2024年2月13日
Davos Next

JOES Davos Next 2023、そして2024へ

JOES Davos Next 2023を振り返る
JOES理事長 綿引宏行インタビュー

11月19日(日本時間)の交流会で全日程を終了したJOES Davos Next 2023。JOESには、参加した子どもたち、保護者やファシリテーターからの声が続々と届いています。  

2回目にあたる今年は、アフリカ現地校の子どもたちに参加を呼びかけたり、基調講演の時間を日本時間夕方に設定したり、ディスカッションの進め方を深めるなどの、新しい試みがいくつかありました。それを受けて、JOES Davos Nextは、2024年に向けてさらに進化していきます。  

JOES Davos Nextを生み、育ててきたJOESの綿引宏行理事長に、今年のイベントを振り返って話を聞きました。

(取材・執筆:只木良枝)

インタビューに答える綿引理事長

今年の基調講演のテーマは海でした。

 

はい、基調講演には海洋政策の第一人者である阪口秀博士を迎え、今、世界の海が抱える課題について、Part2のディスカッションにつながる問題提起をしていただきました。環境問題は、未来を支える子どもたちが立ち向かわなくてはいけない大きなテーマです。

 

講演にはアフリカから現地校の中学生たちが参加してくれました。JOES Davos Nextを世界中の子どもたちが学ぶ場に育てるのが私たちの夢ですから、その第一歩になりました。    

 

ただ、基調講演のリアルタイム配信は日本時間夕方18時からで、アジアや日本国内の学校にとっては参加しにくい時間帯でした。時差は、世界規模で物事を進めようとすると必ずついてまわる課題です。オリンピックだって解決できないわけですから。そこで、リアルタイムとオンデマンドを組み合わせるなどの方法で、何とかできないかと思っているところです。    

 

学校参加校をもっと増やすために、たとえば基調講演を題材にした授業など学校パッケージのようなものを用意して、現場で使いやすいしくみをつくって提示していきたいと思っています。アイデアは持っていたのですが、その準備にまで手がまわらなかったというのが反省点です。    

 

JOES Davos Nextをきっかけにした学校同士の交流も進んでいます。JOESマガジンでも過去に紹介していますが、グアム日本人学校とプノンペン日本人学校は昨年の基調講演の感想共有のオンライン交流を実施、今年度は平和に関する合同授業をしているそうです。こんなふうに在外校同士や国内校と在外校、あるいは今回のプロジェクトを通じてつながりができたアフリカの各校と現地の在外校との交流が生まれて続くといいなと思います。

 

ディスカッションでは、嬉しい出会いがあったそうですね。

 

昨年と違い、事務局で事前に4回のディスカッションの日程と時間を決めて、参加者を募集しました。海が抱える具体的な問題を解決したり改善したりするための「次世代が困らないためのアイデア(ルール)を考える」が共通のミッションで、具体的な問題として、海ゴミ(プラスチック)、ブルーカーボン、水産資源管理、養殖の4つのテーマに分け、選んで参加できるようになっています。使用言語は、昨年同様日本語と英語を選べるようにしました。

 

「自助、共助、公助」と言いますね。海外子女教育について言うと、自助は、50年以上にわたって、各家庭が努力して積み重ねてきています。公助は振興法(令和4年6月17日、「在外教育施設における教育の振興に関する法律」)ができたことを契機に、国からの支援を一層お願いしていきたいと思っています。そして共助の部分も私たちが支援すべきところで、今年度より新たな活動としてスタートしたJOESファミリーメンバーとして保護者を組織化して情報や体験の共有を進めています。

 

そして、海外子女・帰国子女の子どもたち同士の共助、これは、学び合いと言い換えることができると思います。先輩帰国生の背中を見て、ああなりたい、自分もいつか後輩のために頑張りたいと思う、先輩は後輩のために力になりたいと貢献してくれる。そういう、異年齢の子どもたち同士がフラットに学びあう場として、JOES Davos Nextを育てたいとと考えてきました。日本人学校でおなじみの「縦割り」の発想ですね。

 

各グループに配置したファシリテーターは、高校生の活躍が目立ちました。昨年の参加者が、今年はファシリテーターに立候補してくれたんです。5人もです。これには感激しました。私たちが目指した「学び合い」が、こんなに早く形になってくるとは思いませんでした。もっと続けていこうと、一層力が湧いてきました。

 

そして、グループディスカッションの英語チームには、エチオピア在住の中学生が個人参加してくれました。きっと参加者がいるだろうと信じていた一方で実際には難しいかとも思っていたので、嬉しかったですね。彼の姿を見て、同じ立場だったら自分にも同じことができるだろうかと考えた子もいたでしょう。

 

2024への課題や、これからやりたいことはありますか。

 

参加者も事務局の働きも素晴らしかったけれども、私自身の動きが足りなかったという反省があります。

 

JOES Davos Nextは未来世代を応援するプロジェクトですから、これに協賛すること自体が「未来世代を応援している」というメッセージを発することになります。実際に、第1回の報告で企業・団体を訪問した時にそういう評価をいただいて、本年も新たに多くの企業の方々から協賛をたまわりました。一方で、日本国内の教育機関や教育委員会などへの啓蒙活動には、手がまわりませんでした。これが私の大きな反省点です。

 

JOES Davos Nextを、日本人に限らず、世界中の子どもたちが参加するイベントに育てるのは私の夢でもあります。参加者が現地の友人を誘ってもいいし、日本人学校を通して現地校との合同授業などに提案できないかと思っています。  

 

そうなると、言葉の問題が出てきます。今回の基調講演は日本語で英語の同時通訳を提供しましたが、逆に英語での講演、あるいは日英ミックスという方法も考えられますね。ディスカッションにも、ミックスグループがあってもいいかもしれません。英語に自信がなくても、多少間違っても頑張って英語で伝えようというモチベーションが生まれるでしょう。  

 

もうひとつチャレンジしたいことがあります。子どもたちのディスカッションの成果を、大人の世界に問いかけたいのです。

 

グループで話し合った問題解決のアイデアについて、子どもたちは「明日からでもできるよ」「どうして大人になるまで待たないといけないの?」と思っているでしょう。子どもたちの鋭い意見は大人たちを撃ちます。国際会議で発表の場を設けるとか、メディアを通じて成果を発信するとか、方法は色々あるでしょう。JOES Davos Nextにかかわる大人の責任として、それをぜひ実現したいと思っています。

 

地球の課題をみんなで考えて解決していく、そういう視点を持って行動する人を世界人と呼びます。しかし世界にはさまざまな立場や価値観があります。だからこそ、それぞれの違いを学ぶところからはじめ、ディスカッションを重ねて、利害を超えた価値観を共有する必要があります。

 

そのためにも、JOES Davos Nextという世界人を育てる場を大切に守っていきたいと思っています。  

 

 

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