インターナショナルスクールに通う子どもが日本人生徒で固まりがちです。親としては外国人の友人を作ってほしい。
2024年9月17日
子どもの教育

インターナショナルスクールに通う子どもが日本人生徒で固まりがちです。親としては外国人の友人を作ってほしい。

<質問> 
子どもは日本人の多いインターナショナルスクールに通っていますが、日本人同士で固まってしまいがちです。親としては外国人の友人を作ってほしいのですが……

はじめに

 海外に赴く子どもたちは多くの不安を抱えて出国しています。異なった暮らしや言葉はもちろんですが、一番の不安は学校生活、勉強、そして友だちのことでしょう。  

私は以前、日本人学校に勤務した経験があります。日本語での授業、日本の教育を中心に行う日本人学校でさえ、入学や編入学をしてくる子どもたちは当初不安だらけの毎日でした。ましてや海外での教育内容、日本の学校と大きく環境が異なるインターナショナルスクールで学ぶ子どもたちの不安はさらに大きなものであるに違いありません。  

お子さんが慣れない海外で日本とは違う学校生活を送る中、学校に通っていること自体が何よりも素晴らしいことです。まずそれをしっかり評価し、思いっきり褒めてあげてください。そして人種や性別を問わず一人でも友だちができたら、本当に素晴らしいことです。海外での不安な気持ちが少しずつ軽減され、お子さんはそれまで以上に前向きな気持ちで学校に向かえるはずです。

子どもは日本人の多いインターナショナルスクールに通っていますが、日本人同士で固まってしまいがちです。親としては外国人の友人を作ってほしいのですが……

友だちの素晴らしさ  

友だちがいる素晴らしさは、まず何よりも一緒にいて楽しいこと、気兼ねなく何でも話せて助け合えることです。共通の趣味や体験があれば、さらに絆が深まり、人生がより豊かになるでしょう。海外で暮らしている場合は自分とよく似た環境の子も多く、学校生活での悩みや喜びを共有し合える関係が築けるかもしれません。  

海外から帰国となったとき、帰国先が違っていてもその関係性が長く続いている子はたくさんいます。私が日本人学校で教えた子どもたちも、日本各地だけでなく海外で暮らす友だちとSNS等で繋がっているという話をよく聞きます。短期間の海外生活であったとしても、その絆は深く、これまでの友だち以上の存在が生まれるのかもしれません。

子どもは日本人の多いインターナショナルスクールに通っていますが、日本人同士で固まってしまいがちです。親としては外国人の友人を作ってほしいのですが……

親の思い  

アメリカの現地校など、地域によって日本人が多く在籍している学校があります。そういった学校の日本人保護者から「子どもが日本人同士で固まってしまい、日本語での会話が中心となっている。せっかく英語に触れる機会があるのに残念」といった話をよく耳にします。  

保護者の方からすると、お子さんには日本人以外の友だちも作り、英語等の力や多様性を身に付けてほしいという願いがあるでしょう。きっと今回の相談者にも同じような思いがあるのではないでしょうか。  では、どのようにすればお子さんが日本人だけでなく外国人の友だちを作れるのでしょうか。

 

〇子ども自身の前向きな姿勢や努力  

 

海外で日本の友だちを作ることができるお子さんも、外国人となると難しいのは事実です。日本人なら共通言語である日本語で不自由なく会話ができます。また海外で暮らす共通した悩みを共有し合うことで、ホッとした気持ちになります。  

一方、外国人の場合、英語や現地語がまだ十分に話せないので声をかけづらいという気持ちになるのは当然です。生活習慣や文化の違いを強く感じることもあるでしょう。  

この言葉や生活習慣、文化の壁を乗り越えていくには、子ども自身の力が必要です。まず、最初に自分から相手に声をかける勇気をもつこと、失敗を恐れないことです。そして自分を理解してもらう前に「相手を理解しよう」という気持ちも大切です。   

 

弊財団主催の海外子女文芸作品コンクールの入選作品集『地球に学ぶ』で強く印象に残った作文があります。紙面の都合上、全文は掲載できませんが、一部抜粋して紹介します(作者の滞在先と学年は作品発表時のものを記載)。 

「インターでの1年」  

シンガポール在住 小5  

ぼくは、去年の7月からシンガポールのインターナショナルスクールに転校しました。海外で1年間生活してわかったことは、英語も大事だけれども勇気を出して自分から動くということが1番大切だということです。(中略)  

クラスには英語をうまく話せない人がいると思います。去年のぼくがそうだったので、そういう人にも自分から声をかけるように動きたいと思います。そしてこれからもっと英語を勉強していろいろな話を友だちとできたらきっと楽しいインター生活になると思いました。    

 

