日本放送協会賞

ドイツの日曜日

デュッセルドルフ補習授業校(ドイツ)
小5 椙田 侑和

      

  日曜日におかし作りをしようとしたらさとうが足りず、スーパーに買いに行こうと思いましたが、休みだと気づいてあきらめました。


 私はドイツで生まれ育ちました。だから、日曜日にお店がしまっていることは、ずっと当たり前のことでした。でも、ふと「なんで日曜日はお店がしまっているんだろう。」と思いました。その理由を今まで一度も考えたことがありませんでした。


 ドイツでは日曜日になるとスーパーや衣料品店、ドラッグストアなどほとんど店がしまります。でも全部というわけではなく、パン屋やカフェ、レストランは開いているところもあります。ドイツには朝食をしっかり食べる文化があって、パン屋は日曜日も特別に開けても良いことになっています。他にもガソリンスタンドや中央駅、空港のスーパーも開いています。旅行中の人や急いでいる人のために特別に許可されているからです。そのほか年に数回だけverkaufsoffener sonntagという日があって、この日は特別にふだんしまっている店も開けることができます。クリスマスや地域のお祭りなどに合わせて決められることが多く、日曜日なのに街がにぎやかになって、この日はなんだか少しうれしい気持ちになります。


 おかし作りをあきらめた次の日、学校で友達に聞いてみました。
「なんでドイツは日曜日にお店がしまっているの。」
すると友だちは少し考えてから、
「神様が七日間で世界を創ったとき、七日目に休んだから人間も休む日なんだよ。」
と教えてくれました。キリスト教の聖書には、神は六日間で世界を創り七日目に休んだと書かれていて、この七日目が安息日とよばれています。この考え方はヨーロッパ全体に何百年もかけて広まり、ドイツでは閉店法という法律になっています。だから日曜日や祝日は許可がなければお店を開けてはいけないのです。それに、お店がずっと開いていたら、日曜日にも働く人が必要になります。ドイツではみんなが同じ日に休めることがとても大切にされていて、お店をしめることは働く人を守ることにもつながっているのです。友達の話を聞いて、ずっと当たり前だと思っていたことに、こんな深い理由があったのだと初めて知りました。


 ドイツでは日曜日にお店がしまっているからといって、みんなが家でつまらなそうにしているわけではありません。家族で映画を見たりゲームをしたり、本を読んだり昼ねをしたり、何もしなくていい日としてゆっくりと過ごします。そして森や公園を散歩する文化もあるので、天気のいい日は家族や犬と一緒に公園に行ったり、カフェやレストランで家族や友達とゆっくり食事やおしゃべりを楽しむ人がたくさんいて、街は静かでもみんな楽しそうです。日本のように「にぎやかで楽しい」とはちがう「ゆっくりした幸せ」という感じがドイツの日曜日です。


 日本の日曜日は全くちがいます。コンビニは二十四時間三百六十五日開いていて、元旦でも多くの店が営業しています。スーパーも日曜日はふだんよりこんでいるくらいです。いつでも何でも買える便利さは、世界でも特別なレベルだと思います。でも、どうして日本は日曜日もお店が開いているのか。それは安息日という考え方が日本にはなかったからです。江戸時代まで休みといえば盆と正月や地域のお祭りくらいで、日曜日は休むという習慣がそもそもありませんでした。明治時代に西洋と交流が始まってから、初めて日曜日は休みという考えが役所などに取り入れられました。でも商店には広まらず、開けていた方がもうかるという考え方が根付いていったようです。最近は元旦などに休むお店もふえてきたようで長い間当たり前だったことが少しずつ変わり始めているのかもしれません。


 さとうが買えなくて、おかし作りをあきらめた日、本当に不便だと思いました。でも、その日は家族と一緒に別のことをして過ごしました。たいしたことではないけど、なんだか楽しかったです。予定通りにいかないことがちがった楽しい時間を生むこともあるのだと気づきました。そう思うと日曜日にお店がしまっていることは、ただの不便ではないような気がしてきました。


 日曜日というたった一日の中に宗教、歴史、法律、家族の文化その国の考え方がぎゅっとつまっているのです。ドイツと日本、どちらが正しいということはないけれど、理由を知るとどちらもなるほどと思えておもしろいです。さとうが買えなかった日曜日がなければ、私はきっとこんなことを考えなかったと思います。当たり前の中にこそ、その国のことがかくれています。これからも、身近な「なんで。」を大切にしていきたいと思います。