教員の母の転勤をきっかけに、小学生の3年間を台湾・高雄で過ごしたメグカ。現地での生活は、彼女に人格を形成する上で大きな影響を与えた。現在、美術学部建築科4年生のメグカは、卒業制作として地元の町をテーマに学校建築の模型を設計。海外での学びや挑戦を通じて、教育と建築をつなぐ独自の視点を育むメグカに、将来の目標を聞いた。(仮名)
(取材・執筆:武藤美稀)
大学の卒業制作では学校模型を設計
「大学3年時のカリキュラムのひとつに、小学校を設計する課題がありました。そして、設計事務所『象設計集団』が手がけた埼玉県の笠原小学校を見学する機会があったんです。この学校は、生徒たちが裸足で生活する教育を実践しており、教室から直接外に出られる構造になっています。この建築を見たとき、台湾の学校も外廊下が基本で、子どもたちが外に出やすい造りになっていたことに気づきました。この経験を通して、建築的な観点から台湾の学校を理解し、教育と建築の結びつきをより深く実感するきっかけとなりました」
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卒業制作では、メグカの地元の町をテーマに、人口減少により存続が危ぶまれている県立高校と町立小・中学校が合併することを想定した学校の建築模型を設計した。それだけでなく、これまで教育について考えてきたことや福祉的な視点なども盛り込むことを意識したという。
「これまでに訪れた学校や海外の学校建築を参考にしながら、自由な発想で設計することができました。斜めの梁を使って教室の形を工夫し、机の向きを通常とは変えたり、異学年と交わりやすい廊下の在り方をつくるなど、従来の空間の在り方を少し変えるだけで教育の可能性を広げられるのではないかと思いました」
大学の後輩の協力を得ながら、学校模型は約4カ月間かけて制作された。卒業制作の展示会では、これまで知り合った人たちに声をかけ、母も教育関係者らを招待したことで、約80人がメグカの模型を見に訪れた。来場者は模型の説明に熱心に耳を傾け、これはメグカにとって大きな経験になったという。
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より広い世界に関心を持つようになった
台湾での生活を経験し、もっと外の世界を見てみたいという思いが強くなったメグカ。これまでに培ったコミュニケーションスキルを武器に、日本の外へと飛び出していくこととなる。 大学3年時には、フィンランドの教育現場を見学するツアーに参加し、現地の小学校から大学までの各施設を視察した。フィンランドの学校建築に関心があったのだという。
「フィンランドでは、子どもたちを寒さに慣れさせるため、休み時間になると外で遊ばせる習慣があります。そのため、スキーで着るようなジャンプスーツなどの防寒具を吊るす専用ロッカーが廊下に設けられていて、雪国ならではだと思いました。また、少人数制のクラスを採用しており、教室が広々しているのも印象的でした」
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大学ではケルト音楽サークルに参加し、3人組のバンドを結成。メグカはブズーキという弦楽器を担当し、2025年8月にはアイルランドで開催されたコンペティションにも出場した。海外への挑戦は、英語への恐怖心を少しずつ減らす機会になったとも言う。
「台湾の日本人学校では、出入りが激しいからこそ、さまざまな年齢の人との関わりや、人の名前をすぐ覚えて話しかけることを心がけていました。今では同期から『巻き込ミュニケーション』と呼ばれるほど(笑)。積極的なコミュニケーション力を身につけられたと思います。台湾での生活があったおかげで、周りとは違った意見を持つ人や、異文化で育った人への親近感も芽生えました。帰国してからも、外国人が困っているのを見かけたら積極的に話しかけるようになりました。英語は片言でもなんとかなる、と旅先で気づき、まずは伝われば十分だと思えるようにもなりました」
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学校建築と教育をつなぐ挑戦
メグカは大学卒業後、ゼネコンに就職し、設計の仕事に就く予定だ。どんな建物の設計に関わるかは配属先によって決まるが、将来的には学校建築に携わりたいと話している。
「卒業制作を通して、学校建築のおもしろさを再確認できました。現在、多くの学校が建てられて60年以上が経過し、建て替えブームの中にあります。新しく校舎を建てる際には、建築が教育にどう影響するかなど、学校の在り方を含めて建築する側が模索する必要があります。大学時代に得た経験やスキルを活かし、より良い教育現場づくりに貢献したいと思います。また、教員免許も取得しているので、将来的には、自分で設計した学校で教員として働けたらいいなと思っています」
最後にメグカは、台湾での経験についてこう話した。
「日本での生活にもし生きづらさを感じたら、海外に行くなど環境を変えるという選択肢があることを知れたのは大きかったです。将来自分にも家族ができたとき、海外に住めたらいいなと思います。定期的に海外に行くことで、日本をより深く理解し、もっと好きになれるとも感じています」






