中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。
2025年9月16日
子どもの教育

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

<質問> 
帰国枠での受験を考えています。中学、高校、大学の帰国生入試での留意点をそれぞれ教えてください。 

はじめに

お子さんの海外での学校種別や滞在期間は、一人ひとり異なります。日本人学校、現地校やインターナショナルスクールなど、また海外での滞在期間も2年から5年間ぐらい、もっと長い人もいることでしょう。みなさん、さまざまな貴重な経験を積まれていることと思います。  

 

帰国後どんな学校選択をすれば海外での経験を生かし、楽しい学校生活を送ることができるのでしょうか。お子さんの性格や能力にあった学校を選ぶことが大切です。そのためには帰国生入試について基本的な情報を把握しておくとよいでしょう。  

 

国内の中学、高校、大学に進学予定のお子さんがいる場合、帰国後の学校選択や帰国時期については、とても悩ましい問題です。  今回は帰国枠での受験を考えるうえで、帰国の時期や海外滞在年数、海外からダイレクトに受験する場合の留意点等についてお伝えします。  

 

情報収集

帰国生入試は海外で学んできたことに配慮し、一般入試とは別枠の入試形態で実施されます。その主な特徴は、出願資格、選考方法、入試日程などに表れています。  

 

各学校は受験生が不利にならないようにさまざまな配慮をしていますので、できるだけ多くの情報を収集し、把握することが大切です。加えて、一時帰国をした時などにオープンキャンパスに参加したり、学校訪問をしたりすることで学校の雰囲気や様子がわかり、通いたい学校を絞り込むことができます。  

 

ごくまれに学校によっては、日本人学校の出身者は帰国枠での受験ができない場合がありますので、注意が必要です。

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

帰国後の学校選択

お子さんが義務教育の期間中に帰国するのであれば公立中学校に編入することができますが、私立中学校などを選択したり、また高校の受験や編入、さらに大学受験のタイミングで帰国したりする場合は考慮しなければならないことがあります。  

 

帰国生が入学・編入学に選択した学校は、全国的に見ますと、小学生では約95%、中学生では約68%、高校生では約29%が公立学校です。しかし、「高校入試がなく6年間の一貫した教育課程や学習環境のもとで学べる」「帰国生のために特別な受け入れ体制を持っている」「国際バカロレア(IB)のカリキュラムを導入している」などの理由で、中学に入学するタイミングで中高一貫校を受験するケースが近年増加しています。

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

中学校の帰国生入試

私立中学校の一般入試は、1月中旬から2月上旬に入試が行われる場合が多いですが、帰国生入試は、海外での入試を含めると、早い学校では10月から始まり2月中旬まで続きます。ごくわずかですが、3月に実施する学校もあり、帰国生入試は一般入試に比べて長期にわたるため、日程調節が大切です。 

 

帰国生入試の受験資格の多くは、海外での滞在期間が1~3年以上、帰国後の期間が2~3年以内となっています。また選考方法は一般入試と同様の「国語・算数・社会・理科」のほかに、「国語・算数」「算数・英語」や「国語・算数・英語」、あるいは「英語」か「算数」の一科目のみ、 面接や作文のみ、教科を超えた総合的な思考力や表現力などを見るための「適性検査」と多種多様です。 

 

各学校の入試制度については各ホームページなどで早めに情報収集し、事前に確認しておきましょう。 

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

高等学校への進学

高等学校は義務教育ではないため、入学・編入学するには、国公立を含めて選抜試験に合格しなければなりません。また高等学校の受験では、日本の義務教育修了(中学校卒業資格)、もしくは海外で学校教育の9年の課程を修了しているか、入学する年の3月末までに修了見込みであることが出願資格として求められます。  

 

海外の日本人学校中学部を卒業し、その卒業資格を持って受験すれば問題ないのですが、現地校やインターナショナルスクールでは学年の修了時期が日本と異なります。たとえば翌年の6月に9年生(中学3年)を修了する場合、日本の高等学校への出願資格がありません。  

 

このような場合は遅くとも前年の12月頃には帰国し、日本の中学3年生に編入することによって、その学校の「卒業見込み」で受験することができます。9年生を6月に修了したあとに帰国する場合は、高校1年生の9月編入学試験を目指すことになります。  

なお、一部の私立学校では、現地の9年生の課程を6月修了見込という形で、4月生として受験を認めている学校もありますので、まずは学校に直接問い合わせてください。 

 

高等学校の帰国生入試

私立の高等学校の一般入試は1月中旬から2月中旬、国公立の一般入試は1月下旬から3月中旬ですが、帰国生入試の多くは11月から3月中旬に行われます。帰国生入試に出願するための海外での滞在年数、帰国後の年数の条件は中学校の場合とほぼ同じです。 

 

