いつものクラスメイトとともに学ぶ「学校参加」
JOES Davos Next 2024は、今年秋の参加者募集開始に向けてイベント内容の調整を進めています。
テーマは「宇宙」、基調講演には宇宙飛行士の山崎直子さんを迎えます。講演はオンデマンド配信される予定で、世界中どこからでも自分の都合のよい時間帯に視聴することができます。
今年はどんな話題が飛び出すのでしょうか、そして、そこからどんなディスカッションが生まれるのでしょうか。
イベント日程と詳細・応募要項等は、JOES Davos Next 2024のサイトからご覧ください。
昨年の基調講演には、国内の小・中学校や世界中の日本人学校がいくつも参加しました。子どもたちはリアルタイムで、あるいはオンデマンド配信で、毎日同じ教室で学んでいるクラスメイトとともに耳を傾けました。いわば地球規模のゲストティーチャーです。
この貴重な機会を活用すべく、事前学習を進め、講演を視聴し、事後に感想共有や研究発表をした学校もありました。JOES Davos Next のパート2「グループワーク」のディスカッションは個人単位での参加になりますが、学校参加校では、いつもの教室でいつもの仲間と一緒にJOES Davos Next の学びを深めることができるのです。そこでは、グループワークに匹敵するような活発な感想共有や意見交換が行われていたようです。
福島県の公立中学校で学校参加を担当された教師にその時の様子をお話しいただくとともに、生徒たちから寄せられた感想をご紹介します。
※本コメントは、JOES Davos Next 2023 REPORTからの抜粋・要約です。
(取材・執筆:只木良枝)
学校参加校教師 村越 健 先生
福島市立信陵中学校 教諭(2024年3月当時)
福島市の中学2年生は、毎年5日間の「職場体験学習」を実施しています。ところが2020年からのコロナ禍の影響で、市内の事業所の受け入れが難しくなってしまっていました。それに代わるような総合的な学習の内容を模索していたところ、2022年春ごろにJOES Davos Nextのことを知りました。
教えてくれたのは、インドの日本人学校での勤務経験がある同じ学年の小林一弥先生でした。帰国後も海外子女教育振興財団からの情報が定期的に入り、その中にJOES Davos Next開催のお知らせがあったそうです。
2022年の基調講演講師はノーベル賞受賞者の山中伸弥先生でした。
信陵中学校は、市立のごく普通の公立中学校です。山中先生のような世界的な知名度のある学者の講演会など、オファーすること自体が考えられません。また、世界中とオンラインでつながってたくさんの中学生が講演を聴くというグローバルな講演会であるという点も魅力的でした。
2学年約160名と、学年教員10名で参加しました。2022年は山中教授からの「失敗してもいい」というメッセージが生徒たちの心に強く残ったようで、講演会後「失敗を恐れずチャレンジしたい」という発言や行動が学年全体に目立つようになりました。 JOES Davos Next の価値を実感し、2023年も参加することにしました。
2022、2023両年とも、3時間程度の事前学習の時間をとりました。Davos Next事務局から提供された資料や紹介されたwebサイト等を閲覧し、講師への質問も提出しました。
2022年は内容の理解を深めるためにオンライン会議システムのWebex Meetingを用いて理科教員による細胞に関する学年授業を実施、2023年は生徒各自でタブレット端末を用いて海洋汚染など講演テーマに関する調べ学習をしました。 事前学習にあたって、JOES Davos Nextの紹介漫画は、とても大きな効果があったと思います。
最初は、iPS細胞や海洋汚染などのワードに、やや取っ付きにくさを感じている生徒もいました。しかし紹介漫画を見せたところ、同年代の児童生徒が描いた作品ということで興味がわいたようです。教員の側も、導入のやり易さを感じました。
講演当日は、5クラスに1台ずつディスプレイを設置し、全員で視聴しました。みんな集中して熱心に聞き入っていました。
講演の前には山中教授、阪口博士とも「お堅い学者の先生」というイメージをもっていた生徒が多かったのですが、先生方が中学生を対象に講演していると意識されていることが強く伝わってきて、生徒たちも安心して、楽しんで聞いていました。
事前質問を世界中に住む生徒から募っていた点も効果があったと思います。
JOES Davos Nextの理念は「未来の日本を支える原動力となる子どもたちに提供する学びの場」とのことですが、その通り、日常生活で世界との接点が多いとは言えない地方都市の中学生が「世界」に目を向ける、たいへん良いきっかけとなったと思います。
2023年の基調講演は日本時間では18時開始だったので、授業時間内でオンデマンド配信を視聴しました。リアルタイムとオンデマンドで、生徒の様子に大きな差は感じませんでした。時差の関係でのオンデマンドは当然のことと受け止めているようです。
イベント実施という点からはやはり時差の問題は大きいと思いますが、日本人学校等は世界中にありますし、日本人の子どもたちは世界中にいます。その子どもたちが交流をもつわけですから、それはやむを得ない部分なのかなとも思います。
2024年のJOES Davos Next も楽しみにしています。
生徒たちの感想から
・海洋汚染の問題は簡単に解決することのできない問題ですが、より多くの人が問題を知ればかなり解決に近づくと感じました。
・What can we do for the future?
・小さな意識の積み重ねで少しずつでも解決に繋げていきたい。
・一人一人の行動が自分たちの生活を変えていくということがわかりました。海のゴミをゼロにすることは難しいかもしれないけど、一日一日を大事にしていきたいです。
・海の環境を守るために小さなことでも取り組みたいです。
・海の問題が自分に無関係なことではないと気づくことができました。これからは自分からも積極的にこの問題について身近な人に伝えていきたいと思います。
・海洋汚染は一つの国だけでは解決できない大きな問題なので、国と国が協力して解決に向かっていくことが大切。それぞれの国の歴史的背景や発展具合によって生じる海やゴミに対する認識の差を解消していくことが、対策の始まりなのではないかと思った。
・これから今の私たちが生きていく世界を変えることはまだまだできると思います。
・自分にできることを探して、少しでも海の現状をよくできるようにしたいです。
・今の私たちに個人でできることは少ないですが、皆が意識して取り組めば、少しずつ変わっていくと思います。 将来が少しでも良くなるように自分も気をつけようと思ったし、これから地域でボランティアなどがあれば積極的に参加し、少しでも世界を変える支えになりたいと思った。
・海の問題は世界の人々と協力して解決しないといけないけど、まだ発展していない国もあるから難しいことがわかった。
・私が当たり前だと思っていた考えが世界的に見ると当たり前ではない。特に、ゴミの収集などを行わず、海に全て捨ててしまっている国があると聞いてとても驚いた。
・自分一人が変わってもどうにもならないだろうと消極的な感じで聞いていたら、海産物が無くなるというといった人ごとじゃない話題が出てきた。物を大切に使う、海や川などにゴミを捨てない、といったゴミの処理を怠らないように頑張ろうと思いました。