高校に進学する例もある。
なお、帰国生の受け入れについては、随時受付中とのこと。ISNのウェブサイトから直接問い合わせをするとスクールから次のアクションについての指示がもらえる。
■問い合わせ
寮などの設備はないため、基本的には長野県近隣エリアの自宅から通うことになる。家族でWell-beingを選択する...ISNの教育内容が気になる場合は、まずは各キャンパスで行われるサマースクールに参加してみるのがいいだろう。
■サマースクール(対象は2~12歳)
https://isnedu.org/summer-school_summer-camp/

子どもたちが自分で決めて入学してほしい
プレスクールや小学部には、外国籍の保護者がいる子どもたちも数多く通っており、現場はインターナショナルな雰囲気。自主性を尊重する環境は、欧米圏から帰国した子どもたちにも向いているに違いない。IBプログラムを提供するインターナショナルスクールと一条校の組み合わせに興味を持つ人なら、一度見学してみる価値はあるだろう。
最後に栗林先生から帰国生へのメッセージをいただいた。
「ISNは家族であり、世界ネットワークのグローカルなラーニングコミュニティーです。ISN保護者の皆さんの多くは、学校での学び、課外体験プログラム、留学など、子どもたちが自分で決めてほしい (ownership, agency)、と願います。そのために、”心身とも健康的な家族” を目標に、生徒はもちろん親も、ISNスタッフと一緒に共創の心や、子供たちの「内側の問い」を育てるコミュニケーションを、毎日学びます。
そんな会話や、寄り添いを通して、家では子供たちの愛情タンクを満タンにして、毎朝送り出してほしいですね。エンジニア、パイロット、看護師……いろいろな夢を持つ子どもたちが通っています。彼らの未来を一緒に描くために、何ができるのか考え、伴走するがISNの役割だと思っています」