2019年6月からアメリカ・シアトル(ワシントン州)に暮らす北脇ファミリー。暁彦さん、恵理子さん、現地校と補習校に通う仁菜さん(10歳)の3人家族だ。海外赴任の打診を受けた恵理子さんと企業の法務部門で仕事をしていた暁彦さん、当時は保育園年長だった仁菜さん。暁彦さんが退職して恵理子さんの赴任に同行することを選んだ背景や、実際にアメリカで生活してみてそれぞれが感じていることなどを、一人ずつに、聞いてみた。
(取材・執筆Makiko)
「行きたい! やりたい!」に飛び込んで
■本日はお仕事の昼休み中にインタビューへのご協力ありがとうございます。シアトルに来られた経緯から教えてください。
恵理子:特に明確な希望を出していたわけではないので、突然の打診ではあったんです。でも、「行きたい! やりたい!」って思いました。娘は当時、私にべったりだったんですよ。だから娘は連れて行きたいと思いましたね。夫にはついてきてもらえたらラクでいいなとは思いましたけど(笑)、本人に選んでもらいました。
■アメリカに来て驚いたことはありますか?
恵理子:英語は自分では得意だと思っていたのに、来てみたら、聞き取れない、通じない、と大変でした。また、2019年に来たので、半年経った頃にコロナが流行し始めましたし、その後もブラックライブズマター(人種差別抗議運動)や大統領選があり、アメリカ全土が落ち着きをなくしていました。銃声が聞こえそうなほど近くで暴動が起きるなど、不安を覚えましたね。 でも、娘の現地校は学級閉鎖になった直後にパソコンが配られてオンライン授業が始まったんです。対応が速いと驚きました。補習校はコロナで半年間閉校してしまいました。
■アメリカで仕事をされる中で、発見したことはありますか?
恵理子:オープンなディスカッションをできるのがいいですね。私は忖度などが苦手なので、性に合っていて働きやすいです。また、子育てを通して、アメリカの学校が垣間見えるのが面白いです。子どもの頃から教室の中でディスカッションをすることが自然な環境だから、人がこう育ち、職場にもあらわれるのかなと、一連を繋げることで腹落ちすることがあります。
■今の生活では、家事や育児はどのように分担されていますか?
恵理子:私は今はもうほとんど家事はしていないです。料理をするのは好きなので週末はなるべくしていますけど……とにかく夫がほとんどしてくれていますね。アメリカ(西海岸)では時差の関係で、こちらの業務を終える頃に日本が始業します。ですので、夕方から電話やメールが入り始め、本社とのオンライン会議もあり、気分は1日2シフトです。 週末は娘と一緒にピアノを習ってリサイタルに向けて練習したり、日本の味を求めて娘とお菓子を作ったりしています。何かとチャレンジするのが好きなんですよ。
■子育てや教育について、仁菜さんをアメリカの現地校に通わせてみて、どうですか?
恵理子:渡米時、仁菜は保育園の年長でしたが、毎朝園の前で泣くような子でした。人見知りで、もちろん英語に触れたこともなくて。そんな子を英語の教室に置いてくるなんて、不安で不安で! でも、4年経った今は学校が大好きな子になり、放り込んで良かった、とほっとしています。アメリカの教育でいいなと思った事の一つは、毎年、自分についてのポスターを作ることです。「自分って、何?」って。自分の個性をプレゼンテーションすることが教育の中で大事にされている、と。娘にはここでの経験をいつか人のために役立ててもらえたら、色々と壁を乗り越えてきた甲斐もあるかなと思いますね。
■次は仁菜さんにお話を聞きます。何をしている時間が好きか教えてください。
仁菜:絵を描いている時間が好き。家で好きなときに動物の絵を描いています。
■現地校と補習校に通われていますが、学校の好きなところや苦手なことを教えてください。
仁菜:現地校の算数は、コンピューターを使って勉強を進めるのが楽しい。お父さんが作ってくれるお弁当を持って通っています。現地校の宿題は簡単だし少ないけど、補習校は問題が分かりにくいし、同じことを繰り返す宿題が多すぎですー。
■10年後はどんなことをしていたいですか?
仁菜:20歳……最近、現地校で宇宙の勉強をしたから、宇宙に行きたい気がする。
■今悩んでいることや困っていることはありますか?
仁菜:悩みも困っていることも全然ありません! 現地校には自分しか日本人がいないけど、別に大丈夫です。
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