欧州で日本語を第一言語とする生徒を支援 ブリュッセルインターナショナルスクール IB DP Japanese A教師 石田まり子さん
ベルギーのブリュッセルインターナショナルスクール(The International School of Brussels)で勤務する石田まり子先生。異国の地ベルギーで、英語もままならない状態でインターナショナルスクールの高校教師となり、いつの間にか20余年が過ぎた。現在は学校の枠を超え、ヨーロッパ各地で学ぶ日本人の家庭から教育に関する相談を受ける教育コンサルタントの役割も担う。そんな石田先生が見ている海外における日本語での教育の現状と課題とは?
「例えば、小学校6年生向けの母語支援の授業では、『子どもの権利条約(Declaration of the Rights of the Child)』に関する記事を日本語と英語で読みます。人権とは何かについて、日本語で考えた上で、英語で使われる単語も理解していく。海外滞在年数が長い生徒はこの逆のパターンで理解することもあります。それは別に問題ではありません。なぜそのような言葉を使うのかという点にまで目を向けられるようになるには時間がかかります。家庭での親との対話によって母語の語彙を蓄積しながら、子どもたちは世界を理解していきます。この流れが大切なのです。教え子でイギリスの大学に通った学生が大学の授業や日常のやりとりで、『あなたの国はどうなの?』と聞かれる機会が多かったそうです。そんな場面で、日本語の文献で日本の文化や慣習について調べて、まわりの友達が知らないような情報をシェアできれば、信頼を得ることができますし、より深い議論ができます。その生徒は『もっと日本のことを知るべきだとイギリスで思い知った』と言っていました。」
神戸大学教育学部卒業、同大学大学院人文学研究科博士課程修了、博士(学術)。公立小学校、私立中学校、私立高校の教諭勤務後、現在ブリュッセルインターナショナルスクール勤務。IBDP Japanese A、SSSTの教師。欧州教育カウンセラー、多文化間精神アドバイザー、心理検査士。多文化間精神医学会、近代文學研究会、新フェミニズム研究会、労働社会学会、国際バカロレア学会、母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会、世界文学学会、福永武彦研究会に所属。共著『現代女性文学論』、共著『「探究」と「概念」で学びが変わる! 中学校・高等学校国語科 国際バカロレアの授業づくり』(明治図書)、共著『国際バカロレアにおける「言語と文学」「文学」の授業から国語科のあり方を考え直す;公開講座ブックレット(12)』(全国大学国語教育学会)、論文「ベルギー日系製造業経営システムの事例研究」(『労働社会学研究』4)、論文「福永武彦と時間:「河」における象徴に焦点を当てて」(『福永武彦研究』18)がある。連絡先:mariko.ishida.eu[AT」gmail.com