2023年12月18日
子どもの教育

日本の大学に関する情報が少なく不安

<質問>

海外の高校に通っていますが、日本の大学に関する情報が少なく、どう準備したらよいのか不安です。

 

まずは資格の確認

はじめに「大学入学資格があるかどうか」を確認することが大切です。

各国の定められた高校レベルの卒業資格、すなわち各国の大学入学資格をもっていれば原則的に日本の大学の入学資格があると考えてよいでしょう。その国の初等中等教育が12年間以下であるなど、例外的な場合は文科省のホームページで『大学入学資格について』をご覧ください。

インターナショナルスクールはその国の正式な教育機関として認められていない場合が多いので、文科省の認めている国際的な認証団体に認定されているか(同省のホームページに掲載)、またはIBDPなどの国際的な資格を取得できるかを確認してください。

なお、早期に帰国して日本の高校に編入し卒業する、または高等学校卒業程度認定試験(旧大検)によって卒業資格を得ることもできます。

 

日本の大学入試の基本

日本の大学入試について、その基本を確認しましょう。

(以下は多数の例のみ紹介していますので、個々の大学や詳細についてはそれぞれご確認ください。)

 

1)一般選抜

2)総合型選抜

3)学校推薦型選抜

4)それ以外の特別選抜 〈帰国生徒選抜(帰国生入試)〉

 

各入試の特徴は次の通り。

1)一般選抜

大学入学共通テストを利用するものと大学独自の選抜があります。

国立大学では共通テスト(5教科7科目以上)と2次試験(1~3科目)。  私立大学では、共通テスト利用型(多くは3科目)と独自試験(多くは3科目以下) 

 

2)総合型選抜 

従来は「AO入試」と呼ばれていたものです。各大学によって独自の観点からの選抜になります。多くは書類審査、小論文、面接、適性検査、英語資格などで選抜されます。

 

3)学校推薦型選抜

所属する学校の校長推薦が必要です。高校内であらかじめ選抜される必要がある場合もあります。 

 

4)帰国生徒選抜(帰国生入試)

帰国生徒選抜とは保護者の都合や海外赴任などのやむを得ない事情により日本の教育制度に基づく教育を受けられなかった生徒を対象に実施されているため、資格や条件が各大学独自に決められており、帰国生徒が実力を発揮しやすい選抜方法となっています。

  帰国生徒選抜について

○帰国生徒選抜出願資格(単独留学とは区別されます。) 

以下のような条件があります。

滞在年数(2年以上が多い)、帰国後の年数、卒業後の年数、海外高校の卒業か・帰国して国内高校を卒業したか、出国理由(保護者の都合かどうか)など。

 

○統一試験の提出・条件

各国における統一試験の成績を求められることがあります。 米国のSATやACT、英国のGCE(Aレベル)あるいはIBなど。

また、語学共通試験、英語のTOEFLなどの成績を求める大学があります。提出が必須条件でない場合も、提出がのぞましいという大学は多いです。 

 

○提出必要書類

必要書類の提出が間に合うように準備しなくてはなりません。まずは各大学の募集要項を手に入れましょう。公表が遅い場合には前年度の募集要項を見て必要書類の準備を進めておくことをお勧めします。

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① 卒業証明書・成績証明書・在籍証明書

② 統一試験の成績証明書

試験実施機関から大学に直接送付してもらう手続きが必要な場合があります。

③ 推薦状

早めに依頼しておくことが大切です(大学所定の用紙がある場合もありますので要注意)。

 ④海外在留証明書、パスポートのコピー、戸籍抄本など

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○選考方法

基本的には、書類審査、外国語試験、小論文、面接ですが、医学部など理系では数学、理科の学科試験があり準備が必要です。

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*書類審査

卒業した学校の成績や活動などを詳しく審査する大学がある一方、あまり選考に影響しない大学もあるようです。

いずれにしても入試要項にある必要書類、提出可能な書類を揃えましょう。

 

*外国語試験

独自試験の代わりに語学共通試験の結果を提出するケースも増えています。

 

*小論文(国語)

テーマが与えられる場合と課題文を読んで答える場合があります。海外経験と関連するものも多いですが、単に海外生活の感想にならないように日頃から問題意識をもっていることが大切です。

