<質問>
赴任先に日本人学校はなく、インターナショナルスクールに通わせる予定です。小学生と中学生の子どもはとても不安がっています。どうしたらよいでしょうか。
1.インターナショナルスクールとはどんな学校なのか
インターナショナルスクールとは外国に設立され、国籍に関係なく入学できる主に英語で学習する学校です。
教育のモデルはさまざまで、アメリカ系、イギリス系、オーストラリア系、カナダ系、国際バカロレア(IB)など、国際的なカリキュラムで学習できる教育施設です。
平均30~40カ国の子どもたちが通っていて文化や価値観など、多様性に富み、国際感覚を身につけるのには最適な学校と考えられています。
幼稚部から高等部まで設置されているのが一般的で、高等部を卒業した後は欧米の大学へ進学するための統一テストに向けたプログラムや大学進学のための国際的な資格である国際バカロレアディプロマ(IBDP)を取得するためのカリキュラムを有している学校も多くあります。
また、日本では帰国子女枠受験が実施されている大学は少なくありませんが、インターナショナルスクール出身の多くの帰国生がチャレンジして希望の大学に入学しています。
2.入学する際の不安な気持ちを取り除くために
○言語(英語)について
インターナショナルスクールには英語を母国語としない、英語力が十分ではない子どもたちが多く在籍しています。それらの状況からほとんどの学校でESLクラスが設置されています。第二言語としての英語教育が提供され、英語の基礎基本をしっかりと学ぶことができます。
ESLクラスで学ぶことにより、英語力を着実に一歩一歩伸ばして学習に追いついていけるよう、子どもたちは頑張っています。当初は不安でしょうが、慌てずに時間をかけて着実に努力していけば大丈夫です。
○学校文化について
インターナショナルスクールは日本の学校と比較すると大きな違いがあります。どのような違いがあるのでしょうか。
まず、中高生はそれぞれ教科担当の先生が待つ教室に1時間ごとに移動します。授業は対話・討論型の学習が主で、自分の意見や考えをしっかりと持っていることが重要になります。宿題も多く出され、重要な学習に位置付けられています。それらの学習をスムーズに進められるようチューターを活用している家庭も多くあります。
次に夏休みが非常に長く約2カ月あります。その間、宿題はありませんが、サマースクールで英語の勉強、スポーツ、音楽、ボランティア等、さまざまな活動を自分で選択し、多くの経験を積むことができます。
また、日本の学校のような上履きや体操服はなく、掃除の時間や日直当番等もありません。
給食もなく、ランチはカフェテリアなどで自分が食べたいものを選びます。日本の学校とインターナショナルスクールの学校文化には大きな違いがあるので、最初は戸惑うかもしれませんが、時間とともに徐々に適応し、学校生活が楽しく送れるようになると思います。
○人間関係について
さまざまな国から来てインターナショナルスクールに通っている子どもたちにとって、毎日が新しい事の発見であり、感動することや戸惑うことなどもあると思います。
インターナショナルスクールは多種多様な言語や文化を持った子どもたちの集団で、多様性に満ちています。
日本の文化や伝統、アニメやゲームなどが好きで、日本に対して興味関心を強く持っている子どもたちも多いので、臆することはありません。日本の文化や伝統などを発信することで多くの友達をつくることができると思います。そのためには自分自身も「日本」を学ぶことが大切です。
また、英語ができるか否かにかかわらず、スポーツや音楽、ボランティアなどに積極的に参加することをお勧めします。いろいろな人と交流することで友達はどんどん増えていき、充実した学校生活が送れるようになると思います。
3.インターナショナルスクールで学ぶメリット
〇視野が広がる
言葉の壁は年齢が上がるほど高くなりますが、少しずつでも努力し続けることで英語を身につけることができます。それは生涯にわたって大きな財産になり、将来への選択肢も大きく広がることになります。
多国籍・多文化に毎日のように触れることにより、グローバルな感覚が育ちます。海外各地に友達をつくることができ、もっともっと世界が広がると考えられます。
日本では到底できない多種多様な経験をすることで多文化理解や価値観の共有等、国際的視野から物事を見ることができるようになります。
〇探求型の思考力が育つ
インターナショナルスクールの学習は対話・討論型が主なため、自分の意見や考えを持ち、それを発信していくことがとても重要になります。
そのためにはテーマに対して自分で課題を見つけ、その課題解決のための方法を自分で調べ、まとめ、クラスで発表することが大切になります。
授業は、そういうことの繰り返しです。どのようなこと対しても積極的にかかわり、自分で考え、課題を見つけ、思考して結論を出すことになるのです。それは大きな力になります。
〇プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力が伸びる
自分の考えをまとめて人前で発表する学習はプレゼンテーション能力を高めることに直結します。
さらに発表する前には、友達の意見や考えを十分に聞いて、それらに対して自分の思いを伝え、何度も話し合う学習をします。相手の話をよく理解した上で自分の思いを言うというキャッチボールを繰り返すことでコミュニケーション能力を高められるようになります。
4.インターナショナルスクール入学後にすべきことを家族で共通理解
〇インターナショナルスクールの学習を中心に
インターナショナルスクールでの学習、特に英語を思い切り勉強しましょう(英検・TOEFL-iBT・IELTSのいずれかのスコアアップにがんばりましょう)。
日本の学習(日本の教科書/国語や算数・数学を中心に)もしっかりと計画を立てて着実に歩みを進めましょう。
帰国後の学校選択については家族全員で十分話し合い、本人の気持ちをできる限り尊重することをお勧めします。
学校行事やボランティア活動に保護者も積極的に参加し、家族全員で協力し合って海外での生活を楽しいものにしていけると良いでしょう。
5.保護者の心構え
①笑顔で育てる余裕を
保護者がその国、そしてその国の人々に興味関心を持ち、楽しそうにしていると、子どもも前向きな気持ちになるものです。子どもの明るさは子育てに余裕をもたらしてくれます。
「いつもポジティブシンキング!」が大切です。
②意識して対話の時間を
常に子どもと話をすることを心がけ、言葉のキャッチボールを忘れずに良きインタビュアーになってください。
③いつでも子どもの味方に
どんなことがあっても常に子どもの側に立ち、子どもの話をよく聞いて「あなたの味方だよ」というオーラを出し続けるようにしましょう。
④いつも子どもをほめる
些細な事でもどんどんほめて、子どもが自信を持てるようにしましょう。自信が湧いてきた子どもは、その自信を原動力にしてどんどん伸びていきます。
最後に
インターナショナルスクールの勉強や生活を中心に考えることが第一ですが、同時に帰国後のこともしっかりと見通しを立ててバランスよく学習していくことが重要になります。
学習や生活のこと、帰国後の受験のことなどで悩むことが出てきた場合は、海外子女教育振興財団の教育相談をご利用いただければと思います。
<回答者> 海外子女教育振興財団 教育アドバイザー 友部政勝 (ともべ・まさかつ) 1985年4月~1988年3月カラチ日本人学校(パキスタン)教諭、1998年4月~2001年3月クイーンズランド補習授業校(オーストラリア)校長、2007年4月~2010年3月台北日本人学校(台湾)校長、帰国後、茨城県つくば市立松代小学校校長、同市立沼崎小学校校長、茨城県海外子女教育・国際理解教育研究会会長を歴任。早期退職後、2013年4月~2020年5月三菱商事株式会社海外教育相談室室長、定年退職後、2021年4月~公益財団法人海外子女教育振興財団教育アドバイザー。