我が子に合う帰国生受入校の見つけ方を教えてください。
2024年8月19日
子どもの教育

我が子に合う帰国生受入校の見つけ方を教えてください。

 

 

 <質問> 
我が子に合う帰国生受入校の見つけ方を教えてください。

 

はじめに 

保護者の皆様はお子様の帰国後の学校選択について、様々な不安を抱えていることと思います。日本の教育制度では、中学校卒業までの9年間が義務教育になっていますので、中学校3年までの年齢で帰国する場合は、国立や私立、公立の中高一貫校で入学選抜を行っている学校を選択しなければ、受験・受検をしなくても住民登録をした地域の公立学校の年齢相応の学年に入ることができます。  

今回は帰国後に国内の中学校・高校を受験するうえで、「帰国生受入校の見つけ方」について留意すべき点をいくつかお伝えします。

帰国生受入校の見つけ方

学校選択の第一歩 

我が子に合う学校選択の第一歩は「お子様の特性を把握すること」ではないでしょうか。帰国生といっても、海外での滞在期間や通学した学校種(日本人学校、現地校、インターナショナルスクール(以後、インター校)によって、その学習体験や生活体験は一人ひとり異なります。 

まずは、海外での滞在経験を踏まえて「帰国後の学校選択で配慮するべき点は何か」「帰国後、伸ばしていきたいものは何か」をはっきりさせることはもちろん、お子様の性格、学習に対する姿勢、将来の希望、得意・不得意とするもの、これまで趣味やスポーツ等で打ち込んできて今後も続けていきたいものなど、本人の特性や希望を把握することです。  

 

帰国生受入校とは  

帰国生受入校(入学・編入学試験の方法や入学後の指導において帰国生に対して特別な配慮をする学校)は、帰国生への適応教育を重視するか、または帰国生の海外生活を重視するか、それぞれの学校で帰国生への配慮の仕方が異なり特色は様々です。入試方法だけで判断せず、どのように帰国生に指導・配慮しているかを見ていく必要があります。つまり、どのような学校が帰国後の指導・支援を受ける学校としてお子様にとって良いかを考えることが大切でしょう。

帰国生受入校の見つけ方

学校情報の集め方 

帰国生受入校について、どのようにして情報を集めるのか、その方法をご紹介します。

 

 

(1)書籍類の活用 

・帰国した母親のグループが受け入れ校を訪問してまとめた冊子がたいへん有用です。  

(関東地区「帰国生母の会フレンズ」、関西地区「関西帰国生親の会かけはし」:2023年度版が最終)    

 

 

(2)ホームページの活用  

・各校とも様々な工夫を凝らして自校の特徴を紹介しています。学校情報の発信では、独自の学校説明会やオープンスクールの開催、オンライン個別相談(要予約)の実施、お問い合わせフォームがあり、皆様からの質問にメールで回答、入試情報(オンライン入試の実施)や過去問を入手できる学校と状況はいろいろです。希望の学校が決まりましたら、ホームページをご覧になってみてください。 

・公立の学校なら各都道府県教育委員会(高等学校課など)、私立学校なら日本私学教育研究所のサイトからも学校情報の収集が可能です。 

 

 

(3)弊財団の活用 

・ホームページ「WEB-de学校便覧-帰国子女受入校検索- 」から帰国子女受入校を検索できますし、そこから各校のホームページを閲覧できます。 

・「帰国生のための学校説明会・相談会」は、今年度は東京、名古屋、大阪で5年ぶりに開催し、大変多くの方々にご参加いただき、盛況の内に終了しました。次年度については、決まり次第、ホームページ上で案内していきます。 

・「個別相談」では、帰国後のお子様の教育についての不安や疑問におこたえします。例えば、学校情報として都道府県別帰国生受入校の紹介など、海外に滞在中でも利用できます。相談方法は、オンライン、メール等です。申し込みはWebサイトからできますが、お急ぎの際は電話でも予約可能です。相談料は9,000円(初回相談から一年間有効/弊財団の維持会員企業・団体に所属されている場合は無料)、有効期間内に何度でも相談できます。ぜひご利用ください。

帰国生受入校の見つけ方

 

帰国生入試の特徴とは  

帰国生入試は海外で学んできたことに配慮して一般入試とは別枠で実施されます。その主な特徴は、出願資格、選考方法、入試日程等です。帰国生が不利にならないような形式の試験を実施しています。 日本人学校からの帰国生は一般入試を受験することも可能です。

 

 

(1)出願資格・条件について 

海外滞在年数、現地校・インター校もしくは日本人学校の在籍年数が1~3年以上、帰国後の期間が1~2年以内という条件が多くの学校で定められていますが、学校ごとに異なり様々です。また、英語の資格試験の取得により特別な配慮がなされているので入試要項等で事前に確認しておきましょう。  

