海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。
2024年10月21日
子どもの教育

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

<質問> 
海外で、子どもは不登校になっています。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。
海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

周りの大人が気づかないうちに、子供はストレスをため込んでしまうものです。 

お子さんは、突然の生活環境や学校文化・学習習慣等の急激な変化による戸惑いから、学校や集団生活に対する不安が強くなり、学校に行きたくても行けなくて悩んでいます。 

そして、保護者の方は、いろいろ手を尽くしているのに状況は好転せず、心配や焦りが増すばかりの状態かと思います。 帰国は選択肢の一つですが、子供が納得していない状態で帰国しても子供の自立は容易でないばかりか、親子関係にも影響を及ぼすかもしれません。 

学校復帰に向け、お子さんの状況や時機を見てアプローチを進めましょう。

 

子供の元気を取り戻す 

1.学校や担任の先生と連携する 

 

■担任の先生と繋がり、関係作りを図る

オンライン等で学校や担任の先生と繋がり、関係作りを図りましょう。話題や時間は子供の様子等によって臨機応変に対応を。

 

■心配事から関心事まで伝える

子供の困り事、心配事に加え、興味がある事、得意な事も担任に伝えておくとよいでしょう。 

 

■学習状況を確認する 

担任の先生から、学習予定と進度の連絡や配布物等を受け取りましょう。 

 

■係活動の割り当てをもらう

係の仕事をしに行くだけでもよいのです。学級での役割を担い、自分も学級の一員であるという所属感が持てます。 

 

■別室登校や時間帯をずらした登校をしてみる

誰もいない教室で授業を受けているイメージをもってみるのもよいでしょう。好きな活動や得意な教科の授業への参加もいいですね。疲れてきたら廊下で気分転換できるよう、出口に近い座席に配置してもらうなど、できそうなことを試みましょう。 

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

 

 2.家庭での子供への接し方

 

■生活リズムは崩さない

朝は笑顔で「おはよう」と一日を始めましょう。学校に通わない日も、食事、学習、運動、睡眠等の生活リズムは崩さないように。 

 

■学校に行く準備を子供と一緒にする

準備をするなかで、子供が何に不安を感じているか等をつかめることがあります。 

 

■注意は短く、誉め言葉は心から

叱りたくなる時もあればいとおしくなる時もあります。そんな時は、「注意は短く、誉め言葉は心から」にしましょう。なお、注意する時は、ポイントを一つに絞って理由を端的に示すように。そして、時間は1分以内に(それ以上は繰り返しになりがちです)。「あなたは……」と言うより、「お母さんは……」「お父さんは……」と、「私(I)」を主語にアイメッセージで気持ちを伝えましょう。 

 

■家族を通じて外の世界との繋がりをもつ

子供の話を聴いてあげたり、思いを受けとめてあげたりする家庭の雰囲気を大切に。

 

 

3.家庭学習の取り組み 

 

家庭学習の取り組みには、保護者のサポート(声かけ、手助け、点検等)が必要となります。取り組んだ学習は、ノートに書く、記録を取る、作品にする等、学習の足跡を残すようにしましょう。子供がした学習プリントやノートには一言、メッセージを添えるのもいいでしょう。前よりも早くできるようになったり、集中力が続くようになったり、決めた目標まで頑張ったりした時などは褒めて、励ましましょう(反抗期の子供も、書かれたものは黙って読んでいるものです)。 

子供が心を開こうとしない時は、「今はやりたくないのね。でも、心の中ではやってね」と嫌みっぽくなく言って、さっと引き、その場は放っておくこと。しかし、目は離さないように。

 

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

 

 4.学校外の人材・窓口等の活用 

 

現地校に、Intervention Specialist やアシスタント教員が配置され、悩みを抱える子供のサポート体制が整えられていることがあります。School District、または州の教育省にコンタクトをとってください。また、海外でも子供の心の問題に応じてくれる病院や相談室等の専門機関があります。当地の資格をもつソーシャルワーカーと話してみるのもお勧めです。日本人がカウンセリングを行っていることもあります。 

学習や遊びの様子を見守ってくれたり、話し相手になってくれたりする家族以外の人と接する機会をもつと、それが登校刺激となることもあります。  

 

以前、不登校の子供に関わったことがありました。初対面の時は目を合わせてくれませんでしたが、回を重ねていくうちに徐々に目が合うようになり、少しずつ学校に足が向かうようになりました。「自分のことを気にかけてくれる人がいる」と気付くと、辛い、寂しい、悲しい気持ちが救われるのかもしれません。   

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

5.「友達」という心の支え

 

以前、海外の現地校に編入した生徒は、日本で中学校を卒業できなくなった失望感、英語が話せなくて現地校で友達ができない悩み、学校生活のすべてが英語で支配されているストレス等で渡航当初、拭い切れぬ悔しい気持ちでいっぱいでした。 

