2024年9月2日
先生からのメッセージ

学校になじめないでいる君へ

東京女学館中学校・高等学校
英語科教諭 国際学級主任
青木 理恵

 

 「小学校のころは(帰国後、日本のクラスメートに)海外でのことを話しにくい雰囲気だった」

「自分の経験を話しているだけなのに、自慢しているように思われた」

「海外ではよく手を挙げて質問していたのに、日本では怒られてだんだん発言しなくなった」


 これは、本校国際学級の中学1年生と話をしている中で、私がこれまで耳にしたことのある言葉です。ただし、「今はどう?」ときくと、目をキラキラさせて「今はそんなことない!毎日楽しい!」と答えてくれます。

 日本の小学校で、どこか自然体でいられない辛さを感じてはいませんか。海外での経験はかけがえのないものであるはずなのに、それを「話しにくい」、さらに「発言をやめてしまった」とは残念です。このように語る生徒たちに会うと胸が痛みますが、国際学級での生活を「楽しい」と言ってくれるのを聞くと本当に嬉しく思います。

 周囲と異なる経験をしているのは素晴らしいことで、一人一人違っていて当たり前。それぞれ性格や得意なことも違うからこそ楽しいし、新しい発見が生まれ大きな力が発揮できます。また、これから成長すればするほど自分の考えがはっきりしてきますので、「みんな一緒」なんてますますありえない。考え方も、やりたいことも、それぞれ違って当然です。自分を確立することはとても大事で、自信のない人ほど周りが気になるものです。

 でも自分がしっかりしていると様々な価値観を柔軟に受け入れることができますし、周囲との違いもそれほど気にならないものです。「自分」がぶれずに相手を受け入れることができるからです。自分を大事にできない人が他の人を大事にすることは決してできないと思います。

 これは「自己中心的」なのではありません。自己の確立は、異なるものへの尊重や多くの個性の共存を可能にしていきます。もちろん世界中どこでも主張ばかりでなく「人の話がきちんと聞ける」ことも大切なのは言うまでもないのですが、与えられたことを鵜呑みにせず自分の頭と心のフィルターを通して考え、思うことをお互いに自分の言葉で伝え合いながら、笑顔で前に進めるといいですね。

 国際学級は帰国生と日本の小学校出身者が一緒に学び合うクラスで、帰国生の滞在国は15か国ほど。育った環境や価値観の違いをオープンに受け入れる土壌があります。海外生活で得たみなさんの良さを十分に活かし、楽しくのびのびと豊かな学校生活を送ってほしいと心から願っています。