ファシリテーター研修を覗いてみた
今年3回目を迎えるJOES Davos Next。その基調講演と並んで重要なイベントが、Part2のグループワークです。6人程度のグループになった小5から中3の子どもたちがオンラインでつながり、ディスカッション等の共同作業を通じて、地球規模の課題に取り組みます。JOES Davos Nextを特徴づける大切な学びの場です。
そのグループワークを支えるファシリテーターの研修会の様子を覗いてみました。
(取材・執筆:只木良枝)
海外生活経験を持つファシリテーターが結集
過去2回のJOES Davos Nextでは、まず基調講演と質疑応答をライブ配信し、その後に合計4回のグループディスカッションを実施してきましたが、今年は順序が少し変わります。
12月13日に、基調講演のオンデマンド配信が開始されました。今年のテーマは「宇宙」、講師は宇宙飛行士の山崎直子さんです。
基調講演が配信ということは一方通行? そんなことは、もちろんありません。
年明けの2月初旬に、山崎直子さんを迎えたQ&Aの時間が用意されています。Q&Aはライブ配信ですが、地球のどこからでも視聴できるようにオンデマンド配信もあります。
そして、グループディスカッションの第1回と第2回は、基調講演配信開始からQ&Aまでの間に設定されています。つまり、基調講演を視聴した後にグループの仲間たちと感想を共有、その中で生まれた質問事項を山崎さんへ送ることができるのです。Q&A当日は、こうして寄せられた質問をもとに進行することになっています。
それを受けて第3回でさらにディスカッション、最終回には、恒例になっている「成果発表動画」を各グループで撮影する予定です。
この子どもたちのグループワークを支えるファシリテーターには、今年も国内外からたくさんの応募いただきました。その多くが海外在住経験者、あるいは留学中の高校生、大学生たち。参加者の子どもたちから見ると、ほんの少し年上の「お兄さん」「お姉さん」たちです。
今年は高校生の割合がぐっと増え、半数を超えました。中には、2年、3年連続、あるいは去年までは参加者で高校生になった今年はファシリテーターとして、というケースもありました。
参加者が自由に発言し、学べる場づくりを担う重要な役割に、どのように取り組めばよいのか——。11月に行われたファシリテーター研修会の様子を覗いてみました。
活発な研修風景
11月17日、東京・虎ノ門の海外子女教育振興財団会議室に集まったファシリテーターは7名、そしてオンラインから20名が参加しました。講師は、JOES Davos Next運営委員もつとめるフリーキャスターの桑原りささんと、大阪教育大学特任准教授の山本良太さん。
研修会の冒頭にJOESの綿引宏行理事長が「グループワークは基調講演と並ぶ重要な役割を持つセッション。Davos Nextは、社会課題に立ち向かう人材を育てる場ですが、ファシリテーターはその先頭集団です。ぜひ一緒に楽しんでいただきたいです」と、動画で挨拶しました。
ところが機材操作のトラブルで、この映像はオンライン参加の皆さんには届きませんでした。
これを受けて、すかさず桑原さんが「こういう不測の事態が起こるのがオンラインなんですよ」とフォローし、山本さんが「これはぜひ見ていただきたい内容だから」と再上映を提案。それを受けて事務局スタッフがPCを操作して、オンラインの参加者にも無事に映像を届けることができました。会場の参加者は、はからずも、オンライントラブルのリカバリー対応の一部始終を目撃することになったのでした。
桑原さんによる「ファシリテーションとは」、山本さんによる「効果的なファシリテーションのために」のレクチャー、そして事務局からのワークショップの流れの説明の後、オンライン参加者はZoomのブレイクアウトルームで、会場の7人は一つのグループになって、第1回グループワークの導入部分を実際にやってみました。
偶然ですが、会場参加者は全員首都圏在住の高校生たち。海外生活の経験などを互いに話すうちにすぐに打ち解け、あっという間に場があたたまり、盛り上がりました。
その様子を見ていた山本さんは、「今日はやりやすかったですね。実際はこんな感じではなくて、探り探りになると思いますよ」と、チクリ。「でも、応用できるところがたくさんあります。今日の積極性を忘れないでください。」
昼食のお弁当を囲みながらも、話が弾みました。かつて自分が住んだ街の話題、地域による英語の違いなど、同じような経験をしてきた者同士とあって、話題が尽きませんでした。
午後はリフレクション・質疑応答の時間。実際に自分がどのようにファシリテーションをするかをイメージして、疑問を出し合いました。印象的だったのは、ひとつの質問に対して講師や事務局が答えて次の質問に行くのではなく、「私はこう思う」「こういう場合は……」と、どんどん会話が広がっていく様子でした。質問が講師や参加者の活発な発言を誘発したのでした。会場の熱気に負けず、オンラインからも発言が相次ぎました。
この頼もしいファシリテーターたちがつくりだすディスカッションの場から何が生まれるのでしょうか。今年のJOES Davos Nextもとても楽しみです。
桑原りささんからのコメント
ファシリテーターのみなさんはとても積極的で、JOES Davos Nextをいい場にしようと考えてくれていることが伝わってきました。みんな、日本人の感覚を持ちつつ世界を見てきています。この仲間はいいコミュニティになるだろうな、みんながうまくつながっていくと日本だけでなく世界にとっても大きな力になると確信しました。そんなきっかけをJOES Davos Nextが作ることできたら最高ですね。
JOES Davos Nextに関わるのは3回目ですが、慣れてきたという感じはありません。毎回テーマが違うので新しいことを学べますし、トライ&エラーを繰り返していて、相変わらずワクワクしています。
嬉しいのは連続参加のファシリテーターが増えていることです。もう、ベテラン選手ですよね。なんだか子どもの成長を見ているような気持ちです。
山本良太さんからのコメント
3回目のファシリテーター研修ですが、イベントの経験を重ねてきて何をすべきかが明確になり、具体化してきています。これは運営がルーティン化しているということではなく、JOES Davos Next というイベントが必要としているものの解像度があがっているということだと思っています。
今日の研修に参加したみなさんは落ち着いていて、自分がすべきことを具体的に考えているように感じました。JOES Davos Nextに集う人は、参加者もファシリテーターも、それぞれ違う国で違う経験をしています。今日のランチ中の雑談も、とても興味深くて楽しかったです。そういういろんな視点が集まるのが、JOES Davos Nextの面白いところ。もっともっと、自分たちの経験や視点の違いをディスカッションでも出していってほしいと思います。