2024年4月15日
子どもの教育

日本人学校に行きながら語学力をつけたり、現地経験を積んだりできる?

<質問>

海外赴任が決まりました。日本人学校に行きながら語学力をつけたり、現地経験を積んだりすることは可能でしょうか。

 

語学力をつけるには 

日本人学校に行きながら英語力をつけることは可能です。海外で現地校やインターナショナルスクールに編入させれば、やがて外国語ができるようになると考えるのは自然なことです。  

 

しかしながら子供たちはまず言語と学校文化の違いに戸惑うことになります。言語に関しては、入学時のお子さんの外国語力にも左右されますが、性格によっても違います。  

 

そうした中、外国語を使いこなせる子供を対象とした授業が各教科で行われ、宿題も出され、それらは必ず提出しなければなりません。  

 

日本人学校でも国内と同様、予習や復習に取り組んだり、宿題を提出したりすることは同じですが、日本語で学習できる点で各教科の学習の言語面での負担は減り、学校文化も日本とあまり変わらないので、学校での英語の学習の他、帰宅後の語学学習の時間やスポーツ、芸術など様々な活動の時間を生み出すことが可能になります。  

 

地域の行事などにも家族で積極的に参加できるとよいでしょう。保護者自身が積極的に現地になじもうとする姿を子供に見せることで、子供は勇気をもって異文化に飛び込んでいくようになります。  

 

家族一緒に言語や現地の文化を習得していくことをお勧めします。

日本人学校の英語教育  

語学力と言いますと、英語が思い浮かびます。日本人学校の場合、設立時の所在国におけるステータスにより、定められた時間、現地語を指導しなければ学校として認められない国があります。まずはその国に暮らすという点で、現地語にも敬意を表して身に付けて行く必要があります。  

 

日本人の場合、学ぶべき言語は英語が優先となる傾向があり、日本人学校では「現地語よりも英語の授業時間を増やしてほしい」という要望が寄せられます。   

 

世界各国の日本人学校では、日本の文部科学省が定める学習指導要領に従って各校でカリキュラムを作成し、先生方は全ての教科について日本国内以上のレベルの学習指導を行おうと努力しています。  

 

そうした中、限られた授業時数内で、工夫して日本国内以上に英語の時間を確保しています。もともと教科としての英語が行われてきた中学校はもちろんですが、小学校でも形は様々ですが現地語と共にほとんどの学年で英語の授業が行われてきました。  

 

また、指導に当たっては、子供たちが学びやすいように一つの学年を習熟度別に分けて少人数による指導を行うなど、海外に来たばかりの子供でも段階を踏んで、徐々に積み重ねていけるようにカリキュラムが組まれていたりします。  

 

さらに地域への貢献として現地採用のネイティブの先生による授業を行っている学校も多いです。  

 

小学校の英語科のカリキュラムについては、日本では2020年度まで教科化されていなかったため、現地校の小学校の英語のカリキュラムを参考にするなどして、各学年の発達段階に応じた英語科の指導について蓄積してきています。そのため低学年から高学年まで全ての学年の英語の時間で指導効果を上げています。  

 

中学校に関しては日本の英語の指導はもちろん、現地採用のネイティブティーチャーによる英語の指導を従前から取り入れてきました。また、受験の際に必要な文法の学習に関しては派遣教員などが日本語で丁寧に指導している例もあります。  

 

児童・生徒ひとり一人のニーズに合わせ、4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)も意識して、現地の教材なども取り入れながら実践的な英語のスキルを高めています。

日本人学校のイマージョン教育  

日本人学校の中には「イマ—ジョン教育」という手法で、図工(美術)や音楽、体育などの教科の学習を英語で行っている学校もあります。  

美術を現地の先生が英語で指導している例では、来たばかりの子供は道具の名前が分からなかったり、作業方法が分からなかったりして最初は戸惑いもありますが、周囲の子供達のサポートを受けながら、先生の英語でのアドバイスを受けながら、やがて現地のセンスを身につけて個性的で素晴らしい作品を仕上げるようになります。  

イマージョン教育では、その教科の専門的な語彙の英語を増やすことができ、また、日本のカリキュラムと現地採用の先生のセンスが融合した多様性を身につけることができます。   

 

英会話のチューターの活用  

英語圏でなくてもネイティブの英語の家庭教師を探すことができます。定期的に自宅で家庭教師と英会話をする時間を設けてみてはどうでしょう。  

 

生きた英語を身につけるには、直接「聞く・話す」のキャッチボールをより多くできるマンツーマンレッスンが最適です。家庭教師もお子さんの特性をつかみやすいので、弱点を重点的に指導してもらい、コミュニケーション能力を高めるようにしましょう。   

