台湾で日本語教師をしている、高橋哲生さん。立命館アジア太平洋大学を卒業後、台湾へ渡り、日本語教師になって12年目となる。中学高校と得意科目だった英語、大学時代にネイティブレベルまで高めた韓国語、ほぼ独学で学んだ中国語など語学のことや、大学卒業後に台湾に渡ったときのこと、「悩んだことはない」というライフスタイルなどについて、話を聞いた。
(取材・執筆:Makiko)
一目惚れから韓国通へ
—現在は台湾にお住まいですが、大学時代は韓国に入れ込んでいたそうですね。
もとは、中高時代に英語が得意科目だったので、もっと英語を勉強しようと大学に入りました。高校3年時に修学旅行でニュージーランドに行った際に、机上で勉強してきたことと実際に会話で使える力が違うものだと衝撃を受けたことが大きかったですね。
大学に入学直後の春、韓国からの留学生に一目惚れし(笑)、その影響で韓国語を学び始めました。韓国の田舎でアンケート調査をするフィールドスタディーに応募し、初めて韓国に行ったのを皮切りに、2年生の夏に短期留学、3年生で交換留学と、韓国にどっぷりハマった大学生活を送りました。交換留学中は生活ではもちろん、勉強でのプレゼンまで韓国語で過ごしていました。韓国語を猛勉強するにつれ、当初学ぶつもりだった英語は忘れていきましたね(笑)。
韓国人の、言いたいことをはっきり言うところが好きだなと思ったんです。また、僕はお酒が好きなので、お酒もご飯も美味しい韓国は最高でした。
ただ、交換留学が終わる頃には一旦、韓国に対する気持ちが落ち着いて来ていました。その頃に旅行で行ったのが台湾。人が優しくてご飯が美味しいなというのが始まりでした。情熱の矛先が韓国から台湾に向き、大学4年次は中国語の基礎を習得するのに充てました。
—大学を卒業して、そのまま台湾に渡られたのですね。日本での就職や、せっかく学んだ韓国語を活かすことは考えませんでしたか?
周りが就活の頃、僕は韓国にハマった時と同じ勢いで台湾に入れ込んでいたんです。このまま就職してもきっとすぐに辞めて台湾に行ってしまうだろう、飽きるまで台湾のことを知ってから就職しようと、まずは台湾に渡りました。以前旅行した時のゲストハウスのオーナーに頼んで、住み込みで働きました。そこで1年間働いて考えましたが、まだ日本に帰りたいとは思いませんでした。そこで台湾に残る道として、日本語塾の教師として働くことにしました。
—そのまま台湾で12年間日本語教師をされているのですね。
目指してこうなったわけではありませんが、日本語教師の仕事は天職ですね。趣味のようなものです(笑)。今では日本語を学びたい人をパッと見ただけでその人の目的がわかるようになりました。趣味や仕事、留学したいなど様々な目的で学びに来るのですが、その目的に合わせて教えていきます。生徒が日本で就職したり、日本人と恋愛したりと、勉強したことを結果に繋げていくのを見ると、嬉しいですよ。
「悩みがない」のではなく「悩まない」ように
—「海外生活にまつわる悩み」をお聞きしたところ、「悩みはない」とのことでしたが、そのようにいられる秘訣はありますか?
「悩みがない」というよりは、「悩まない」ように心がけています。動くときは直感です。そのせいか、ストレスも特に感じたことがありません。適応力が高いのかもしれませんね。ローカリゼーションが得意なんです。ただ、こうして現地に溶け込むのには前提条件として、語学が必要です。そのための勉強は、必要ですよね。
—語学を学ぶときは、どのようなことに気を付けられていますか?
日常会話で必要な文法は限られています。まずは「欲しい」「してください」の構文を覚えること。それだけ頭に入れたら、あとは会話です。自分で学ぶときも、日本語を教える時にもとにかく会話をするように心がけています。
—10年後のイメージはありますか?
仕事では役職に就いて、私生活では結婚して、もっと高い山に登り、もっと深い海に潜り……。そんな、今の生活をバージョンアップさせたようなイメージです。特に違う場所に行きたいとか、新しいことをしたいということはないです。
今年、8年ぶりに日本に帰ったんです。コロナもありましたし、近いからいつでも帰れると思っているうちに8年も経っていました。やっぱり日本は素晴らしい国だなと感じつつ、台湾に戻ってきたら「落ち着くなあ」と感じましたね(笑)。
—海外と日本の生活のギャップなど、文化の狭間で悩む子どももいますが、そういう方にアドバイスをお願いします。
中学生や高校生だとクラスメイトに嫌われるというのは怖いことだから、どこにいようと、何をするにもがんじがらめかもしれません。でも、クラスメイトに嫌われることを恐れずに好き勝手やることも大事ですし、大学に入ったり大人になったりしたら、あとはもう悩まずにやりたいことをやってみることです。人生では何をしても失敗と思うことはなく、何をしたって成功なのですから。