帰国生入試の選考方法は、学科試験を行う学校の多くは「国語・数学・英語」の3教科と面接、学科試験を行わない学校では、海外の在籍校での成績や活動歴を評価する書類審査や日本語または外国語での面接、作文となっている場合が多いです。

希望する学校の募集要項を必ず確認してください。    

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

中学・高校の編入学

公立中学校への編入学は基本的にいつでも可能ですが、そのほかの学校では受け入れ体制が学校にごとに異なります。編入生の受け入れについては、欠員が生じたときに募集する学校が多いのですが、学期ごとに募集したり、随時の相談により受け入れたりする学校もあります。ただし、中学・高校においては、それぞれ3年生の2学期以降は募集する学校は少なくなります。 

 

編入学試験の選考方法は、編入学後の授業についていける学力があるかどうかを見るために、「国語・数学・英語」と面接を行う学校が多い一方で、帰国生に対しては「英語」のみや「英語」の作文と面接、書類審査と面接を実施する学校もあります。  

 

 

大学の帰国生入試

帰国生の大学受験資格は、「外国において学校教育における12年の課程を修了する」「国際バカロレア、アビトゥア、バカロレアまたはGCE・Aレベルを保有する」という条件を満たしていれば、18歳に達していなくても大学の入学資格が認められます。また、初等中等教育の課程が11年のミャンマーやロシアを含む6カ国の課程については、個別の指定を受けているため、当該国の高等学校を卒業すれば、文部科学大臣が指定した準備教育課程を修了しなくても大学入学資格が認められるようになりました。

 

なお、海外の高等学校の12年の教育課程を修了せずに途中で帰国した場合は、国内の高等学校(通信制や単位制を含む)に編入して卒業するか、毎年2回実施される高等学校卒業程度認定試験に合格する必要があります。

 

帰国生入試の出願資格(海外での学校種別、海外の学校での在籍期間、帰国前後の日本の高校の在籍期間、高校卒業後の経過年数、単身残留の可否など)は、各大学・学部・学科がそれぞれの方針により定めており、あらかじめ資格審査を受けることを条件にしている場合があります。  選考は書類審査や学科試験、面接によって行われるのが一般的ですが、書類審査の取り扱い、学科試験の科目、面接での質問事項は大学・学部・学科によってさまざまです。

 

4月入学の帰国生入試の時期は、早い大学で8月から始まり、3月まで続きます。秋季入学制度のある大学も増えてきましたが、一部の大学を除いて秋季入学は卒業時期が半年ずれるため、4月入学の帰国生入試を目指す生徒が多いです。 

 

大学によっては、AO入試や自己推薦入試で帰国生を募集する大学も多いです。いずれの入試で受験するにしても、海外滞在中から希望する学部・学科の募集要項をよく調べ、一時帰国のときにはオープンキャンパスに参加するなど計画的に受験の準備を整えておきましょう。     

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。

終わりに

帰国のタイミングで気をつけなければならないのは、「高等学校への進学」の項で述べたように、出願資格を満たさないおそれがある場合です。また中学校や高等学校では、4月入学より編入学の方が学校選択の幅が狭まり、選択肢が限られる場合があります。一方、大学の帰国生入試では、現地校の12年の課程修了の資格を取得して帰国した方が、学校選択の幅が広がります。

 

海外からダイレクトに受験する場合の留意点としては、複数の学校を受験する際、第一志望の学校を中心にどの併願校を受験できるか、綿密な受験計画を立てることが大切です。例えば、11月中旬に帰国し各校を受験、12月に赴任地に戻るといったスケジュールも考えられます。学校によっては海外で入試を実施している場合もあります。時差による体調不良や在籍中の学校を長期にわたって休むことを避けられるような計画を立てることも必要です。

 

合格後の手続きや日程について、制服採寸や端末配付など登校日を設けている学校が多くあり、募集要項に書かれていることがありますので、事前に確認しておいた方が良いでしょう。編入試験の日程は学校によってさまざまです。6月や8月に実施や随時という学校もあります。受験機会を逃さないよう留意してください。 

 

最近は、事前に帰国生の資格認定を行っている学校が増えており、海外では情報が集約しにくい場合があります。また、学校によっては受験日程を年度毎に変更する場合もあります。最新の受験に関するカレンダーを作成するなどして、お子さんに適した学校を選択してください。 

中学・高校・大学の帰国生入試について、それぞれの留意点を教えてください。
<回答者>    
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー    橋本芳登(はしもと よしと)
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー  
橋本芳登(はしもと よしと)
大阪府公立小・中学校で教諭、教頭、校長として勤務。大阪府大東市教育委員会指導主事として3年間勤めた。中国の広州日本人学校に1995年の学校創立時に教諭として、2016年に南アフリカのヨハネスブルグ日本人学校校長として赴任した。2019年より海外子女教育振興財団の教育アドバイザーを務めている。