外国籍の人材がイキイキと能力を発揮できる社会モデルを日本で構築する! 株式会社Emunitas代表取締役CEO 山口由人さん
2026年7月7日

外国籍の人材がイキイキと能力を発揮できる社会モデルを日本で構築する! 株式会社Emunitas代表取締役CEO 山口由人さん

立命館アジア太平洋大学に通う山口由人さんは現在、株式会社Emunitas代表取締役CEOとして、外国籍の人材と日本企業をつなぐ事業を展開している。幼少期にドイツで生活した経験を持つ山口さんは、現地で移民・難民問題に直面し、大きな衝撃を受ける。中学校入学のタイミングで日本に帰国してSDGsの「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という理念と出会い、中学校3年次の時に周囲の人々に対する「エンパシー(共感力)」を育む教育活動をスタートさせた。大学生になった現在は、外国籍の人材が能力を発揮できる社会モデルの構築を目指して、さまざまな事業に取り組んでいる。山口さんが思い描く外国籍人材と共創する未来像について詳しく聞いた。

(取材・執筆:丸茂健一)  

 

——山口さんの現在の活動について教えてください。  

 

私は現在、立命館アジア太平洋大学に通いながら、株式会社Emunitasという会社を経営しています。社名は「エンパシー(Empathy)」と「ユニティ(Unity)」を組み合わせた造語で、「世界の人々と日本の可能性を引き出す」をミッションとして、外国籍人材と日本企業をつなぐ事業を展開しています。

 

「エンパシー」とは、他者の立場に立って、相手の感情や思考を想像し理解する力のことで、「共感力」と訳されることもあります。大学で知り合ったベトナム人の共同創業者と一緒にさまざまな事業を推進しています。 

 

事業内容は主に2つの柱から成り立っています。1つ目は外国籍の人材の紹介事業、2つ目は海外進出支援事業です。最近は特に、日本企業の海外進出支援に力を入れており、約25カ国に対応可能なネットワークを構築しています。例えば、抹茶専門商社の東南アジア展開支援、インドネシアやインドの教育会社による現地小学校向け教材の販売支援などを手がけています。営業代行の仕事が多く、現地の言葉や商習慣、企業へのアプローチ方法などの知見を活用しています。  

早稲田大学で行われたEmunitas主催の留学生向けキャリア支援イベント
早稲田大学で行われたEmunitas主催の留学生向けキャリア支援イベント

 

——学生起業に至った背景について教えてください。  

 

私はもともと15歳で最初の起業を経験し、大学生になった18歳のときに現在の株式会社Emunitasを設立しました。その背景には、幼少期に海外で過ごした経験があるのは間違いありません。生後数カ月から約11年間、ドイツで生活し、日本ではできないさまざまな経験をしました。まず、フランクフルト、その後デュッセルドルフで生活し、日本に一時帰国したのち、最後はミュンヘンで日本人学校に通っていました。  

 

特に印象に残っているのは、小学校5~6年生だった2013~2014年頃のミュンヘンでの出来事です。当時、シリアの内戦が深刻化しており、メルケル政権下でシリア難民の受け入れが積極的に行われていました。しかし、次第に受け入れ派と拒絶派による二極化が進行し、自宅近所のショッピングモールでテロ事件が発生するなど、移民・難民とローカル住民との衝突を身近に経験することになりました。「なぜ同じ町に住んでいる人たちが銃で撃ち合わなければならないのか……」。目の前の社会問題に対し、何もできなかった自分に対して、小学生なりに無力感のようなものを感じていました。  

 

 中学校1年次のときに帰国して、私立の中高一貫校に通ったのですが、課外授業で、SDGsの仕組みを学ぶカードゲームを体験したのです。そこで、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念を知り、自分にも何かできるのではないかと考えました。  

 

その後、大人向けのSDGsセミナーに一人で参加するなど主体的に学びを深め、中学校2年次には同学年の仲間にも声をかけ、校内での活動を開始します。同時期に、中高生団体「Sustainable Game」を設立し、中高生向けイベントや企業研修などの活動を展開していきました。  この団体は、単にSDGsをゲーム感覚で学ぶことを目的としたものではありません。世の中で「SDGs」という言葉だけが先行している状況へのアンチテーゼとして立ち上げたものであり、社会課題の当事者の状況を理解する力、すなわちエンパシーを育む場をつくることを目指して活動してきました。最初は駅前での青空教室から始まり、次第に開発した教育プログラムは、丸井グループ、阪急阪神百貨店、パナソニック、サントリーHD、セイコーエプソンなどの企業での研修として導入されていきました。

インドネシアにて。現地経営者ファミリーと
インドネシアにて。現地経営者ファミリーと

 

——中学生で起業を考えた原動力は、海外で身につけたものなのでしょうか?  