その生徒が、海外で頑張れたのは、そんな心の内をさらけ出せる場(補習校)と、同じ悩みを共有し、励ましあえる友達の存在が心の支えになったからだと語ってくれました。 

登校したいと願っている子供にとって、自分を理解してくれる友達は、学校や集団生活に肯定的なイメージを抱かせてくれる心強い味方となります。  

 

 

子供の不登校に向き合う

不登校から再登校までの程度に応じた支援や対応を試みても、また、カウンセラーやソーシャルワーカーのアドバイス等に従っても、うまく働く場合と働かない場合があります。 

そして、子供の不登校に直面している保護者は「いつまで続くのだろう?」と、心に余裕をもって子供と接することができなくなります。 

ですが、「子供にとって今はどう対応することが適切か」を判断できるのは、子供のことを成育歴等を含めこれまでの経緯や変容を一番よく理解している保護者です。 

帰国後の学校で、コミュニケーションが円滑に取れない等から、登校の準備はするのに、朝、玄関から出られなくなり、不登校になった子供がいます。 

その保護者は、子供が朝、ぐずっても、登校途中で逃げ出そうとしても、学校に連れていく努力を続けました。気持ちが折れそうになることもあったと思いますが、日により異なる子供の状況に合わせ、何が最善かを模索しながら子供に向き合いました。 

そして、学校のことをよく知ろうとPTA活動に関わり、活動日は子供を一緒に学校に連れていくなどして、不登校は比較的短期間で解決したそうです。 

保護者が積極的に学校や地域の教育活動にボランティアとして参加されることは、国内でも海外でもお勧めです。 

また、地域のイベント等が学校を会場にして行われることがありますが、参加すると、学校が身近に感じられ、学校に行くことの抵抗感を和らげることが期待できます。  

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

 

不登校の未然防止、子供のシグナルを見逃さない 

前述のように、海外では明るく楽しく登校していたのに、帰国後、学校適応に苦労して不登校になることがあります。  

渡航した時のように一から始める心構えで、帰国前に日本の学校生活を確認?しましょう。 文部科学省2022年度調査によると、不登校の小中学生は29万9,048人(前年度比5万4,108人増)であり、10年連続で増加し過去最多となっています。 

 

子供が不登校になるきっかけは、「無気力、不安」(51.8%)が最も多く、次いで、「生活リズムの乱れ、遊び、非行」(11.4%)となっています。ほかにも、 

 

  • 人間関係の悩み(友達、先生) 
  • 学業の不振 
  • 親子の関わり方 等 

 

これら以外の要因や複数の要因が重なり、不登校になるケースがあります。兆候として見られるシグナルには、 

 

  • 決まった友達としか遊ぼうとしなくなる。
  • 関心のあったことへの興味をなくす。 
  • 口数が減り、学校のことを 話さなくなる。 
  • 不安やイライラが増し、丁寧に物事をしなくなる。 
  • 不眠、食欲不振等の不調を訴える。 等 

 

さらに、不登校の傾向が見られ学校に行きづらい現状から相談機関等と繋がるまでに時間的ずれがあり、対応の開始が遅れていることもあります。 

不登校の原因を探り、タイプや状況、子供の発達段階に応じた支援をスムーズに行い、学校復帰の基礎力である心的エネルギーを高めていくことが重要です。  

 

家族の笑顔を取り戻す 

「笑顔で元気に登校した子供が、翌日の学校(翌週の補習校)の登校を楽しみに元気に下校する」ことが基本的な願いです。 

このことを子供の成長に関わるすべての人が肝に銘じ、不登校の子供が今、求めている支援に繋げることが大切です。 

不登校は長期戦です。簡単に出口が見つかるわけはありません。幼児から青年期へと成長していく過程で、子供は人生において大人への1歩を踏み出すとともに多感で悩みの多い時期を過ごすことになります。 

学校に通っているだけで、子供は十分頑張っています。諦めるのではなく、長期的思考で子供を信じ、期待して、不登校に向き合っていきましょう。     

海外で子どもが不登校に。日本にも帰りたがりません。どうしたらいいのでしょうか。

 

<回答者>  
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー 
岡本 健(おかもと たけし)
元・大阪府公立学校校長。1999年から2001年まで台北日本人学校にて勤務。その後、2019年から2021年までコロンバス(OH)補習授業校にて校長として勤務。「算数・社会・理科でSDGsがわかる!—考える力をきたえるワーク」(2022年発行)監修。2022年8月より、海外子女教育振興財団の教育アドバイザー。 在外教育施設重点支援プラン(略称:AG+)評価法部会委員。