今選ぶのは、モルディブと日本の二拠点生活
2025年1月20日
イマドキの海外生活

今選ぶのは、モルディブと日本の二拠点生活

モルディブと日本で半年ごとに生活する、梅原ひとみさん。大学を休学してリゾートインターンシップに参加したことをきっかけに、卒業後にモルディブのリゾートホテルに就職。仕事に邁進する中、モルディブ人の彼から求婚され、結婚。その後、コロナの流行、出産を経て現在の生活に至る。モルディブについて、イスラム教の義家族との生活、現在の様子とこれからのことについて、話を聞いた。

(取材・執筆 Makiko)  

 インターンで出会った、モルディブリゾート  

—大学在学中にモルディブでインターンをしたのが現在の生活につながるきっかけだったそうですが、どのような経緯だったのでしょうか? 

 

小学生の時にバスケの国外交流でマレーシアに行き、高校時代には2度ホームステイのプログラムで海外に行かせてもらいました。それ以外は普通に日本で育っていましたが、不思議と「いつか海外に住むんだ!」というふうに昔から思っていました。大学に入り、漠然と「留学かな」と思いましたが、そもそも留学をして「勉強」がしたいのかな? と考え始めました。その頃、インターンシップを経験できる機会があり、そこでその面白さに衝撃を受けました。私は「留学」ではなく、「仕事経験」をしたいんだと気がつき、海外インターンを調べ始めました。 

 

最初に面接を受けてお話をいただいたのがモルディブのリゾートだったので、そこで大学を休学してインターンを1年間することになりました。  

 

—インターンはどんな経験でしたか? 

 

ゲストリレーションオフィサーという、いわゆるコンシェルジュのようなことをしました。モルディブには島がいくつもあり、一つの島にリゾートホテルが一つずつ建っています。限られたお客様と近い距離で対応できますし、お客様はホリデーで来ているので、こちらもリラックスしてお話ができます。前にシティホテルでアルバイトをした時は忙しなくて「ホテルは不向きかもしれない」と思っていましたが、リゾートホテルでの仕事はそれとは全く違う体験でした。 

私は「気にしい」なんです。色々と周りが気になってしまう自分のそんな性質が、リゾートホテルでは役立つ場面が多いことを知ったんです。お客様も同僚もヨーロッパからアジアの様々な国から来ているという多国籍な環境も、自分には案外合っているようだと気がつきました。

接客業に向いていることに気がついたという、インターンシップ時代
接客業に向いていることに気がついたという、インターンシップ時代  

 

イスラム教徒の義家族と同居生活  

—その後、就職、そしてご結婚されるのですね。 

 

復学し、日本での就職も考えましたが、モルディブでの体験をもっと続けたいという思いの方が強かったです。本契約してもらえるよう連絡をして、採用されました。 

夫とはインターン時代に出会い、本契約でモルディブに戻ってからお付き合いをするようになりました。そのうちにプロポーズを受けましたが、私は小さい頃から結婚願望が全くなかったんです。結婚している自分を想像したこともなかったくらい(笑)。ただ、モルディブはイスラム教の国なので、結婚前の男女が付き合うのには何かと制限があるんです。それもあってか、彼はただ付き合うという形ではなく、結婚という形を望んでいました。私も、この人となら老後まで一緒にいたいなと思い、本契約が終わる頃に結婚に至りました。  

モルディブから当時一番近い日本大使館があった、スリランカにて挙式
モルディブから当時一番近い日本大使館があった、スリランカにて挙式  

—モルディブのローカル島で義理のご家族と2カ月間同居生活されたのですよね。 

 

これは本当に大きな経験になりましたね。リゾート島でなくローカル島の生活を実際にしてみて、初めて「つらい」と感じた期間でした。家族はとても優しくて、私の気持ちをいつも優先してくれるのですが、モルディブ語(ディベヒ語)がほとんどわからない私は何も理解ができないし、慣習もわからない。

 

