ChatGPTに代表される「生成AI」の登場により、ますますAI・プログラミング教育に注目が集まっています。2022年度から高校では、共通必履修科目「情報Ⅰ」もスタートし、すべての生徒がプログラミングを学ぶ時代に突入しました。子どもたちの将来のために、どの時期からどのレベルのIT教育を受けさせるべきなのでしょうか。今回は、日本の小・中学生・高校生向けAI・プログラミング教育最新事情の後編になります。
(取材・執筆:ミニマル、Key visual:metamorworks / PIXTA)
中学・高校の教員も関心を寄せる「生成AI時代の人材育成」
2022年度から、新しい高等学校学習指導要領に基づき、高等学校情報科においては共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設されました。これにより、すべての生徒がプログラミングやネットワーク、データベースの基礎などについて学習することになります。
さらに、2023年7月には、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表。ChatGPTに代表される生成AIの小・中学校・高校における取り扱いのガイドラインを暫定的に示したもので、読書感想文や各種レポートの提出において、生成AIによる生成物をそのまま自らの作品として提出することは適切でないなどの指針が具体的に示されました。
そこで、対応を求められるのが全国の学校現場です。全国の小・中学校・高校では、AIをどのように活用していく方針なのでしょうか——。
文部科学省のガイドライン発表に先立つ7月1日(土)、東京都品川区にある品川女子学院では、「AIと教育」に関する教員向けの研修が行われました。講師として登壇したのは、東京大学大学院工学系研究科/人工物工学研究センターの松尾豊教授。日本におけるAI研究の第一人者です。
松尾教授は講演で、機械学習やディープラーニング(深層学習)など最新のAIを支える基盤技術の解説、教育現場においてAIが代替できる領域の提案に加え、「生成AI時代の人材育成」について、こう語りました。
「コミュニケーション力、歴史・思想・価値観などの教養、数理的な科目の理解など、歴史的にずっと重要だったものは、今後も重要であり続ける可能性が高いでしょう」
これからの世代にとって、AIやプログラミングに関する知識をアップデートする必要性があるのは大前提。その上で、人間としてAIと向き合うために必要な普遍的な知識とは何か? という本質的な問いかけがここにあるような印象を受けました。
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