作者は学校で参加したマラソン大会をきっかけに外国人のクラスメイト4人と友だちになり、その後、友だちがどんどん増えていったそうです。もちろん、けんかもあったようですが、仲直りを経てさらに仲良くなったことも記されていました。   

 

「ぼくは日本代表」

香港在住 小4

「ハロー……。」  

これが、ぼくがキャンプで最初の日に発した言葉です。これ以上ありません。不安で心細くて何も言えませんでした。  

さんかしている人は日本人ぼく1人、あとは全員香港人だったのです。そして3週間(中略)ぼくはキャンプ初日の夜、静かに泣きました。

(中略) 

ぼくは知っている単語を思いだして一生けん命会話しました。  

ぼくは、街中で見る香港の人は大きな声で話すから、おこってる人が多いのかな?と思っていました。でも、実さいにせっしてみると、とてもやさしく、助けてくれる人ばかりでした。3週間、長かったけれど、みんなのおかげでなんとかキャンプを終えることができました。  

最終日、またぼくは泣いたけれど、それは仲良くなった友達や、お世話をしてくれたスタッフの人たちと別れるのがさみしかったからです。最初に感じた不安な気持ちは、もうありませんでした。 

(中略)  

ぼくは今まで自分が日本人のイメージになると、いしきしたことはありませんでした。ぼくが思っていた香港人のイメージがかわったように、香港人はぼくを見て、日本人のイメージがかわるかもしれません。そう思うと、しせいよく歩いたり、電車で席をゆずったり、小さいことからでも、できることがたくさんあります。海外に住む日本人として、自覚を持って生活したいです。これに気づかせてくれた、キャンプで出会った人たちにとてもかんしゃしています。次にもし会えるとしたらみんなの「日本代表」になれるように、かっこいい自分になっていたいです。

 

現地の子どもたちは、日本からきた子がどんな子なのか興味を持っています。言葉がうまく通じなくても、友だちになりたいという気持ちがあれば、その気持ちは必ず相手に伝わります。  

勇気をもって一歩前に踏み出すことで、相手の印象が変わり、自分自身の大きな変化と成長がもたらされます。  

子どもは日本人の多いインターナショナルスクールに通っていますが、日本人同士で固まってしまいがちです。親としては外国人の友人を作ってほしいのですが……

〇親の協力や支援 

 

お子さんの年齢や性格、学校での滞在期間等、様々な要因があって、一概にこのようにすればよいとは言えません。しかし一つ言えることは、海外では保護者の協力や支援が不可欠だということです。  

日本であれば、登校や下校は子どもだけで可能です。また学校から帰った後、すぐに公園やコンビニ等に行って遊んだり買い物をしたりすることができます。その際に友だちを作る機会は多くあるでしょう。  

しかし海外においては一般的にお子さんが1人で行動することは難しく、保護者の監督下で遊びに行ったり買い物をしたりすることになります。  

こういった海外での制限された生活環境の中、お子さんが安心して過ごすことができる場所は学校です。その学校で、英語や現地語がまだ十分に身に付いていないお子さんが、気兼ねなく話せる日本人の友だちと過ごすようになるのはごく自然な流れだと言えます。  

お子さんが言葉に頼らず積極的に海外の子どもたちにアプローチできるならば、親が口出しする必要はありません。お子さんの力に任せておけばいいでしょう。しかしそれが難しいのならば、親の協力や支援が必要でしょう。  

お子さんのクラスで少しでも仲良くなった外国のお子さんがいたら、家に招待してあげましょう。逆に相手の家に親子で訪問するのもいいでしょう。  

また近所にお子さんと同じ年頃の子どもがいれば、ホームパーティーや誕生日会などにそのご家族を招待するのもいいかもしれません。ぜひ、お子さんが外国の友だちと触れ合うきっかけとなる機会や場所を設けてあげてください。  

親御さん自身が外国の人と積極的に交流し楽しんでいる姿も、お子さんにとってはよい手本になるかと思います。     

終わりに  

海外赴任にお子さんを帯同される親御さんの不安、そして期待はとても大きいものです。だからこそ、現地でお子さんが笑顔いっぱいに元気で過ごしている姿を見ることは親御さんにとって何よりの喜びであるに違いありません。  お子さんの笑顔には友だちの存在が大きく関わっています。お子さんの力を信じて見守ってあげることが大切です。そして、時にはそっと背中を押してあげてください。   

 

<回答者>
海外子女教育振興財団
教育アドバイザー
菅原光章(すがはら みつあき)

1979年から奈良県の公立小学校にて勤務する。1983年より3年間、台湾台北日本人学校へ赴任。帰国後は奈良市立小学校にて勤務、教頭・校長を歴任する。

また奈良県国際理解教育研究会の会長を歴任。退職後、奈良県教育振興会理事ならびに同志社国際学院初等部の教育サポーターを務める。2016年4月より海外子女教育振興財団の教育アドバイザー。