近年の大学入試は多様化しています。私立大の入学者がどのような入試方式を経てきたのかを見ると、一般選抜4割に対し、総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせると6割に上ります。国公立大は一般選抜の割合が高いですが、これからは、総合型選抜や学校推薦型選抜の割合を増やすとしています。
総合型選抜や学校推薦型選抜は志願者が増加傾向ですが、学部や大学の人気を見るには、一般選抜の状況が分かりやすい指標となります。ここでは、一般選抜の入試状況から、大学入試全体の動きを検証していきましょう。
(執筆:株式会社大学通信)
現役生中心の傾向が強まる大学入学共通テスト
国公立大志望者だけではなく、私立大志望者にとっても大切な大学入学共通テスト(以下、共通テスト)について見ていきましょう。3年目を迎えた2023年度の共通テストの志願者は51万2581人でした。22年度を1万7786人下回る3.4%の減少となり、大学入試センター試験(以下、センター試験)時代から5年連続の減少です。現役生は43万6873人。現役志願率は過去最高に並ぶ45.1%でしたが、18歳人口が減少している分2.8%減となりました。一方、浪人生は7万1642人で6.7%減。現役生を上回る減少幅となっています。この結果、全志願者に対する現役生の割合は前年を0.5ポイント上回る85.2%となり、現役生中心の入試が進んでいることを強く印象付ける結果となりました。
共通テストの傾向について触れておきましょう。共通テストは、21年度の大学入試改革の柱として、センター試験に代わって導入されました。大学入試改革によりセンター試験は、これまでより「思考力・判断力」を重視した共通テストに代わったのです。思考力を問うために、当初予定されていた国語と数学の記述式が見送られ、これまでと同じマークシート方式のみです。センター試験と変わらない形式ですが、教科横断型の知識が求められる方向に出題形式が変更され、「思考力・判断力」が問われる試験になっているのです。
出題の傾向が変わったこともあり共通テストの平均点は安定せず、毎年、アップダウンを繰り返しています。共通テストはセンター試験より難易度が高くなると見られていましたが、初回の5教科7(8)科目の平均点は、前年のセンター試験を上回りました。その反動で22年度は数学が大幅に難化したことから、5教科7(8)科目の平均点が大幅に下がりました。数学の平均点が下がったのは、問題が長文化されたことから問題を読み解く読解力・思考力と数学の力が求められるようになったからです。23年度は数学の平均点が回復し、日本史Bや地理Bなどの平均点が上がったこともあり、5教科7(8)科目の平均点は前年を上回りました。