 

英語で行われる活動への参加  

駐在される方々が住む地域では、音楽や芸術、スポーツやキャンプなど様々なアクティビティが行われているケースが少なくありません。中には宿泊を伴うものもあります。長い休みには思い切って英語漬けのキャンプへの参加を勧めてみましょう。  

 

普段のアフタースクールではスポーツや芸術面での習い事もいいと思います。スポーツや芸術では最初は言葉が通じなくてもコミュニケーションを取ることができます。  

 

イマ—ジョンの形で競技のテクニックや技能面での言葉を、体験を通して習得できるメリットがあります。日本人の友達ができたら心強いものですが、言語習得のために「出来るだけ日本語を使わないようにしよう」などと前向きな約束をして、有意義な時間を過ごすよう心がけるとよいでしょう。   

 

英語検定を実施している日本人学校  

日本人学校の中には、英語検定を実施している学校もあります。準会場となるので5級から2級までが対象です。  在籍校で英語検定を受験するメリットは、外部の受験会場に出掛けるのではなく、通いなれた自分の学校(ホーム)で受けられることです。緊張感が和らぎ普段の力を発揮することができるでしょう。  

 

英語検定の教材は海外でも手に入りますが、予め日本から持参し、受験できない場合でも教材を活用して自分自身の英語力の指標にしていきましょう。  

日本人学校の現地理解教育

家族と共にその国で生活し、体験を通して様々なことを学べる体験は日本ではできない貴重なものです。  

日本人学校は文部科学省の学習指導要領を基にカリキュラムが組まれているため、日本国内と同じ教育しか行ってないと思われがちですが、所在国の教育や文化についてさまざまな体験を通して主体的に学ぶ場面を意図的に設定しています。   

 

現地校との交流

多くの学校では、現地の学校との交流学習が行われています。共通のコミュニケーション言語が英語になるケースが多く、現地校に出掛けて現地校の子供たちと学校生活や授業を体験したりします。  

 

また、日本人学校に招待して交流することもあります。言葉のコミュケーションはもちろんですが、それぞれの国の文化を紹介し合うことも多いので、相互理解が深まり、グローバルな視点を育むことができます。   

 

生活科や社会科のほか、理科、図工、音楽等でも校外学習  

校外学習は生活科や社会科だけでなく、様々な教科で行われています。  

 

見学場所は所在地ならではの場所が設定されています。公園、動植物園、博物館、美術館、劇場等々、芸術や文化について学ぶとともに、それぞれの国のよさを体験します。  

 

宿泊学習

小学校高学年や中学校では宿泊を伴う学習が設定されています。学年を重ねながらその国の歴史を理解できる場所が設定されていたりします。  

 

学校でしかできない体験学習が組まれていることが多いので、事前に「しおり」を家族一緒に見ておくといいと思います。グループ行動する際などは、自分たちでスタッフに質問したりしながら、友達と協力して理解を深めていきます。   

 

「お子さんを家族旅行のツアーコンダクターに任命しましょう」 

現地校交流については学校を通しての活動になりますが、それ以外の校外学習に関しては、あらかじめ子供に「今度、そこに家族も連れて行って、習ってきたことを教えてね」と伝えておいて、よく見聞きしてくるように仕向けておくとよいでしょう。  

 

そして近場なら週末に、また宿泊学習などは長期休暇の際に家族で出かけ、訪問先で子供に活躍してもらうといいでしょう。そうすることで、子供が学校を通して現地でどのような体験をしているかを家族で共有することができます。  

 

子供にとっては、校外学習で学んだことを家族に伝えることで、知識の定着を図ることができます。さらに、時間が足りなくて見足りなかったところをもう1度見ることができます。     

 

 海外赴任は家族で過ごす時間が増え、コミュニケーションを深められる貴重な機会です。家族一緒に、そこに住んでいるからこそできる言語習得や異文化理解が深められることを願っています。

 <回答者> 
海外子女教育振興財団
教育アドバイザー
三井知之(みついともゆき)
東京都の公立小学校に39年間勤務する。1992年より3年間、バンコク日本人学校へ赴任。帰国後は都内で教員、教頭を務め青ヶ島にも赴任。帰任後、東京都教育庁人事部勤務。2007年より4年間校長としてニューヨーク日本人学校へ赴任。帰国後都内の校長を歴任。11年から全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会の事務局長、副会長を歴任。18年より3年間校長としてプリンストン補習授業校に赴任。21年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員に就任、現在に至る。 

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