雲南日本補習授業校 所在地：中華人民共和国 E-mail：mitsuru@metwhich.com 児童生徒数：中＝1人 日本語学級＝3人
観光とビジネスの街
中国の西南部に位置する雲南省は、大理・麗江・シャングリラなど有名な観光地があるのと同時に、茶やたばこ、コーヒー、きのこの一大生産地としても知られています。また近年では中国ラオス鉄道が開通するなど、東南アジアとつなぐ経由地としての存在感も高めています。
省都である昆明市は、南方にあるにもかかわらず標高1900メートルの高原に位置することから、年間を通じて過ごしやすく、「春城（春のまち）」と呼ばれています。そのため、北京や上海などの大都市に住む人々の避暑地や、リタイアした高齢者たちの定住地になっています。
その結果、昆明はビジネス客や観光客が頻繁に往来する、中国の中で最も活気のある街のひとつとなりました。その反面、2000年代初頭をピークに昆明に住む日本人は減少しており、本校で学ぶ子供たちの数も減り続けています。
わが校の特色
本校では、現地校やインターナショナルスクールに通学する日本国籍を有する子供たちが、日本国内で生活する際にスムーズに適応できるよう、日本語の基礎を学ぶカリキュラムを組んでいます。
本校の前身は、（雲南省の日本企業および日本人で構成される）雲南日本商工会が中心となって運営する日本語補習校でした。当時の昆明市には、今より日本国籍の子供が多く、彼らは現地校やインターナショナルスクールに通学しており、授業では英語か中国語が使われていました。このままでは日本語や日本文化の接触が減り、日本人としてのアイデンティティが失われてしまうことを父母たちは危惧していました。
2011年、在重慶日本国総領事館の後押しもあったことから、父母たちの声に応え、雲南日本商工会および有志が日本語補習校を開設。2018年度からは政府支援も得られ、現在に至ります。
さて、本校は生徒数が少ないため、子供たちそれぞれの日本語力や日本文化理解度に合わせ、マンツーマンの授業を行っています。
授業は毎週土曜日の午後、子供それぞれに1時間ずつ行います。基本的にイスとテーブル、ホワイトボードがあれば授業ができるため、市中心地のやや外れにあるマンションの一室を間借りして校舎としています。
本来ならば、日本の学校カリキュラムに沿った教学が求められるべきですが、それ以前の段階、つまり「あいうえお」から始めなければならない子供たちがほとんどのため、『みんなの日本語』（スリーエーネットワーク）を主教材としながら、適宜、日本の教科書を活用することで、日本の学校の雰囲気を子供たちに伝えるようにしています。
日本文化の体験学習としては、ひな祭りやこどもの日、お盆、正月などに、それぞれの風習を体験してもらったり、日本のアニメを見せたりすることで日本人の振る舞いや作法などを伝えています。
また、時に父母を交えて食事会を行うことで日本人としての絆を深めると同時に、海外に住む日本人の親と子供が持つ不安感の低減に努めています。
本校は、前身から数えれば10年以上の歴史があり、すでに大学生となった卒業生も。なかにはアメリカの大学で学ぶ子も数名います。彼らは元々日本語よりもむしろ英語のほうがネイティブであり、日本語を忘れやすい環境にありました。そんな卒業生のひとりが先日、「当地で日本人に出会ったときに日本語でコミュニケーションが取れた。日本語で話すことで友達としての絆が深まった。補習授業校で日本語を勉強して本当によかった」と、本校を思い出してくれました。
本校の取り組みは、子供たちに対するそんなささやかな貢献でしかありません。しかし、その積み重ねが日本の未来にとっての一助にもなると考え、日々教学に勤しんでいます。
（2023年9月現在）
こどもたちから
【最近考える3つの事】
- 肉のこと。ぼくはよくおなかがすくから、肉のことを考える。（7歳）
- ダイヤのこと。いつもピカピカして、とても高いから。（7歳）
- パパのこと。ずうっと香港にいて、昆明にいないから。（7歳）
- 頑張って学校の成績をもっと上げること。（13歳）
- 趣味の工芸がもっとうまくなること。（13歳）
- 父のこと。上海に長く赴任することになったから。（13歳）
- どうすればテストの点数が上がるか。（15歳）
- 中国の特色ある社会主義と資本主義の本質的な違い。（15歳）
- 儒教の教えは正しいのか。（15歳）
