グループディスカッション第1回、第2回
阪口秀博士の基調講演によって、海と環境への興味と問題意識を刺激された子どもたち。9月から、世界各地をオンライン会議システムでつないだグループワークが始まっています。
JOES Davos Next 2023のディスカッションは合計4回で、事前にすべてのスケジュールが決まっています。時間帯は、世界各地の時差を考慮して日本時間の午前8時、午前11時、午後5時、午後9時から選べます。各グループは5、6人の少人数。ここにファシリテーターが2人ずつ配置され、協力してディスカッションを進めていきます。
ディスカッションのテーマは4つ。海ゴミ(プラスチック)、ブルーカーボン、水産資源管理、養殖の中から、参加者が興味を持っているテーマのグループに入ります。事前に希望を出してもらって事務局で調整したところ、結果的に日本語・英語チームがそれぞれの時間帯にバランスよく分散しました。英語チームの中には、もちろん初参加のアフリカの子たちの姿もあります。第1回、第2回のミーティングの様子をちょっと覗いてみました。
(取材・執筆:只木良枝)
第1回 基調講演の感想共有と今後の進め方
9月10日(日本時間)の第1回ディスカッションは、メンバーの初顔合わせとあって、どのグループも自己紹介からスタート。続くアイスブレイクで、活発なディスカッションのためのコミュニケーションの場づくりをしました。
ファシリテーターから提案された簡単なゲームを実施するうち、最初はぎこちなかった子どもたちの表情が柔らかくなり、発言がどんどん増えていきます。なかには、ゲーム以上に自己紹介が盛り上がったグループもありました。誰かひとりが自分のことを話すと、そこに他のメンバーが次々に質問していくのです。
「アニメが好きです」という自己紹介に、
「どんなアニメを見ていますか」
「そのアニメのどこが好き?」
「私が最近はまっているのは……」
「自分でもイラスト描きます」
「えっ、見せて!」
といった具合に、話題がどんどん広がっていきます。子どもたちもファシリテーターも、自然体で生き生きと発言していたのが印象的でした。
続いて、基調講演の感想共有へ。ディスカッションの3日前に阪口秀博士の講演を視聴したばかりの子どもたちの頭の中には、その内容が鮮明に残っていたようでした。みんな、待ちかねたように饒舌に語りはじめます。具体的な名称や数字が発言の中に出てくることもあり、子どもたちが阪口博士からの問題提起をしっかり受け止めたことがよくわかりました。
ファシリテーターに指名された順番で感想を述べ、そこに仲間が質問してみんなで話し合う、というのが一般的な進め方かもしれません。しかし、子どもたちがどんどん発言を始めたグループもありました。画面上では目まぐるしく発言者が入れ替わり、途切れません。ただ、オンライン時代の子どもたちは発言のタイミングをよくわきまえていて、人の意見にきちんと耳を傾け、発言が重なったときは譲り合うなどの配慮が見られたのが印象的でした。初対面にもかかわらずの盛り上がりに、「後半はずっとマイクオフにして、聞いていたんだよね。みんなすごいな」と驚いていたファシリテーターもいました。
時間の使い方もグループそれぞれでした。ディスカッションの残り時間を、次回につながる調査など各自のワークのために使ったり、メンバー間のコミュニケーションツールであるChatworkの使い方を実際に操作しながら確認したりしました。
インターネットに慣れた子どもたちは、何か知らないことやひっかかることがあるとPCやタブレットでさっと検索し、
「それはこういうことらしいよ」
「URL貼るね」
「こんな動画があったから共有するよ」
などのやりとりをしています。
たとえ画面上で誰も発言していなくても、各自が調べたり、考えたりしています。まるで、図書館の同じテーブルに座った数人がそれぞれ事典を広げて調べものをしていて、誰かが「わかった!」と声を挙げた瞬間に、ほかのメンバーが手をとめて
「どこ?」
「ほんと?」
「どういうことなの?」
と身を乗り出して同じ本を覗き込む……。
そんな風景が見えたような気がしました。世界のあちこちに住む子どもたちは、地球という大きな図書館のテーブルを囲んで、ともに学んでいるのでした。