JOES Davos Next 2024開催中!  山崎直子宇宙飛行士 Q&Aセッション実施
2025年3月11日
Davos Next

JOES Davos Next 2024開催中!

 山崎直子宇宙飛行士 Q&Aセッション実施

昨年12月に公開された宇宙飛行士・山崎直子さんの基調講演。「宇宙からの地球観測」、「宇宙デブリ」、そして「国際協力」という3つのテーマに沿った講演はとても分かりやすく、子どもたちの心に強い印象を残しました。同時に、たくさんの疑問も生まれたようです。その疑問を講師の山崎直子さんに直接お答えいただく基調講演Q&Aセッションが、2月7日18時30分(日本時間)から実施されました。

 

今年度のJOES Davos Nextへの参加者は世界中から24,000人以上。国内外の日本人小中学生はもちろん、日系人や現地校の子どもの姿もありました。3回目を迎えるJOES Davos Nextが、着実に世界に広がっていっていることを実感しました。

 

Q&Aセッションは基本的には日本語で進行し、英語への同時通訳を用意しました。英語の質問には山崎さん自身が英語で回答し、その場合は日本語への同時通訳が利用できるようになっています。

 

進行役は、JOES Davos Next運営委員でもあるフリーキャスターの桑原りささん。桑原さんの「世界中のみんなに関係する地球の問題、未来について、みんなで一緒に考えていきましょう」という呼びかけに応じて、山崎さんが画面に登場しました。 

(取材・執筆:只木良枝)

世界各地からの質問が

JOES Davos Next 2024開催中!  山崎直子宇宙飛行士 Q&Aセッション実施

最初の質問者は、ペルーの首都リマにある日系人学校の少年ふたりでした。日本とは14時間の時差があり、ビデオレターでの質問です。彼らが通っているのは小中高一貫教育の私立学校で1,300人の児童生徒が在籍。授業ではスペイン語、英語はもちろん日本語も学んでいるそうで、質問者のふたりもしっかりとした日本語で、「地球から火星まで到達するための所要時間は?」「宇宙飛行士になるために大切なことは?」と問いかけました。 

 

次に、ジャカルタ日本人学校小学部4年生20人あまりが登場しました。中にはインドネシアの伝統的衣装バティックを着ている子もいます。学校の紹介に続いて「国際宇宙ステーション(ISS)には色々な国の人がいると思いますが、どんな話をしましたか、共同生活をする中でケンカしないのですか」と、順番に前に出て元気いっぱいに発言する子どもたちのパワーに、山崎さんの顔も思わずほころんでいるように見えました。 

 

続いての質問は英語でした。アメリカ・アラバマ州の9年生からです。彼が通うのはサイバーテクノロジーと工学教育に力を入れている公立高校のようで、質問は、「環境調査のために、宇宙からの地球観測をどのように活用するか」と少々専門的なものでした。山崎さんは英語で答え、最後に「よりよい未来を一緒に作っていけることを願っていますよ」と微笑みかけました。

 

京都の小学6年生はカメラをオンにして「宇宙から帰ってきたときにどんな気持ちでしたか」とライブで質問しました。山崎さんの身振り手振りも交えた具体的な回答に、熱心に聞き入っていた様子が印象的でした。

 

そして、その他にもDavos Next事務局で事前に受け付けていた質問を、桑原さんが読み上げました。イギリスから「なぜ難関の宇宙飛行士をあきらめずに目指し続けられたのか」、サウジアラビアから「宇宙でしたことの中で一番楽しかったのは」、アメリカから「地球でのトレーニングと宇宙での経験の何が違ったか」と続きました。

 

この頃には、ライブ視聴者からの質問もどんどん届き始めていたようです。PC画面をのぞき込む桑原さんの動きが目まぐるしくなってきました。 

 

「宇宙に行くのは怖くなかったのですか?」「宇宙では酔わないんですか?」「ISSに到着した時、最初に何を思いましたか?」「ISSに多数の宇宙ゴミが迫ったらどうするんですか?」「宇宙食は何が楽しみでしたか?」「地球に帰ってきて何を一番に食べましたか?」「宇宙滞在で一番印象に残っている言葉は?」「無重力では食べ物はどのように消化されますか?」「スペースデブリを見ましたか?」……次々に繰り出される質問の向こうに、子どもたちの顔が目に浮かぶようでした。「宇宙に関して一般の人にもっと知ってほしいことは?」「訓練されていない一般人が宇宙に行くことになったらどんな問題が発生するか?」などの質問には、宇宙観光旅行が現実のものとなりつつある時代を実感しました。

