帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。
2025年2月17日
子どもの教育

帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。

 <質問> 
帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。 

はじめに

今回の相談についてですが、「帰国」は「日本への渡航」という見方でも考えられます。そもそも、海外に出たお子さんは、出てしまったわけで、帰るとか帰らないとかそういうベクトルだけで考えて良いものなのでしょうか。

 

また、「何をすべきでしょうか」とありますが、まずは「自分がどうしたいのか」ということが大切ではないかと思うのです。

 

そして、「帰国が決まりました。何をすべきでしょうか」と相談しているのは子どもなのか、それとも親なのか、家族なのか、主体が誰なのかということです。すべては「自分がどうしたいかということで決まる」のではないでしょうか。自分がそれぞれの事象をどう捉え、どうしたいのか、それが2040年2050年を生きていく人たちにとって、当たり前の考え方になったら良いのではないかと思います。

帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。

子どもにとっての海外生活の「意味」を考える

これまで多くの帰国生に出会ってきましたが、彼らが話していた「帰国前にしておくと良いこと」のおもなものは、「海外での体験で得たことをまとめる」「現地の友人を大切にし、その別れを意義あるものにしておく」「成績証明書は必要なだけ準備しておく」ことでした。

 

ただ、2040年の世界で生きていく子どもたちには、海外で暮らした数年の経験が自分にとってどんなもので、今後どんな意味を持たせるものなのかということをまず考えてほしいと思います。

 

帰国が決まったときというのは、そのようなことを考えるのに、良いタイミングではないかと思います。日本と違う国での生活や学習について、自分の成長をどう自覚し、それを次のステージでどう効果的に周囲の人たちに伝えたいのか、そこを考えてほしいのです。海外滞在中に何を学び、何を得たのか。他の国の子どもたちと話したことや、肌で感じ取った異文化はどんなものだったのか? 逆に海外に住んで、日本に思いを馳せた中身はどんなことがあったのか? それを今後どう役立てさせたいと思うのか?

 

日本ではないところでいろいろ経験できたことを幸せに感じ、そのことに感謝して、次の地で、得た力を自然に発揮する。帰国生には、そういう意志を持って生きていく人になってほしいと思います。そのことを、帰国前によく考えてみると良いでしょう。

 

例えば、日本で給食が自分の飢えを満たすただ1つの方法である子どもがいっぱいいます。自分が戻る日本の、自分と同じような年齢の子どもたちの中にいるのです。彼らのために、異文化を体験してきた自分ができることはないのか、そのようなことを考えてもいいでしょう。身の回りから課題を見つけ、それを考えることから、海外で生活してきたことの「意味」が見えてくるかもしれません。  

帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。

子ども自身で、帰国後の進路を決める

海外で生活してきたことの「意味」を考えるなかで、結局は「グローバル人材とは何か」というところに行きつくかと思います。お互いの立場や価値観の違いを感じて、認め合った上でともに働く、ともに汗をかきながらみんなで未来を描いて作っていく。それは簡単なことではないでしょう。でも、それができなければ、明るい未来はこないのかもしれません。

 

つまり、今後の世界を自分でどう描き、何をして、どう生きていきたいのかを想像するが、日本での学校選び、日本での生活や学習の仕方、今後の海外とのつながりを決めていくことになると思います。

 

これは、よくよく考えれば、入学・編入学先の学校の面接で学校側が一番聞きたいことになっているのではないでしょうか。帰国にあたって、自分の得たことや現状を活かしてくれる学校を、その子自身が選ぶことが大切です。入れる学校ではなく、自分の志に合う学校を自ら探す。このことが小学校高学年以上の子どもには必須だと思います。

 

親の役割

親は、子どもの努力、伸びを認め、次のステージに向かわせることが大切です。そのためにも、親自身が「自身にとっての海外滞在がなんだったのか」を振り返ってみてほしいと思います。

 

家族がそれぞれのことでともに悩み、ともに解決の道を探ることが、海外では日本にいるときよりも多くあることでしょう。親自身が「家族」を振り返ることで、子どもにとっての海外生活の意味に気づかされ、自然に我が子の背中を押すことができるようになるのではないかと思います。

帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。

  最後に

いまの子どもたちにとって、未来は自分たちの力で解決しなければならないものだと思います。それは、「これまでの大人たちがやったことだから、自分たちには責任はない」「もう、どうしようもないことだ」「自分たちは被害者だ」などとは言っても仕方のないことです。そのまま放置しておけば、結局は自分の首を絞めることになるのですから、自分たちの力で道を切り開いていくしかないのです。

 

ひとり一人の力は小さいものでしかありません。でも、そこに世界中の人たちが理解し合い、力を合わせ、困難を乗り越えていく。そうすることで、未来が来る時代だと思うのです。

 

子ども時代に海外で生活した経験は、大変貴重です。その経験を、自分やまわり、世界のために、どう生かしていきたいかを考える人にこそ、豊かな未来や人生はあるように思います。

 

私の最近の好きな言葉に、「ノブレス・オブリージュ」というものがあります。高い社会的地位には義務が伴うことを意味するフランス語です。子どもたちには、素晴らしい志でリードする大人になってほしいと心から願っています。

帰国が決まりました。何をすべきでしょうか。
  <回答者> 
海外子女教育振興財団 教育相談員
海外子女教育振興財団
教育相談員
奥田修也(おくだ しゅうや) 
ドイツのデュッセルドルフ日本人学校教諭、ベルギーのブラッセル日本人学校校長、中国の北京日本人学校校長として海外で多くの子どもたちや保護者に接した。2018年から海外子女教育振興財団の教育アドバイザーとして、渡航前・赴任中・帰国後のご家族の教育についてのさまざまな相談を受けている。