2023年からケニアに駐在している中川梨緒奈さん。約3年にわたりカクマ難民キャンプを拠点に活動し、現在はナイロビのオフィスに勤務している。高校時代にはアメリカ、大学ではスペインへ留学した。スペインの大学院で国際開発を学び、AAR Japan(NPO難民を助ける会)に入職した。難民・移民支援を志したきっかけや、ケニアでの活動、「日本やスペインで与えてもらったものを持って、またアフリカでがんばる」という現在の生活について、話を聞いた。
(取材・執筆 Makiko)
メイン写真:子どもたちに学用品を配付する中川さん
2026年3月AAR Japan(難民を助ける会)提供
難民や移民に興味を持ち始めた、留学体験
—中川さんは、高校時代にアメリカへ、大学時代にはスペインに留学されているのですね。海外に興味を持ったきっかけから教えてください。
私は日本生まれ、日本育ちですが、家族で海外旅行に行ったことをきっかけに「留学したい」という気持ちが芽生え、高校1年生の夏から1年間、アメリカに留学しました。
アメリカでお世話になったホストファミリーの中に、エルサルバドルからの移民の家族がいました。子どもは英語を話せましたが、両親は英語でのコミュニケーションが難しかったため言語の壁があり、住環境もあまり良くありませんでした。一方で、同じ移民の家族でも、経済的に豊かな暮らしをしている家庭もありました。1年間の留学生活で3つの家庭にお世話になり、同じアメリカ社会の中にもさまざまな家庭があることを知りました。
大学ではスペインに留学しました。もともとスペインのサッカーが好きで、アメリカ留学中もスペイン語の授業を取るなど、長くスペイン語を学んでいました。 スペインにはさまざまな国や地域にルーツを持つ人が暮らしており、移民に寛容な雰囲気があるように感じました。
ケニア駐在員として働く
—新卒で入社した日系企業を退職後、スペインの大学院で国際開発を学び、東京オリンピックでは難民選手団の広報を務められたそうですが、その後、AARのケニア駐在員になるまでの経緯を教えてください。
大学時代から国際援助や難民・移民支援をしたいと思ってはいましたが、それが具体的にどのように仕事に繋げられるのかがわかりませんでした。まずは新卒で日系の民間企業に就職し、丁寧な研修などを受けさせてもらえたことは、社会人としての基礎になりました。
カクマ難民キャンプは長い歴史を持ち、規模も大きいので、以前からそこでの仕事に関心がありました。生活環境や現地の業務について色々と事前にAARに確認し、「やっていけそうだ」と思い、ケニア駐在員として採用されました。
—ケニアでの活動と生活の様子を教えてください。
カクマでは学用品の支援、教室などの建設を行いました。また、干ばつが頻発するので、そういった際に現地の人に緊急支援を行っていました。
普段の生活としては、報告書や会計書、プロジェクトの管理などのオフィスワークがたくさんあるのですが、私はフィールドに足を運ぶのが好きなので、学校で子どもたちと話す機会を作るなど、毎日少しでも現場に赴くようにしていました。
事務所と自宅はすぐ近くで、キッチンがあるので自炊することが多かったです。
現在はナイロビの事務所で事業案件の作成など、オフィスワークを中心に仕事をしています。今日(取材日)は出張でまたカクマに来ていて、これから民芸品を作っている人に会いに行く予定です。
—カクマで女性として働く中で、感じたことはありますか?
カクマでは国連機関をはじめ、さまざまな団体が活動していますが、確かに男性が多いです。ただ、女性であることを理由に不当な扱いを受けることはなかったです。特にやりにくさというのは感じません。治安も、案外悪くないんです。ナイロビなどの都会の方が警戒する場面が多いかもしれません。
学校の活動などでは、女生徒からは「同性のほうが話しかけやすい」と思ってもらえる場面もあるのかな、と感じます。どんな活動でもコミュニケーションが大切なので、女性職員だからこそ聞き出しやすい声もあると思います。
また、現地の手工芸を日本の技術を使って広げるプロジェクトでは女性目線ならではといいますか、自分自身も携わっていて楽しいですし、やりがいがありますね。
2024年11月撮影AAR Japan(難民を助ける会)

2023年3月撮影AAR Japan(難民を助ける会)提供
—事前に悩みをお聞きしたところ、「特にない」とのことでしたが、治安や病気など、心配事の多い地域かとイメージしていたので、意外でした。
こちらに来てから、大きな病気はしていません。マラリアの多い地域ではありますが、蚊に刺されないようにすること、ストレスを溜めないこと、基礎体力を保つことなど基本的なことを意識しています。
「体を動かしていないとウズウズしちゃうタイプ」なので、休日はマラソンに挑戦しています。
あまり、自分の中に「こうしなければならない」というしがらみがないんです。これまで世界中でいろんな人の人生を見て、いろんな価値観に出会ってきました。キャリアについては「あと何年での目標」というのはありますが、特に悩みはないんです(笑)。
—国際協力に興味のある学生にメッセージをお願いします。
私も、「難民・移民支援がしたい」と思っていても、初めの取っ掛かりをつかむまでには時間がかかりました。でも、いろいろなところに顔を出して、学び続けるうちにきっと自分のやりたいことに辿り着けると思います。
私は、スペインと日本で人の温かさや安心感など、たくさんのものを受け取ってきました。日本で平和な暮らしを実感し、家族や友人から安心感をもらえるからこそ、またアフリカに戻り、誰かのために働くことができます。その行き来によって、自分の中のバランスが保たれているのかもしれません。
両親は、ありがたいことにいつもサポートしてくれて、今もずっと見守ってくれています。
今後はフィールドで学んだことを広く活かして、ステップアップしていきたいです。また、私たちのような団体が現地でどのような活動をしているのかについては、日本ではまだ十分に知られていないかと思いますので、現場での経験や活動について発信していくことも必要だと考えています。