 

実は、自分としては、海外生活で自由な発想や行動力を身につけたとは考えていません。むしろ、ドイツの小学校に通っていた頃は、治安の面もあって、ほとんどひとりでは行動できませんでした。友達と遊ぶのも必ず親の送り迎えが必要……という感じで。それが、日本の中学校に通いはじめるとなんでも自由になったんです。自分の意思でクラブ活動も決められる、電車で放課後はどこにでも行ける。自分としては、日本に帰国したことで、自由を手に入れて、新しいことに挑戦できる環境を得られたのです。  

 

もちろん、日本に帰国した直後は、ちょっとしたカルチャーショックもありました。難民問題を目の前で見て来たこともあり、同世代の生徒が少し幼く見えたところもあります。ぜんぜん世界が見えてないなと……。そこで自然と高校生や大人と交流するようになり、「Sustainable Game」の立ち上げに至りました。  

 

 

——むしろドイツより日本のほうが自由だったと……。ドイツ時代はどのような学校に通っていましたか?  

 

小学校時代を過ごしたミュンヘンでは、ミュンヘン日本人国際学校に通いました。ここでは、ドイツ語が必修で、ドイツの州政府カリキュラムの学習もしていました。特にドイツ人の先生の授業では、自分の考えを表現することが重視されていて、小学生ながら第2次世界大戦について議論するような授業もありました。  

 

また、母親の紹介で出会った2人の日本人との出会いも私の人格形成に大きな影響を与えていると思います。ドイツには職人を保護する「マイスター制度」があるのですが、その人たちもマイスターだったのです。ひとりは、ジュエリー製作のマイスターで、私はその人のアトリエで、金属を使った工作を習っていました。もうひとりはミュンヘン大学で日本語を教えていた先生で、その人からは数学を教えてもらっていました。その先生とは、「算数がなぜ必要なのか」について哲学的な対話をしたりしていました。とにかく、ドイツにいた頃から、同世代の仲間より大人と交流する機会が多かったですね。中学生時代から高校生のコミュニティで活動していたのは、この影響も大きいかもしれません。  

 

ドイツという国は面白くて、バイオリニストやバレリーナ、彫刻家といったアーティストたちが職能として社会的にきちんと位置づけられ、公的な制度で保護されているんです。例えば、新しい建物をつくる際は、総工費の一部をアートに使うことが義務づけられている。これによってアーティストの収入が確保できます。ミュンヘンの街には、たくさんの会社員じゃない自由人たちが、イキイキと暮らしている。そのカルチャーから価値観の面で大きな影響を受けたと思います。  

12歳、ドイツにて
12歳、ドイツにて

 

——高校進学後、現在の会社を設立に至る経緯を教えてください。 

 

高校3年次に、自ら立ち上げた一般社団法人Sustainable Gameの事業承継をして、本格的に受験勉強をスタートしました。当初は国立大学を目指していましたが、コロナ禍で自分を見つめ直す時間を持つなかで、「何か違う」と考えて方針を見直し、現在の立命館アジア太平洋大学に入学しました。  

 

そして、入学前日に別府温泉で現在の共同創業者であるベトナム人留学生と偶然出会ったんです。そこで、彼が日本語検定未受験のため就職活動で苦戦していることを知りました。知識も豊富でITスキルも高い留学生が就職できない……そこで、この優秀な学生を正規雇用して、在留資格を取らせるために、18歳で現在の会社を設立したのです。その後、外国籍の人材の紹介事業などでビジネスを拡大し、現在に至ります。

 

会社を経営しながら、大学での勉強にも力を入れています。例えば、大学生になってから、経済産業省の派遣プログラムで2回のアメリカ留学を経験しました。1回目はDrapper Universityで2週間の起業家育成プログラムに参加しました。これは、長距離ランニングや見ず知らずの街で指定されたプロダクトを実際に売るきるなど、極限状態での課題に取り組むユニークなプログラムでした。2回目は、UC Berkeley Haas School of Businessでの短期MBAプログラムで、こちらでもスタートアップに関する最新の知見を得ることができました。  

高校時代に参加した、スタートアップを応援するピッチアワード「QWS STARTUP AWARD」
高校時代に参加した、スタートアップを応援するピッチアワード「QWS Challenge」

 

——山口さんの今後の目標について教えてください。  

 

会社の事業としては、日本における外国籍の人材の位置づけを「人手不足を補う労働力」から「成長ドライバー」へと転換させることを目指しています。外貨獲得や新しい視点の獲得など、彼らを成長ドライバーとして捉え、Win-Winのパートナー関係で活用できる企業を増やしたいと考えています。

 

ドイツで生活していた時代に移民・難民問題を目の前で見て来た経験がある者として、近年の日本の外国人対応には疑問を感じる点も多々あります。ドイツと同じ問題を日本で起こさないために、さまざまな環境で外国籍人材が能力を発揮できる社会モデルの構築を目指していきたい。NetflixやGoogleのような多様性を活かして世界的成功を収める企業の日本版を創出することが目標です! 

 

 

 

プロフィール
山口由人(やまぐち ゆうじん) 

2004年生まれ。約11年間、ドイツのフランクフルト、デュッセルドルフ、ミュンヘンでの生活を経験。日本に帰国後、15歳のときに一般社団法人Sustainable Gameを設立。計46社の企業と連携し、社会問題を解決したい若者と企業との共創プログラムの開発を支援した。その後、18歳で事業継承し、2023年4月に立命館アジア太平洋大学に進学。サステナビリティ観光学部1年次に大分県別府市で、株式会社Emunitasを創業した。現在は、学生を続けながら、外国籍人材の活躍の場を創出する事業に取り組んでいる。

株式会社Emunitas:https://emunitas.com