高校受験の場合は義務教育ではないため、入学・編入学するには選抜試験に合格しなければなりません。また高等学校の場合は日本の義務教育修了(中学校卒業資格)、または海外で学校教育の9年の課程を修了、もしくは入学する年の3月末までに修了見込みであることが出願資格として求められます。海外の現地校やインター校では学年の修了時期が日本と異なります。例えば翌年の6月に9年生(中3)を修了する場合、日本の高等学校への出願資格がありません。このような場合は遅くとも12月ごろには帰国し、日本の中学校3年生に編入することによって、その学校の「卒業見込み」で受験することができます。9年生を6月に修了した後に帰国する場合は、高校1年生の9月編入学試験を目指すことになります。ただし、9年の課程が3月末に未修了でも柔軟に対応してくれる学校もありますので、学校に直接問い合わせてみるとよいでしょう。  

 

 

(2)選考方法について

私立中学校や公立の中高一貫校の入試では2教科(国語、算数)か4教科(国語、算数、社会、理科)かの選択、あるいは、「英語」か「算数」かの1教科のみ、面接や作文のみ、教科を超えた総合的な思考力や表現力などを見るための「適性検査」などと多種多様です。  公立高校の選考方法は一定の配慮のもと、都道府県ごとに受入れ方法に違いがあります。そのため、帰国する地域の入試要項を事前によく調べておくことが重要になってきます。  

私立高校では、選考方法は学校ごとに異なり特色ある入試が行われています。多くの学校が3教科と面接を基本としていますが、書類選考や面接のみを課している学校も複数あります。  

 

 

(3)入試日程について  

私立学校の帰国生枠入試の時期は一般入試よりも早く、学校によっては9月から始まり2月中旬まで続きますので、早めに計画を立てておきましょう。  

 

 

(4)編入学について

各学校での受け入れ体制はさまざまです。編入生の受け入れについては、欠員が生じたときに募集する学校が多いのですが、学期ごとに募集したり、随時相談により受け入れたりする学校もあります。ただし、中学校では3年生の2学期以降、高校では3年生以降は、募集する学校が少なくなりますので注意が必要です。編入学試験の選考方法等の詳細については、公立高校は都道府県教育委員会へ、国立・私立は各学校へお問い合わせください。

帰国生受入校の見つけ方

具体的なアクション  

(1)学校説明会、授業見学会、オープンスクールへの参加  

集まった学校情報から、ご希望の学校が絞られたら学校説明会やオープンスクールに申し込むことで、直接入試や帰国生の受入担当の先生から学校の様子や特色を聞いたり、実際の授業を体験したりして学校の雰囲気を知ることができます。学校に足を運ぶことでその場で感じることや発見があるかもしれません。  

 

 

(2)文化祭などの学校行事の見学  

学校行事が公開されている場合は、生徒の様子を知る良い機会となりますので、見学することをお勧めします。  

 

 

(3)最新の募集要項で確認  

具体的に受験したい学校が念頭にあれば、その学校の受験資格を調べてみると良いでしょう。募集要項は年度ごとに定められるものですから、つねに新しい情報に注意を払うことが大事です。 

 

 

学校選択の視点  

学校を見る際の主なポイントは次の点になります。 

1.  校風・雰囲気

2. 進路実績

3. 学校形態(共学校・女子校・男子校、中高一貫校、大学附属校、宗教系、学科・コースの編成等)

4. 一般的な指導内容 

5. 未習分野の補習などの指導内容

6. 英語などの取り出し授業の指導内容

7. 施設・設備

8. 学校行事(交換留学制度、海外への研修旅行の有無など)

9. 課外活動(ボランティア活動など)

10. 通学時間 等  

 

過去に訪問した学校で服装や頭髪が自由な学校もありました。どの点に重きを置くかは、お子様の特性・希望とご家庭の教育方針をもとにご家族で話し合われてはいかがでしょうか。

 

終わりに  

学校情報の収集法は多種多様で、海外からもかなりの情報収集が可能になり、学校の教育方針を直接聞くこともできます。一時帰国などを利用して希望の学校をお子様とともに訪問したりすることで学校生活を具体的に想像することができます。学校はメールや電話での問い合わせを歓迎していますので、ぜひ積極的に活用して、お子様に適した学校を選択してください。

 

 <回答者>  
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー 橋本芳登
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー 
橋本芳登(はしもと よしと) 
大阪府公立小・中学校で教諭、教頭、校長として勤務。大阪府大東市教育委員会指導主事として3年間勤めた。中国の広州日本人学校に1995年の学校創立時に教諭として、2016年に南アフリカのヨハネスブルグ日本人学校校長として赴任した。2019年より海外子女教育振興財団の教育アドバイザーを務めている。