海外子女教育振興財団会長賞

最初のパス

バルセロナ補習授業校(スペイン)
中1 橘田 頼安
 


一年半前、南国からこの街へ流れ着いた

 

初めての公園
知らない顔、知らない声、知らない風
けれどボールだけは、どこまでも同じだった

 

光の線みたいなパスに目を奪われていると、
突然、声が飛んできた
「早く来て!」

 

意味なんて考える暇もない
初めて聞くカタラン語を、
胸より先に、足が理解していた

 

夢中だった
夕焼けを踏みしめながら、
風より先にボールを追っていた

 

知らない誰かと笑い合い、
なんて温かいのだろう、この街の人たちは

 

太陽みたいだ、みんな
肩を叩く手も、笑い声も、
オレンジ色に染まっていた

 

僕は好きになってしまった
この街を

 

潮の匂いの残る夜も、
バルコニーを染めるピンクの朝焼けも

 

もうスペイン語も話せる
まるでメッシのドリブルみたいに、
言葉をするりとかわしながら、
人と人のあいだをすり抜けて、パスを出した

 

今日も澄んだ青い空

 

遠くへ来たはずなのに、
たどり着いた気がしている