例えば、イスラム教の家庭では夕方にシャワーを浴びるという習慣があり、それは家事がひと段落したタイミングで身を綺麗に整える意味があるのですが、初めはその理由もしきたりも全くわからずに戸惑ってばかりでした。 この生活では意思疎通がひとつもできない自分に嫌気がさしてしまいました。さらに、そんな状況を相談できるような友達もいないという状況が苦しかったです。

 

結局その後は近くのリゾート島で夫婦で働き始めたので、同居生活は2カ月だけでした。しかし、その2カ月があったからこそモルディブ語も学べたし、義理の家族との関係も築けたので、振り返るととても貴重な時間でした。

左:モルディブ式バーベキューでは、炭はココナッツの殻で、魚には激辛ペーストを塗るそう 右:義実家では親戚とよく遊んでいるという娘さん
左:モルディブ式バーベキューでは、炭はココナッツの殻で、魚には激辛ペーストを塗るそう
右:義実家では親戚とよく遊んでいるという娘さん  

家族が心地良いと思える生活を  

—その後コロナが到来しますよね。リゾート島はどのような状況でしたか? 

 

モルディブもロックダウンになり、リゾートは休業に入りました。食料のほとんどを輸入に頼っているため、限られた食材で長い間暮らさなければならなかったのが、かなりストレスになりました。ロックダウン解除は早かったので、お客さんの戻りは他の国より早かったかもしれません。 

 

 

—その後、日本で出産されますね。 

 

「子どもがほしい」と思ってはいましたが、なかなか授からず、検査をしたいと思っていました。モルディブでは日本のような検査が受けられないので、コロナの規制が緩んだタイミングで、夫婦で日本に帰国しました。無事に検査を受け、授かることができ、日本で出産しました。この帰国の際に、夫の仕事はほぼリモートで回せるように整えました。私はコロナで休業になってからリゾートでの仕事はしていないのですが、モルディブに関するブログを書いたり、情報発信したりしています。  

 

 

—日本半分、モルディブ半分で、仕事はリモートという、側からみると夢のような生活ですよね。実際にこの暮らしをされて、発見はありますか?  

 

夫がすごく日本の生活が好きで、今はこのような形になっています。娘がまだ2歳なのでできますが、学齢期になったらまた考えないといけないですね。娘は、今は日本語の方が伸びてきてはいますが、日本語とモルディブ語で育てています。モルディブの公教育は英語なので、英語はそのうち外で身につけるだろうと思い、家庭ではそのようにしています。娘は自我が強いタイプなので、学校選びなどは娘に寄り添って考えていきたいです。

 

日本で生活するときには、流行りからそれた格好をしないようにしないと……などと気になりますね。些細なことですが、「気にしい」なので(笑)。日本は、綺麗な格好をして、仕事もして、育児のほとんどを担って、って頑張るママが多いですよね。 

 

モルディブのリゾート島は人工的に作られた空間だから、そこで全面的に子育てをしたくないと夫は思っているようです。食事も限られてしまうのが、日本と比べると残念なところです。

 

半分ずつ生活しているからこそ、良い面も悪い面も見えることがあります。

 

将来的には、家族皆がなるべく心地がいいと思える生活を選択していきたいですね。  

義実家のあるローカル島
義実家のあるローカル島  

 

—海外と日本との間で馴染めなかったり、文化や言語の違いで悩んだりしている人にメッセージをお願いします。 

 

私はステレオタイプの日本人。積極的に手を上げたくないタイプです。海外では「郷に入れば郷に従え」でやってきています。イスラム教についても全く知らない慣習ばかりですが、私としてはモルディブで働かせてもらい、たくさんのことをいただいてきたという気持ち。そういう中で自分の考えは持ちつつも、それを貫くことにはこだわらずに、現地のルールを学んできました。「海外のしきたりに自分を合わせていく」というのが、私にとってはやりやすいやり方でした。他には、これまで出会った、海外で頑張ろうとする友人たちも、自分のパワーの源になっています。自分なりの、心地良いやり方を探っていけばいいのだと思います。 

左:日本の福岡で好きなビーチへ  右:モルディブのリゾート島のビーチ
左:日本の福岡で好きなビーチへ   
右:モルディブのリゾート島のビーチ