 

山崎さんは疲れた様子も見せず、質問のひとつひとつに丁寧に答えてくれました。

 

あっという間に終わりの時間になりました。名残惜しそうな表情の桑原さんから最後に応援メッセージをひとこと、と言われた山崎さんは、「宇宙も皆さんを待っていますよ。Space is waiting for you。皆さんと一緒に未来を作っていけることを、私も楽しみにして応援しています」と、ひときわ優しい笑顔になりました。

 

最後に、桑原さんから宇宙関連ニュースとして、JAXAの大西卓哉宇宙飛行士が今年3月から国際宇宙ステーションに長期滞在するとのニュースが。ロケット打ち上げの日には、世界の各地で子どもたちがワクワクしながらその中継を見つめることになるでしょう。  

 

青い地球は「みんなのもの」

 

JOES Davos Next 2024開催中!  山崎直子宇宙飛行士 Q&Aセッション実施

当日、Q&Aセッションを視聴していたJOES理事長の綿引宏行は、「画面のむこうに世界中の子ども達の輝く瞳が見えるかのようだ。まさに『地球人』としての視点、視野をもって世界で次の時代を担う人財が、この中から何人も出てきてくれるに違いないよ」と、興奮気味でした。

 

綿引の頭の中では、セッションの間ずっと、「青い地球は誰のもの」という曲が流れ続けていたそうです。昭和・平成の大作曲家であり、世界的なシンセサイザー奏者でもある冨田勲によるこの名曲は、1970年から5年にわたってNHKで放送された「70年代われらの世界」のメインテーマ。当時まだ顕在化していなかった地球環境問題や資源、経済、社会、人口、食糧問題など人類がこれから直面するであろう課題に切り込んだ大型ドキュメンタリー番組でした。 

 

55年前のこの問いかけに、今、私たちはどう答えたらよいのでしょうか。

 

ジャカルタ日本人学校の子どもたちの質問に、「ISSではケンカしないのですか」という微笑ましいものがありました。 この話題には続きがあります。桑原さんがビデオレターの後に、こう言葉を重ねたのです。

 

「ISSや、国際協力についての質問、他にもたくさんいただきました。ISSでは各国協力して生活しているのに、なぜ宇宙で出来ていることが地上では出来ずに紛争が続くのでしょうか」 基調講演の後に実施されたPART2グループワークのディスカッションから生まれて、事前に寄せられていた質問でした。 

 

山崎さんはこう答えました。 

 

「宇宙船の中ではみんなが協力をしないと生きられないという危機感を共有していますから、宇宙船のなかにある水や食料や空気や一つ一つの資源を大切にして、そしてみんなで協力し合うことが基本です。けれども地球は大きいので、つい私たちが地球に甘えてしまうからだと思います。でも、宇宙から見ると、私たちの地球自身が宇宙船です。地球の資源を大切にして協力し合うということを、地球上でも私たちはできるはずです。そのためには、一緒に今の地球の状況を学んで危機感を共有して、そして希望を忘れないことだと思います」

 

国際情勢や環境破壊の報道に心痛むことの多い昨今、「一緒に」「みんなで」「協力」と繰り返されるキーワードに、未来への解決の糸口がある——。 

 

青い地球は誰のもの? みんなのもの。みんなで一緒に大切にしていくもの。 

 

「地球の問題、未来について、みんなで一緒に考える場を」というJOES Davos Next のミッションが、「宇宙」という大きなテーマのもとに再確認できた気がしました。

 

  山崎直子著『宇宙飛行士は見た 宇宙に行ったらこうだった!』
 https://repicbook.com/uchuu/(出版社サイト)

 

JOESマガジンのバックナンバーより

■JAXAの人に聞いてみた 日本の宇宙開発

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(JOESマガジンの前身、月刊『海外子女教育』バックナンバーより)  

 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のご協力を得て、ロケット、探査機、人工衛星、航空機など、JAXAが手掛ける日本の宇宙研究と開発についてまとめた2020年の特集です。JAXAで働いている元海外子女の4名の方からの熱いメッセージは必読です。