【ロサンゼルス在住 岩井英津子さんによる現地の学校や生活を紹介するコラム】
9月中秋の名月のころ、秋の香りが漂い始めた日。
ダウンタウンから北へ10マイルほどの都市、バーバンク(Burbank)に出かけました。人口10万人程度で映画・娯楽産業で有名なこの街。その閑静な住宅街にあるJohn Muir 中学校にて、「Japan Day」が開催されました。同校は、6年生から8年生まで、1300人強が在籍する規模の大きな中学校で、学習グレードは、カリフォルニア州内でもハイレベルにランクされています。
「Japan Day」というこの一大イベントは、今年で11回目。このJohn Muir中学校は、日本の最北端にある礼文島の礼文高校との姉妹校提携を2019年に結びました。その一環で、礼文高校の生徒がホームステイしながらJohn Muir 中学校を訪問し、このJapan Dayを盛り上げます。この姉妹校提携には、在米のオーロラ財団の元理事長が北海道出身だったことから、礼文高校の高校生10数名を毎年短期ホームステイさせるなどの交流を持って7年越しの尽力ののち実現したものです。
今年度のイベント・ディレクターは、テッド・デバージリス(Ted De Virgilis)先生。6年生担任であり、数学と日本文化の授業を持っています。テッド先生は、茨城県へALTとして日本に派遣されていた経験があり、かなりの日本通です。
同校の校長であるグレッグ・ミラー(Greg Miller)博士は、ロサンゼルスにある日本企業団体主催によるプログラムで、日本へ招聘されたことがあり、引退後は日本で過ごしたいと思うほど大の親日家です。
南カリフォルニアでは、小学校でも中学校でも「International Day」という各国を紹介する日を設定することが多いですが、同校はもともと日本への関心が高い先生方もいらっしゃるためか、「Japan Day」ほど大規模で、Burbank市の公的団体も協力するほどのイベントを行う学校はありません。
さて、学校の中に入ると、生徒達は教室間を慌ただしく移動していますが、私と目が合い日本人と認めるやいなや「Konnichiwa!」と元気よく挨拶してくれます。私も笑顔で「こんにちは!」と返します。Dodgers のShohei Otaniが快挙をなした日の翌日でもあり、背番号17番Dodgersユニフォームを着用していた教職員が何人もいたことも嬉しいですね。
今回の「Japan Day」では、日本から石の彫刻家として知られる浅賀正治氏を迎えて、John Muir 中学校に記念モニュメントが作成されました。その資金は、Burbank Art & Education FundやJohn Muir Fundraising Committeeが支援しています。
在ロサンゼルス日本国総領事館からは、曽根麻未総領事令夫人が来校され、500人のJohn Muir の生徒達に、日本についての講話がありました。メインは、災害からの復興や世界からの支援がトピックでしたが、中学校教員経験のある麻未令夫人のお話に秘められた気持ちには、中学から高校にかけて地元以外の学校を選ぶ人の中には、「現況から逃げ出す」という気持ちを持つ生徒もいるかもしれない、そのような生徒のためにエールを送る示唆もあったということです。
最後は、礼文高校の生徒10数人がひとりずつ自己紹介。英語で名前とアメリカで好きなものを披露しますが、そのなかで「I like a hamburger!!」と叫ぶと、大歓声で大盛り上がり。まるで人気アイドルのコンサート会場のようです。
最後は、礼文高校生徒達による『よさこいソーラン』を舞台上で元気よく披露すると、会場の皆がノリノリで一体化しました。
Japan Dayの終了として、会場から生徒が教室に戻るときには、笑顔で日米の生徒達はハイファイブ!
このJapan Dayを通して、John Muir の生徒達は、日本や日本文化に対して、理解と親しみを持ちました。毎年行われる「Japan Day」は上級学年になるに従い、さらに日本と日本文化が彼らの中で根付いたものになるでしょう。
来年のJohn Muir中学校の修学旅行では、礼文島を訪れる旅程になっているとのことですので、もっと日本と礼文島が近くなります。
人種のるつぼと言われるロサンゼルスにあって、このように学校での異文化交流は、各国の生きた文化を知るためにはとても大きな国際交流になっています。
岩井英津子(いわいえつこ)
教育アドバイザー。アメリカロサンゼルス在住40余年。商社の女性駐在員として渡米。退社後、永住権取得。補習校の教員として小学校中学校の指導歴20年、学校管理職10年および専務理事として補習校経営10年、在外子女教育に従事。