生まれてから約13年間をサンディエゴで過ごしたマコ。現地校とサンディエゴ補習授業校みなと学園に通いながら、日本とアメリカの文化や言語に触れて育った。しかし、コロナ禍によりさまざまな制限のある生活を余儀なくされた。そして2023年、日本への帰国が決まり、マコにとって初めての日本での生活がスタートするが、新しい環境への適応に戸惑うこととなる。帰国後から現在までの生活、そして改めて感じる両国での生活を通して得たものについて、マコと母ハルミに話を聞いた。
(取材・執筆:武藤美稀)
コロナ禍が及ぼした生活への影響
「コロナ禍の隔離期間中は外でのアクティビティがなくなり、家の中で過ごす時間が増えたので、英語の本をよく読んでいました。また、現地校の友達数人で分担して小説を英語で書き、たまにオンラインで集まって書いた小説を見せ合うという遊びをしていました。コロナ禍だったからこそできた遊びかもしれませんね」(マコ)
1年半の隔離期間中、現地校、みなと学園、そしてピアノのレッスンも、すべてオンラインとなったため、家族の絆は深まったものの友達との交流の機会が大幅に減った。しかし、コロナ禍が明けた後も、現地校やみなと学園の友達は変わらずに接してくれたことがマコにとって大きな支えとなった。


「コロナ禍に郊外へ引っ越したので、コロナ禍が明けた後は、毎朝通勤ラッシュの中45分ほどかけて娘を学校に送っていました。車内で日本の音楽を聴いたり、最近の出来事を話したりしていた時間は、今となってはとてもいい思い出です。当時は大変でしたが、あの頃の何気ない出来事が幸せだったのだと、娘たちが大きくなり、一緒にいる時間がどんどん減っていく今になって気付かされています」(ハルミ)
コロナ禍になかった時は、家族旅行でグランドキャニオンやメキシコに行ったり、日本から遊びに来たハルミの両親を連れてラスベガスを訪れたりした。アメリカは場所によって全く異なる特色があるため、マコたちにさまざまな経験をさせることができたという。

マコにとって初めての日本生活が始まる
2023年12月に日本へ帰国した一家は、千葉に移住した。マコは2カ月間ほど公立の中学校に通いながら、私立中高一貫校の市川学園市川中学校に編入するための受験勉強を進めていた。しかし、初めての日本での学校生活に、マコは戸惑った。
「なかなか学校に馴染めず、自分をうまく表現できなくて、少し辛い時期でした。海外経験を持つ生徒が少ない学校だったため、私が周りの子たちにどう接すればいいのかわからなかったのだと思います。ただ、1学年上にいた東南アジア系の子と仲良くなり、一緒に帰ったりしていました。その子といる時間は英語を話すことができ、とても楽しかったです」(マコ)
その後、無事に編入試験に合格し、2024年4月から中学2年生として市川学園に通い始めた。進学校ということもあり、当初は授業のスピードや生徒たちの学習レベルの高さに驚き、周囲と自分を比べて落ち込むこともあった。しかし、問題にぶつかるたびに自分自身を見つめ直し、改善策を見つけることができたという。
一方、学校生活にはすぐに馴染むことができた。市川学園は海外経験を持つ生徒を積極的に受け入れている学校で、マコの学年は1学年320人のうち20人が帰国生であり、8クラスのうち2クラスにそれぞれ10人ずつ振り分けられている。
「帰国生がいるクラスには、同じようなバックグラウンドを持つ生徒が集まっているため、英語で話すことができ、すぐに自分の居場所を見つけることができました。授業についていくのは大変ですが、今は楽しく学校生活を送っています」(マコ)
編入先の学校ではさまざまなイベントや大会にも参加
マコは持ち前の行動力を武器に活動の幅を広げていく。
中学校3年時には、友人の誘いをきっかけに、世界の中高生が総合的な教養を競う大会「The World Scholar’s Cup(略称:WSC)」に参加した。この大会は3人1組のチーム戦で、ディベートやライティング、テーマに基づく問題などの競技がすべて英語で行われる。約700人が参加する国内大会で上位20%に入ると、世界大会に出場できる。
「大会に向けて、夏休みも使って勉強会やディベートの練習をしたり、さらに出場経験のある先輩たちに指導してもらったりと、まるで部活のような日々でした。そして、私たちのチームは世界大会に出場。これまで培ってきた知識や技術を使い、努力が報われたことを実感しました。世界大会で訪れたマレーシアでは、主催側が用意するツアーに参加し、世界各国から集まった同世代の子たちと交流を深め、とても充実した時間を過ごしました」(マコ)

このほか、合唱コンクールでピアノ伴奏を担当したり、文化祭の劇に出演したりと、積極的に学校の活動に参加した。勉強以外の面でも一生懸命取り組めることがあるので、このような学校に編入できて本当によかったとマコは話す。
アメリカと日本、2つの国での経験を振り返る
高校卒業後は、アメリカの大学で学ぶことも考えているマコ。現在はAIとテクノロジーに興味を持ち、特に「AIが人にどのような影響を及ぼすのか」や「人としてのアイデンティティをAIからどのように守っていくのか」といったテーマに関する記事をよく読んでいるという。
「将来はAIに関する仕事に就けたらうれしいです。中学校3年時の公民の論文では、AIチャットボットの影響で自殺してしまった人の事例を取り上げ、これから人々をどのように守っていくべきかを考えました。最近は、“AIの悪用から人を守る弁護士”が存在したらおもしろいだろうなと考えたりしています」(マコ)

最後に、アメリカと日本で学校生活を経験したマコと、海外で初めての子育てと新しい仕事に挑戦したハルミに、海外に住む家族や帰国生に向けてメッセージをもらった。
「私が暮らしていたアメリカには、スポーツや芸術、クリエイティビティなど勉強以外の分野で、自分の好きなことに対して高く評価してくれる大人が多くいました。場所は関係なく、好きなことや新しいことにどんどん挑戦してほしいです。また、自分のそうした趣味を前面に出していると、共通の興味を持つ人が集まりやすく、居場所もできやすくなると思います。がんばってください!」(マコ)
「まずは、人とのつながりを大切にしてほしいです。私は英語のクラスの先生と今でも連絡を取り合っていたり、アメリカで知り合った日米の友達とは頻繁に会ったりしています。彼らには本当に多くのことを教えてもらいました。自分の人生に影響を与えてくれる、そうした出会いがたくさん待っていると思います。
滞在中は、今まで見たこともなかった景色に出合ったり、新しい考え方に触れたりと、発見の連続です。悩みも尽きませんが、後になって振り返ればすべてが笑い話になります。行き先々で出会う人とのつながりを大切に、ご家族で貴重な時間を過ごしてほしいです」(ハルミ)






