2026年10月27日
特集

歌声でつなぐ日本とパラグアイ~日本人移住90周年、4校で紡いだ合同合唱~ 【パラグアイ日本人移住90周年記念式典】

 

学校の概要

アスンシオン日本人学校は、パラグアイの首都アスンシオン市の東郊に位置しています。自然豊かな環境の中に、赤レンガ造りの校舎が建っています。校内には、ブーゲンビリアやラパーチョ、ハカランダ、マンゴーなどが茂り、時折、校章のモチーフにもなっているハチドリの姿も見られます。


小学部11名、中学部4名の計15名が在籍する極小規模校で、日本の行事を大切にしながら、現地校との交流や、パラグアイ国内各地の日本人移住地を訪ねる毎年の移動教室など、この地だからこそできる学びにも力を入れています。

 

取り組みのきっかけ    


パラグアイに日本人が移住して、今年(2026年)で90年になります。今回、その節目となる記念式典で、子どもたちがステージ発表をする機会をいただきました。90年にわたり紡がれてきた日本とパラグアイのつながりを「子どもたちの歌声で表現したい」と考え、アスンシオン日本人学校のほか、アスンシオン日本語学校、NIHON GAKKO、日本パラグアイ学院の4校による合同合唱を企画しました。曲目は、90周年記念曲「NOVENTA PRIMAVERA(90の春)」(スペイン語楽曲)に加え、パラグアイへ渡った移住者の方々の故郷・日本への思いを重ね、日本の唱歌である「ふるさと」を選びました。

 

取り組み


① 楽曲の決定


・90周年の歴史をたどる「NOVENTA PRIMAVERA」
この曲は、移住90周年のために作曲されました。合唱用にアレンジするにあたり、子どもたちが歌える音域かどうか、難易度はどうか、など、作曲者、編曲者と共に、何度も話し合いを重ねながら楽譜を完成させました。伴奏には、ピアノ、チェロ、パラグアイの民族楽器アルパを使用し、さらに、生徒代表3名によるソロも加わって、90周年という特別な節目を彩る一曲となりました。

・子どもたち自身の言葉を紡いだ「ふるさと」
この曲では、二部合唱に挑戦しました。1番をアカペラで歌い、2番からピアノ伴奏を加え、2番と3番の間奏には「90年の歩みを振り返る言葉」を入れました。その言葉を考えたのはアスンシオン日本人学校の生徒です。毎年の移動教室で国内の移住地を訪ね、移住者の方々から聞いた話や、日頃の交流、調べ学習などで得たこれまでの学びをもとに言葉を紡ぎました。

<90年の歩みを振り返る言葉>

② 基本から一歩一歩
 
パラグアイでは、日本のように合唱に取り組む文化がほとんどありません。そのため、参加した児童生徒の中には、今回が初めての合唱経験となる子どもたちも多くいました。そこで、4校で合わせる前に、5月から各校へ3回ずつ、本校の教員が出向いて練習を行いました。実際に声を聞きながら、一人ひとりの声や歌唱の様子に合わせて、その都度必要な練習を組み立てました。歌う技術だけではなく、互いの声を聞き、皆で一つの音楽をつくる楽しさを感じてほしいという思いで練習を重ねました。

日本語の母音「あいうえお」の発音練習
音程や長さの確認練習

③ 4校の声をひとつに

6月からは計5回の合同練習を実施しました。異なる学校の子どもたちが声をそろえること自体が大きな挑戦でした。しかし、合唱は一人ではできません。互いの声を聞き、「みんなで一つになろう」という気持ちが高まるにつれて、自分が上手に歌うことだけではなく、周りの声を聞き、全員で音楽をつくることを意識するようになりました。そうした意識の変化とともに、歌声も少しずつ変わっていきました。

毎回録音して自分たちの歌声を確かめながら練習
後ろや横の人の声をよく聞き、声がそろっているかを確認

④ 本番で生まれた「心に響く歌声」

合唱経験も、学校も、使う言葉も異なる子どもたちが、一つの目標に向かって練習を重ねた数カ月。秋篠宮皇嗣同妃両殿下、パラグアイ大統領夫妻をはじめ、移住に関わってきた多くの方々が見守る中、本番を迎えました。

