日本の歴史・文化、そして現代を学ぶ 

本プログラムでは、日本を一つの側面だけから捉えるのではなく、歴史的な日本と現代の日本の双方を比較しながら理解することも大きなテーマとしました。 高野山のほか、京都や大阪にも足を延ばし、歴史的な神社仏閣や日本の宗教・文化に触れました。 
京都では、奨学生たちに日本の歴史的な側面と現代的な側面の両方を体験してもらいたいと考えました。地域の歴史ある神社仏閣を訪れた一方で、最先端のデジタルアートを体験できる「team Lab」にも行きました。


また、京都国際マンガミュージアムでは、奨学生たちが知っているアニメやマンガのキャラクターにも出会いました。「このキャラクター、知ってる!」と突然盛り上がる2人を見るのは、とても楽しいものでした。
大阪では、歴史を象徴する大阪城を訪ねた後、通天閣へ行き、串カツを楽しみながら、現代の大阪の活気あふれる一面を体験しました。

このように、伝統文化と現代文化に接する機会を意図的に組み合わせることで、奨学生たちは「歴史の中の日本」と「現在進行形の日本」を往還しながら考察しました。見る、体験する、問いを立てる、そして思索する――こうした探究の循環を通じ、日本社会への理解を多層的に深めることを目指しました。

 

奨学生のSofia ObradovicとChloe White

プログラム全体を通じ、2人を引率する立場として、非常に大きな責任を感じていました。安全を確保することはもちろん、この機会を真に意義ある学びへと結実させる責務があったからです。その期待に応えるように、2人は新たな環境へ柔軟に適応し、主体的に学びを深めていきました。
Sofia Obradovicは、医学の道を志す、非常に聡明な生徒です。高野山高校へ向かう初日には、和歌山県紀の川市にある華岡青洲記念館を訪れました。

左がSofia。華岡青洲記念館にて

華岡青洲は、江戸時代の医師で、経口麻酔薬を開発し、1804年には全身麻酔下による手術を成功させた人物です。これは、西洋で近代的な麻酔が広く確立される何十年も前のことです。Sofiaが彼の業績について心から興味を持ち、熱心に学ぼうとしているのが伝わってきました。プログラム期間中も、彼女はエッセイの執筆や報告会の準備など、こなすべき課題について真剣に考えていました。物事を深く考え、分析する力を持った生徒です。
もちろん、高校生らしい一面もありました。毎朝、コメダコーヒーでは、必ずクリームソーダを注文していました。もしかすると、プログラムの中で一番変わらなかった日課は、それだったかもしれません(笑)。

Chloe Whiteは、Sofiaとはまた違ったタイプの聡明さを持った生徒です。いつもSofia のことを気遣い、私たちを笑わせようとしてくれるなど、まわりに明るく楽しい雰囲気を作ってくれる存在でした。

右がChloe。いつも明るいムードメーカー。

しかし、北神圭朗衆議院議員と面会した際、私はChloeの別の一面を目にしました。彼女は国会議員の役割について、さらには国家予算についてさえも、思慮深い質問を投げかけていました。普段の明るく楽しい姿とは全く違う、彼女の知性と真剣さを見ることができました。
 

振り返れば、本プログラムがもたらした成果は、当初の想定を大きく上回るものでした。教育的・文化的体験として設計した枠組みを越え、2人は日本を単に訪問したのではなく、そこで生活し、経験を自らの問いへと変換し、人との関係を築いたのです。

 

体験を「学術的な考察」へ 

本プログラムの主要な特色は、日本で得た経験を単なる旅行記として記録するのではなく、エッセイへと昇華させる学術的なプロセスを組み込んだ点にあります。

6月15日にアメリカに帰国した後、奨学生たちは日本での経験をもとにエッセイを執筆しました。 
研修前に指導を行ったUCLAのDr. Jordan Smithは帰国後も継続して指導にあたり、初稿、第2稿、第3稿と複数回にわたってエッセイを読み、添削・指導を行いました。 
この過程では、「何を見たか、何を経験したか」という事実を記述するだけではなく、以下の観点から経験を分析し、意味づけることが求められました。
・    その経験にはどのような意味があったのか 
・    自分自身の教育・文化的背景とどのように比較できるのか 
・    日本での経験によって、自分の考えがどのように変化したのか 

そして、その集大成として、2026年8月15日、ロサンゼルスのJapan Foundationおいて最終報告会を開催しました。奨学生としてプログラムに参加した2名のアメリカ人高校生は、プログラムを通して経験したこと、学んだこと、そしてそこから得た考察を自ら発表しました。当日は約25名が参加し、Japan Foundation関係者、指導を行った大学教授、インターン、報道関係者などがその発表に耳を傾けました。 
奨学生たちは、それぞれ異なる視点から日本での学びについて発表しました。1名は、高野山高校での寮生活や授業を中心とした学校生活について、もう1名は、日本での生活体験と京都での経験を中心に発表しました。

 

単なる海外研修ではなく、学びを生み出すプログラムへ

「Japan Koyasan Educational & Cultural Journey 2026」は、意義ある国際教育には、外国を訪れるだけでなく、その社会の中に入り、実際に生活し、学び、思考する経験が不可欠であるという理念に基づいて実施されました。
日本の現代社会を体験し、学校を訪問し、高校生と生活を共にし、授業へ参加し、伝統文化を学ぶ。さらにアメリカに帰国した後は、得られた経験を異文化比較の視点から分析し、学術的考察を論考としてまとめ、専門家の指導を受けたうえで、自らの言葉で発表する。こうした一連の探究過程を通じ、奨学生たちは日本を一時的な旅行先ではなく、主体的に学び、参加し、考察する対象として捉え直しました。
この2人がこの経験から実際に何を感じ、何を学んだのか―― 以下に掲載する彼女たちのエッセイから、皆様にも感じ取っていただければ幸いです。