厚生労働省職業安定局のデータによると日本で働く外国人労働者の数は、2016年に100万人を超え、2020年には172万人に達しています。東京は今、ニューヨークやロンドンと同様に、多国籍タウンとなりつつあります。特に目にするのがアジア系の人々。そして現在、彼らの子どもたちが通うアジア系インターナショナルスクールに注目が集まっています。都内にあるインド系・ネパール系の2校を取材しました。
(取材・執筆:ミニマル)
東京のリトル・インディアにあるインターナショナルスクール
東京都江戸川区の東京メトロ「西葛西」駅周辺は、東京のリトル・インディアと呼ばれるほど、数多くの在日インド人の人々が暮らしています。2000年代から、この地にインド人IT技術者たちが集まるようになり、日本を代表するインド人コミュニティができ上がりました。官公庁や大手企業が集まる大手町周辺まで通いやすく、家賃も手頃な西葛西周辺は、都合がよかったようです。
この地に2006年に開校したのが、インド系インターナショナルスクールのGlobal Indian International School(GIIS)です。アジア諸国で海外勤務するインド人ファミリーのニーズを受け、2002年にシンガポールに最初のキャンパスを開設したGIISは、日本、韓国、フィリピン、UAE(アラブ首長国連邦)、シンガポール、マレーシアなど世界11カ国64校を展開するまでに規模を拡大しています。現在、総生徒数は4万5000名、教員も5000名を超えるといいます。
取材で訪れた西葛西キャンパスのエントランスには、故マハトマ・ガンジーの銅像がお出迎えしてくれます。同校では、マハトマ・ガンジーの「真理探究」「非暴力・不服従」といった価値観と信念を生徒たちに浸透させるための積極的な取り組みを行っています。詳しくは、GIISのWebサイト(下記)で確認できます。
「2006年に西葛西キャンパスを開設したとき、50名だった生徒は、現在1250名まで増えました。キャンパスも拡大し、現在はさらに東葛西、北葛西、清新町と、江戸川区に4つのキャンパスを展開しています。さらに、2023年には大阪市生野区にキャンパスを開設し、2024年には茨城県つくば市にもキャンパスをオープンする予定です。もともと生徒の90%は、インド人子女でしたが、2021年くらいから日本人の子どもたちが過半数を占めるようになり、現在は幼稚園児の60~70%は日本人という状況です。
そう語るのは、GSF日本支部・韓国支部取締役のミシュラ・スミットさん。西葛西キャンパスには、日本人、インド人のほか、20以上の国籍の生徒が集まり、英語でコミュニケーションを取りながら学んでいます。西葛西キャンパスの教室をのぞいてみると規律の厳しい日本の小学校より、いくぶんリラックスした雰囲気。図書館、実験室、コンピュータ室、体育館などもしっかり完備されていて、最新の学びの環境が整っています。
国際バカロレアのカリキュラムも提供
GIISは、東京都内にある欧米スタイルのインターナショナルスクールと同様に、国際的に認められたカリキュラムを提供している点が特長です。家族と一緒に子どもたちの将来像に合わせたコースを選ぶことができます。
「GIISには、大きく分けて、主にインド人子女に向けたコースと日本人を含む外国人子女に向けたコースがあります。キャンパスごとにカリキュラムの特色があるので、日本人のファミリーは子どもの適性に合わせて、キャンパスを選んでいます」
まず清新町キャンパスでは、3歳以上、小学生未満の幼児を対象に、GMP(グローバル・モンテッソーリ・プラス)プログラムが提供されています。子どもの自主性を伸ばす教育法として知られる「モンテッソーリ教育」をベースにしたカリキュラムで学ぶことができます。
清新町キャンパスから西葛西キャンパスの小学校課程に進学する子どもたちは、インド中央中等教育委員会(CBSE)のカリキュラムで授業を受け、そのまま中学校、高校まで進むことになります。西葛西キャンパスは、インドの教育方針に沿った授業が提供されるということで、インド人の子どもたちがメインで通っています。今回取材した西葛西キャンパスの教室が、「インド系が多い」という印象だったのは、そんな理由があったのでした。
「もちろん、インド式の教育に興味があれば、日本人の子どもたちも通うことができます。授業はすべて英語で進められます。インド式の高度なSTEM教育※も受けられます。CBSEのカリキュラムは、世界的にも評価が高く、海外の一流大学への進学準備にも役立ちます」
※STEM教育=Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)に力を入れる教育を指す。
一方、500人以上の生徒が通う東葛西キャンパス、2023年4月にオープンした新しい北葛西キャンパスでは、IBDP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)など、欧米系のインターナショナルスクールと同様のカリキュラムで学ぶことができます。
「東葛西と北葛西のキャンパスでは、さまざまな国際カリキュラムを提供しています。Grade 1~5はIB PYP(国際バカロレア・プライマリー・イヤー・プログラム)、Grade 6~10はCLSP(ケンブリッジ・ロウアー・セカンダリー・プログラム)、Grade11~12はIBDPなどを選択できます。キャンパスツアーに参加してもらえれば、随時詳しい説明が可能です」
ご存じの通り、Grade 1~5は小学校1~5年、Grade 6~10は小学校6年~高校1年、Grade 11~12は高校2~3年となります。英語力を含めた子どもの習熟度に合わせて、プログラムを選べるのが特長といえるでしょう。小学校入学時に英語力に不安のある生徒には、英会話の特別なコースも用意されているといいます。各プログラムに関する詳細は、GIISの公式Webサイトを参考に。
授業料がリーズナブルなのも人気の理由
「GIISの卒業生の約60%は日本のグローバル系大学に進学します。そして、30%はアメリカ、イギリス、オーストラリアなど欧米の大学に進学。残り10%程度がインドの大学進学になります。現在、高校卒業時のインド人の割合は30%程度で、その多くが日本の大学に進学しています」
スミットさん曰く、キャンパスの雰囲気はどこも「Free & Happy」とのこと。日本の学校ほど規律が厳しくないようで、そこは自由と自主性を重んじる欧米型のインターナショナルスクールに風土が近いかもしれません。授業もディスカッションベースで進むことが多く、卒業するまでに英語を使って発信する力が存分に鍛えられます。
GIISは、アジア圏の数多くの系列校があるので、保護者の海外駐在に合わせて、日本からソウル、シンガポール、クアラルンプールなどの系列校に転校した生徒の事例もあるといいます。また、世界11カ国にあるGIIS系列校に短期留学することも可能です。これは、グローバルネットワークを持つGIISならではの強みといえるでしょう。
「欧米系のインターナショナルスクールに比べて、授業料がリーズナブルなのもGIISの魅力だと思います。それが理由で3歳くらいから通っている日本人の生徒もたくさんいます。英語が苦手な場合は、英会話のレッスンを受けながら通うこともできます。保護者向けの英会話やヨガ教室もあり、とても好評です。GIISで、英語、STEM教育、ロボティクスなどを交えた先進的な授業を受けながら、グローバルなスキルを伸ばしてほしいと思います」
Global Indian International School
https://ja.tokyo.globalindianschool.org
※授業料は1ターム(4か月)30万円程度~(初回申請料別)。
詳しくは、以下をご覧ください。
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