子どもたちは高い集中力で、一曲一曲に心を込めて歌いました。誰を見てもしっかりと目が合い、皆で合わせようという思いが伝わってきました。歌詞の言葉を大切に歌う表情からも、これまでの練習で培ってきた思いが感じられました。歌声がこれまでで一番よくまとまり、歌い終えた子どもたちの表情には大きな達成感が溢れていました。

客席には涙ぐみながら耳を傾ける方の姿も見られ、子どもたちの歌声が世代を越えて届いたことを感じる舞台となりました。 

「ふるさと」の3番は、会場の皆さんも一緒に心を合わせて歌いました

 

⑤ 子どもたちの感想

<現地校Aさん>
Cuando me sugirieron hacer el solo para el coro del 90.º aniversario, estaba muy contento, pero también nervioso al mismo tiempo, ya que esta era la primera vez que tendría un rol tan importante en un evento y estaba muy emocionado de cantar frente a tantas personas. 
Durante los ensayos, los profesores siempre se mostraban impresionados con mi voz, lo cual me motivó aún más a dar lo mejor de mí en el evento principal. 
Cuando llegó el día, estaba muy nervioso hasta que llegó el momento de hacer el solo. Cuando comencé a cantar, mi voz salió muy bien y, al terminar muchas personas se acercaron a felicitarme. En ese momento decidí que quería seguir participando en este tipo de eventos.

90周年記念の合唱でソロを歌うことになり、とても嬉しかったです。初めて大きな役割を任されたので緊張もしました。練習では、先生方が歌声を褒めてくださり、それが頑張る力になりました。本番は緊張しましたが、無事に歌い切ることができました。本番の後にはたくさんの方が声をかけてくださり、とても嬉しかったです。この経験を通して、今後もこのようなイベントに参加していきたいと思いました。


<現地校Bさん>
Poder representar a mi colegio, y no solo en español, sino también en japonés, fue una hermosa oportunidad para unir lazos con la cultura japonesa. Al ver al público cantar e incluso a algunos lagrimear, sentí mucha conexión y comprendí que realmente logramos llegar al corazón de todos, que se hizo justo lo que queríamos. 
De que alumnos de 4 colegios que aprenden la cultura japonesa nos hayamos unido, preparándonos juntos para un evento tan espectacular fue una experiencia única. 
Durante cada práctica, mientras descansabamos, miraba a mi alrededor y sentía que era parte de algo muy grande y bonito, todos nos movilizamos y cambiamos nuestros horarios para poder asistir y cumplir dando lo mejor de nosotros, realmente considero que este evento, este coro , logró unir cuatro colegios en uno.

学校を代表して、スペイン語だけでなく日本語でも発表できたことは、日本文化とのつながりを深める素晴らしい機会になりました。観客の皆さんが一緒に歌ってくださったり、涙を流している姿を見たりして、私たちの思いが届いたことを実感しました。また、日本文化を学ぶ4校が一緒に一生懸命練習をし、一つのものを作り上げたこともとても貴重な経験でした。この合唱を通して、4校が一つになれたと感じています。


<日本人学校Cさん>
私は、「ふるさと」の間奏での言葉を、2年生と考えました。3年間、パラグアイで過ごす中で、移住者の方々の苦労や努力、そして、それを支えてきたパラグアイの人々の温かい気持ちについて学んできました。これまで学んだことや感じたことを振り返りながら、一つ一つの言葉に思いを込めました。この合唱を通して、日本とパラグアイの人々の絆をより強いものにすることができたと思います。


<日本人学校Dさん>
僕の家族は、ピラポに移住しました。そのため、今回、移住に関わるこの式典で歌えることを楽しみにしていました。本番では、これまで積み重ねてきた練習の成果を発揮し、歌い切った瞬間、大きな達成感が胸に込み上げました。そして、移住に関わった方々をはじめ、会場の皆さんからの拍手に、僕たちの歌を受け止めてもらえたと感じ、うれしく、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。

 

今後に向けて


これまで交流のあった学校とはさらに関係が深まり、交流のなかった学校とも新たなつながりが生まれました。今後は、互いの授業見学や文化交流、学校行事への参加など、子どもたちが共に学び合える機会をさらに広げていきたいです。そして、今回のつながりを生かし、また合同合唱をする機会もつくれたら嬉しく思います。