 

*数学・理科

学科試験がある場合は日本型の試験を準備する必要があります。計算問題にはほぼ電卓は使えないので筆算の練習をしておきましょう。

 

*面接

日本語による面接が多いですが一部、英語による面接もあります。グループディスカッションや、理系では専門に関する口頭試問の場合もあります。志望動機が問われることが多いのでしっかりと意識して準備しておくことが大切です。  

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○選考基準

書類審査や共通試験の結果を重視する大学、当日の試験を重視する大学さまざまです。うわさを信じるのではなく、各大学のアドミッション・ポリシーを理解して「どのような学生を受け入れようとしているか」を確かめてください。

 

○帰国生徒選抜以外の入試

帰国生徒選抜以外でも、帰国生が受験しやすい入試はあります。

総合型選抜は前記したように、選抜方法が帰国生徒選抜とあまり違いがありません。大学によっては帰国生徒選抜を取りやめて総合型選抜に統合しています。また、一般入試でも英語1科目型のような入試があり、英語圏出身者には受験しやすくなっています。

 

9月入学試験(秋入学)

もともとは留学生対象の9月入試に受験できるケースが多くなりました。英語だけで学べるプログラムが多いようです。現地校卒業後、続けて入学できますが、早い時期から準備が必要です。大学卒業時期についても確認してください。

大学の選び方

大事なことは「何のために大学へ行くのか」を自問自答することです。

大学入学を目標にしてしまうと、その後何をしてよいのかわからなくなります。多様性豊かな海外の学校で学んだ帰国生の多くは、漫然と大学を目指すようなことはないと思いますが、あらためて「大学で何をしたいのか」を言葉にしてみましょう。志望している専門、学科は一つとは限らないと思いますが、志望を明確にした上で、その目的のためにはどの大学で学べばよいかと考えていくのが順当だと思います。

帰国生徒選抜では、往々にしてどの大学が受けやすいか、有利な試験かを比較することが前提になってしまうこともあるようです。

志望と違うけれども偏差値の高い有名校に受かり入学した場合、学生生活に意欲がわかず、結局退学して別なコースに受け直したといった話を時に聞きます。一方、多少有名ではないものの志望していた学科に入った場合、充実した大学生活を送っているケースは少なくありません。

必要な準備

海外にいる時から情報を集めて、必要な書類が何かを確認し準備を進めましょう。学習面での準備は受験する大学が何を要求しているかで異なります。

外国語・小論文・面接が主な場合は、まず在籍している学校の授業にしっかり参加してよい評価を得るように努めます。同時に小論文・面接に備えて、滞在国や国際的な情勢・日本の新聞記事に取り上げられている事象に関心を持ち、自分の考えをまとめる訓練をしましょう。

これまで歩んできた道を海外体験中心に振り返り、保護者の海外勤務を通じて考えた身近な視点からの問題提起などをまとめてみてはどうでしょうか。

理系など学科試験が必要な場合は、日本の教科学習に合わせた準備が必要です。大学ごとの過去問題集や塾・予備校のオンライン学習などを活用してもいいでしょう。

情報収集 

大学の情報は、各大学のホームページが一番正確です。オンラインで申し込む必要がある場合もありますので、安定した通信環境を確保できるようにしてください。

大学の学部を検索したり、比較したりできるWEBサイトがあります。予備校や雑誌社が発行する大学一覧(特に帰国生入試用)は参考になるので、一時帰国の際などに手に入れておくといいでしょう。

大都市圏だけでなく、地方でも特色のある大学が増えてきましたから、予断無く広く検討してみたいものです。

 

情報を集め準備する必要はありますが、いずれにしても与えられた環境でしっかりと学習することにより、生涯を通じてどこにおいても通用する学力が身につきます。じっくりと落ち着いて在籍校での学びを大切にしてください。

 

<回答者>
海外子女教育振興財団
帰国生受入校コンシェルジュ
中山 順一(なかやま じゅんいち)
帰国子女の受け入れを目的に設立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6,000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭 。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員、2022年より帰国生受入校コンシェルジュを務める。

 

 

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